ビジネスマンなら押さえておきたい高校生
最近衝撃だったのが、友人の会社が主催した「Education3.0」と題した、教育に関するカンファレンスでの、高校生との出会いでした。何に驚いたかといえば、その能力の高さです。20代〜30代が参加者の大半をなす中で、グループでの議論や、ワークなどで、たまたま同じグループになった高校生が、周囲の大人たちよりも明らかに高い論点の提示や、議論の持っていきかた、周囲をリードする働きかけなどを行なっており、「なんじゃこりゃ?」と感じた次第です。
そして、同じカンファレンスに参加していた仕事仲間も、「うちのテーブルにいた高校生が凄かった!」と帰りに話しており、好奇心旺盛な我らとしては、社会科見学と称して、高校生達を企業見学に招待し、その後にディスカッションをすることにしました。
今回は、その高校生たちとのディスカッション、もとい夕食会を通して感じたことを、記事としてご紹介したいと思います。
◯要旨:
1.知識の陳腐化が速い現代では、生態系として高校生が大人よりも優位にある
2.知能レベルも十二分
3.そのことに「大人側の認識」が追いついていない
4.高校生のためではなく、大人のために高校生を開放すべき
5.高校生を活用するための処方箋
それでは、本編です。
1.知識の陳腐化が速い現代では、生態系として高校生が大人よりも優位にある
技術の進歩が速く、情報の陳腐化が速くなれば、自明のことながら若い世代の重要度は増します。これは、各世代を比較したときに、「使える知識」と「陳腐化してしまった知識」の割合が、若い世代に有利にシフトするからです。
例えばですが、獲得した知識が、かつては15年間陳腐化しなかったのが、現在では3年経過すると陳腐化してしまうと仮定します。すると、18歳/25歳/35歳/45歳/55歳の人が過去に獲得した知識のうち、「役に立つ知識」VS「陳腐化した知識」という比率を考えると、かつては35歳くらいまでであれば、その知識の大半が役だっていたのが、現在ではほとんどが陳腐化された知識になってしまい、むしろそうした知識の無い18歳の方が、役に立つ知識に溢れていることになります。
特に、年配の世代の陳腐化した知識には、「新しい知識を否定したり、受け入れづらくする」という副作用があります。例えば、「会社間の連絡は、企業のアカウントのメールでやり取りするのが常識」という知識は、Facebookのメッセンジャーで社外同士の人が頻繁にやり取りをするという行動様式を受け入れることを拒否したり、少なくとも鈍化させます。
理屈上で成り立つこの話、今回の食事会で実感しました。
例えば、Twitterがどのタイミングで活用されているかといえば、夏休みや冬休みの終了直前。このタイミングで、お互いに「終わっていない宿題、どうしたらいいかな?」ということが関心事となり、クラスの中でそのやり取りが頻繁に行われ、集団での宿題対策が始まります。
これは、特定の課題への対処の方法としては、メールで全員返信を送ったり、個別に友人に相談したりするのに比べ、遥かに進歩した方法ではないでしょうか。
このように、テクノロジーの進歩と、その活用方法の進化が加速しているという側面を始めとして、若い層の知識優位は、確実に進んでいます。言い換えれば、大人の優位性の低下も、確実に進んでいます。
2.知能レベルは十二分
2つ目の驚きは、彼女達の頭脳が、すでに十二分に大人と遜色ないレベルにあることです。これは、
・前回カンファレンスで、私も、私の優秀な仕事仲間も、そう感じた
・今回話をして、複雑な議論や内容にも十分理解し、意見し、思考を深められた
ということから、体感しました。
私が接している、社内の優秀な人材(自社の同世代の優秀さは、世の中でも群を抜いていると明確に自負した上で)や、事業提携、勉強会など含めて接している連中と比べても、遜色がないなというのが、正直なところです。
もちろん、どの世代にも能力のばらつきはあります。それを認識した上で、少なくとも大人と互角、あるいはそれ以上の知能レベルにある高校生が存在するという事実が、この場合重要です。こうした高校生を通して、違う世代の違う観点をおりまぜた議論が展開可能になるからです。
3.高校生の凄さに大人の認識が追いついていない
食事会で印象的だったのが、「どうせ子供でしょ」という扱いを、彼女達が受けているという点でした。ある社会活動の意義を感じた高校生は、それを区役所に相談して具体的な協力を依頼しようとしたところ、「子供でしょ」という扱いを受け、まともに取り合ってもらえなかったそうです。
こうした扱いは、自分たちの中学・高校時代を思い出し、そことの比較によって成り立っているのではないかと思われますが、その認識は、以下の3つの点で誤っている可能性があります。
・そもそも記憶が曖昧で、自分の中高時代を低く評価している
・TwitterやFacebook、ネットなど、若い世代の方がむしろ情報優位
・思考停止になり、いわゆる「中高生」の固定概念に引きづられている
そして、そもそもこういう対応をしている大人に対しては、優秀な高校生側が魅力を感じず、敬遠され、出会う確率そのものが低いのではないでしょうか。
4.高校生のためではなく、大人のために高校生を開放すべき
こうした高校生が、もっともっと社会的な議論を行ったり、ビジネスのアイデア発想をしたりする場面に巻き込まれることは、高校生の将来のためというより、受け手である大人のための価値貢献が大きいということを忘れてはいけません。
大人にとって、高校生と議論を行うメリットは、主に以下の3点です。
・最新の技術がどのように活用できるのかのヒントが得られる
・シンプルな議論により、本質的なポイントを検討できる
・既存の自分の考えを壊し、再構築するという柔軟性を鍛えられる
まず、最新の技術の活用方法を知れるという点は、先程ご紹介したTwitterの例を見ても明らかです。彼らにとっては、最新の技術より前の、「過去の方法」が存在しないため、常に目的に対して、最新の技術の応用を考えます。そのため、そこから生まれてきた方法は、技術を最もエッジの効いた形で活用しているものとなっており、そのエッセンスやポイントを、大人向けの製品やサービスに転用したり、政策に反映することで、大きな価値を提供します。
次に、シンプルな議論になるという点について。
これは、複雑な専門用語などが高校生には通用しないため、大人は、物事をシンプルに、かつ本質的に語る必要が出てきて、「もっともらしい話をする」ということができなくなることの効用を指します。
実際、プレゼンテーション制作のコツや、本質的議論をするときのファシリテーターの投げかけとして「中高生に分かるようにシンプルに」という投げかけが多く使われることからも、この「シンプルに語る」ことを強制されるのは、大人に本質的な思考を迫ることは明らかです。
そして、大人にとって最も価値のあるメリットが、「考えを壊し、再構築する」という、思考の柔軟性を問われる点です。これは、高校生が持つ視点や、その成長してきた背景が、大人とは大きく異なるため、互いに交わって議論をすることで、大きく意見を変更する必要が出てくることを指します。
例えば、先日高校生たちと「結婚式をどう思う?」という話をしたときに、彼女達は「結婚式をするというイメージは、全くない。むしろ、その先の生活をパートナーとどうするかについてとかは、昼休みによく話をしたりする」という返答がありました。こうしたことを聞くと、全く以って今まで持っていた若い層の結婚観に対する認識を改めなくてはならず、既存の自分の思考の枠組みを壊さねばならなくなります。
この感覚は、自分が知らない海外の国々で市場調査を行ったり、外人のマネージャーと議論をしたりするときの感覚に、とても似ています。背景や文化、価値観が異なる相手との議論は、時に自分の思考を根本から作り直さなければならないことを要求し、その経験と、それを通して磨かれた思考というものが、大きな強みになることは、疑いようがありません。
以上のように、大人にとっては、高校生とやり取りをするメリットは計り知れないものがあります。では、そのメリットを享受するために、大人は何をしなければならないのでしょうか?
5.高校生を活用するためのあなたへの処方箋
様々な議論や検討の機会に、高校生に参加してもらい、その良さを活かすためのポイントをご紹介します。
*全ての高校生を対象としない
無理に、全ての高校生を対象と考えないのが、1つ目のポイントです。
高校生という時期は、個人の成長度合いにもバラつきが大きいし、思春期の様々な事情や、受験への注力など、大人の議論に付き合っていられない事情も多数存在します。
一方で、今回私が参加したEducation3.0に来ていた高校生のように、大人と接して議論をすることに興味・関心があり、受験勉強などにそれほど逼迫しておらず、自分から何かを仕掛けたいという気持ちに溢れている高校生も、少なからず存在します。
こうした、大人の議論に参加してくれるし、自ら参加したいと表明している高校生を選択的に呼ぶというのが、効果的な巻き込み方となります。思い立って、まず自分の親戚や甥っ子に声をかけるのではなく、Twitterなどの媒体で呼びかけを行い、そこに呼応してきた高校生を巻込む、といった方法が有効ではないでしょうか。
*金銭・時間面にケアをする
お金と時間帯は、大人が思っている以上に参加のネックになるため、十分な注意を払いたいところです。
お金でいうと、例えば1,000円を超える金額のセミナーや勉強会の参加費は、それだけで高校生の参加ネックになります。思い出してみれば、私も高校のときのお小遣いは5,000円でした・・・その20%を持って行かれるというのは、かなり痛い。高校生に関しては、参加費無料にするといった配慮が必要です。
時間面でいうと、22時までに家に帰り着くことができるような配慮が必要です。なぜかといえば、条例等で、22時以降に18歳未満は外出が原則禁止されていたりするためです。
これらの点は、言われてみれば当たり前なのですが、実際の議論の場の運営には大きな支障や制約条件にもなりうる点なので、特に留意する必要があります。運営設計の段階で、高校生をメンバーに入れておくなどすると、その実感値が高まるかもしれません。
*技術を活用する
これは、上記の時間的な制約条件などを排除する手段として、テクノロジーを活用するという話です。例えばですが、会議の場にスカイプを導入し、高校生には自宅から参加してもらうといった方法を取れば、深夜であっても参加してもらうことは可能になります。
さて、もしもあなたがすでに大人ならば、高校生に新たな思考を開放してもらってはいかがでしょうか?
それでは
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