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企画を断念した経験者/エンジニアに捧ぐ〜「MaBeee」(電池がスマホで制御できるIoT)誕生の裏舞台

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本日11月11日からクラウドファンディングMAKUAKEにて、「Bluetoothを通してスマートフォンから電池を制御できる」という製品「MaBeee」が出品されています( https://www.makuake.com/project/mabeee/ )。この製品を組み込むと、例えばプラレールすらラジコンのようにスマートフォンから操れるようになってしまうという、発想の転換をした逸品。

動画:MaBeeeの紹介

ですがそれ以上に、ここではそのMaBeeeを製品として世の中に送り出すために、長年勤務した大企業を辞めて起業し、奮闘する一人の経営者がいることをお伝えしたいと思います。

岡部 顕宏氏46歳。セイコーインスツル(SII)でマーケティング企画者として順風満帆な人生を送っていた彼は、「日本の技術者への熱い想い」に突き動かされ、起業の決断をし、自らリスクを取って、今回の事業に挑んでいます。

このクラウドファンディングの機会に、ぜひともその背景にある彼の経験、そして想いを知ってもらいたいと考え、ここにクラウドファンディング直前に本人にインタビューした内容を、こちらでご紹介致します。

(※本内容は、このクラウドファンディングが始まる前々日、11月9日の早朝に、岡部氏に語ってもらった内容となります)


岡部 顕宏氏プロファイル

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ノバルス株式会社 代表取締役

2002年セイコーインスツル(株)入社。国内時計業界初となるBT-Watchの規格策定や店舗向ソリューションシステムなど、モノづくり分野において創発〜試作開発〜マーケティングを通じた事業化を推進。元ソニーCEO出井伸之氏、慶応義塾大学教授で数々のベンチャー経営者を育てた武藤 佳恭氏を顧問に迎え、ノバルス株式会社を設立


自らの企画に情熱がありながら、夢かなわず、去っていった多くの仲間をみてきました

岡部さんはこれまで、自らが勤務していた大企業でのプロジェクト、他の会社と協働で進めてきたプロジェクトなどで、主に製品の企画担当者として、エンジニア・技術者など様々な面々と仕事を進めてきました。

「2〜3年前ですね。他の企業の方々とざっくばらんに語り合う場があって、そこで自分で話をしながら、"そういえば、社会人になってから、何回も何回も、自分の企画を断念しなければならなくなった人に出会ってきたなあ"って、思い返したんです」

そう語る岡部さん。その中でも、今ではApple Watchなどを初め、世の中でもてはやされている「スマートウォッチ」についての話となると、自身が当事者として関わった過去のプロジェクトを振り返ります。

「元々、時計メーカーで長年仕事をさせていただいてきたわけですが、10年程前の当時、腕時計に対しての新しい価値をつくろう、時刻を見る以外の価値を、腕時計は提供できるのではないか、というところからいくつものプロジェクトがスタートしました」

岡部さんは、時折昔を懐かしみつつ、悔しさも織り交ぜながら続けます。

「これまで、時計というのは時刻を確認するためだけのものでしたが、そのルーツをさかのぼると、もっともWatchしやすい、いつでもすぐに見られるのが時計。

いろんな情報ツールが出てきた中で、もっと瞬間的に知りたい情報があって然るべき、と当時はみんな燃えていました。パソコンや携帯電話などがすでにメージャーになっていた時代の中で、見たい情報というのを取り出してウォッチしてもいいんじゃないか、というので取り組んでいたんです」

こうしたプロジェクトには、業界団体を巻込みながら、社内外、様々なバックグラウンドの面々が集い、お互いの強みを確認し、何ができるかを持ち寄りながら、和気あいあいとプロジェクトは進行していったそうです。

「この制御はどうしようか?この腕につける素材はこんな風にしたらいいんじゃないか?形状・材質ってどんな風にしようか?そんな風に日々夢中でみんなで取り組んでいました」

「結局、これまでにない新しいものをお互いに切磋琢磨して生み出そうじゃないか、っていう毎日だったんですよね。新しいから、信じこむしかない。みんなで、ハラオチして、そして信じながら進むしか無いよな、という感じでした」

ところが、周囲を取り巻く環境は、当時「新しいもの、とんがったものを出しづらい時勢になりつつあった」そうです。岡部さんたちのチームは、日々事業化に向けたやりとりの中で、徐々に旗色が悪くなっていることを、感じ取りつつありました。そして、その日を迎えます。

「最終的に、事業化はできない、となった日のことはあまり覚えてないんですよね。直球勝負、横からの提案など、色々と試行錯誤はしたのですが、最終的にだめだ、ということになりました」

「技術者初め、共に取り組んでいた仲間たちは、非常に悔しがっていましたね。割と日本酒が好きな人たちの集まったチームだったんですが、反省会をやりましたよ。そのときは、こんなことだから会社がダメになる、とか、仕方ないよね、とか」

そして、こう続けます

「もちろん、冷静に考えてみれば、あの当時の技術水準では、まだバッテリー容量が足りなかったのではないか、UIが乏しすぎたのではないか、時期尚早だったのではないか、と思う部分もあります。けれどやはり、もっとあそこで我を張って言い続けていたら、状況が変わっていたんじゃないか。あのとき、すんなりそれを受け入れてしまったな、という残念な気持ちが残っているのも事実です」

かつて通すことのできなかった「通信×ウォッチ」でのチャレンジは、今回の「通信×電池」でのチャレンジとつながるものがあるんです

なぜ、このタイミングになって、起業して新たなことにチャレンジしようと思われたんですか?

「先ほどの2〜3年前の話し合いの機会で、他の会社のいろんな方々と話していて思い出したんです。ウォッチのプロジェクトの場面で、他の様々な仕事での場面で、自分の仕掛けたいこと、温めている企画を実現できず、去っていった多くの人たちがいたことを」

「で、この3年間で思ったんです。本当に新しいことに挑もう、挑戦的な企画に取り組もうとしたときに、大切なのは小さく・素早く踏み出すことだなということを。大きな企業・大きな組織では、中々小さく始めるということが難しい。何か始めようとすると数千万〜数億の投資になってしまうし、なにより、前回のときのように、自分で自分に逃げ場をつくってしまう」

「だから、そういうことがない環境に自分を追い込み、小さく・素早く運営するような場をつくっていきたいと考えるに至ったんです」

実は岡部さん、こうした思いを抱え、3年前の話し合いをきっかけに、電機業界での様々な企業のエンジニアが抱えている「ヤミ研究」を互いにシェアし合い、そこから実現性の高いものを形にしていくという「ヤミ研」プロジェクトを、粛々と社外で続けていました。参加・関与したエンジニアや企画者の人数は、この間に百人超に達することとなります。

そして今回、岡部さんが立ち上げた「ノバルス社」では、こうしたプラットフォームを運営し、様々なエンジニアが持ち寄った、所属企業内では実現できない企画を、社外で実現するというプロジェクトの運営を開始しました。

ですが、今回の「MaBeee」という製品は、そもそもその岡部さん自体がプロジェクトのオーナーとなって、製品化を目指しています。

−何故、場を運営するという会社を運営しつつ、岡部さん自身が今回、プロダクトのオーナーとしてプロジェクトを推進しているんですか?

こう問いかけると、岡部さんはにこやかに切り出します。

「まず、乾電池に通信というのが世の中に無いんですよね。10年前のウオッチプロジェクトと、文脈が近いんです。

あのときは、断念してしまった。今回も"電池に通信つけてしまってどうするの?"という問いかけが自分たちに突き付けられています。それに対して、いろいろな応用方法を掛けあわせたら、拡がるのではないかと思うし、自分自身が可能性を感じています。これが、オーナーとして推進する1つ目の理由」

「もう一つの文脈としては、小さくものづくりをしていくというのが、クラウドファンディング含めて、自分の実体験を持つことによって、これから"ヤミ研"のプラットフォームから第二・第三の企画が生まれてきたときに、その経験が活かせるであろうと思っています。身を持ってチャレンジすることで、これから挑戦したいと考えている人へ、何かを残せていけたらな、と思っています」

新機軸の企画は、世の中に出してみないことには良し悪しがわからないですから、とにかく出してみるしかないと思っています

独立してから今日まで、どんな毎日ですか?

「いやあ、丁度?今日で102日なんですよね。いい感じです!スピード感でいうと、企業に所属していたときの3倍、それ以上のペースでやりながら。CEATEC(日本最大の技術展示会/本年10月上旬開催)に出品したり、クラウドファンディングにほぼ100日目で出品できたり。

以前は、企画書を書いているだけで100日(笑)が経過しましたが、新機軸のMaBeeeみたいな製品は、ある程度精査したら、後は出してみないとわからないので、これくらいコンパクトに素早く世の中に出せるのがよかったかなと思います」

苦労なども多いのでは?どんなことに汗をかいているんですか?

「汗をかいていること、大変なことは、いっぱいありますけれど(笑)。

まず、製造を請け負ってくれるパートナーを探そうとしても、セイコーならいくらでも相手が見つかりますが、ベンチャーだと、IoTの波が来ているといっても、中々受けてもらえず、苦労・苦労の連続です。

あとは、どう売っていこうかというのは、大きな課題だと思っています。マーケティングに、提携に、PRに・・・なんでもやらなければならなくて、冷や汗をかきながらやっていますよ(笑)」

いよいよクラウドファンディングがスタート、今の気持ちはどうですか?

「まな板の上の鯉、という感じですね(笑)。なかなか感じられない、この緊張感というのがありますね。これまで、自分の担当する製品が出るというのは何度も経験していますが、そのときの緊張感とは、全然、違いますね。3万台売れると予測した製品を出す時に、それが3万台売れるか、1万台くらいになっちゃうか、というドキドキは経験してきましたが、それの比ではないですね」

「やっぱり、すべての責任が、自分の責任である。というのがありますね。当たり前、といえば、当たり前ですが。そこの違いが一番大きいかなと」

同世代の技術者・エンジニアの皆さんに何か伝えたいことはありますか?

「ぜひ、やってみましょう。別々になのか、一緒になのか、はともかくとして、やられたらいいかなと思います。意外と、踏み出せば進むんだと思います(笑)。

もちろん、周囲のいろんな方の支えがあって、というのはありますが」

「やってみたとしたら、進めていくうちに、今回のクラウドファンディングもそうですが、支えてくださる方が必ずいらっしゃると思う。そういう方々と相談しながら、出会いももちろんあると思いますし、見えないところばかりですが、とにかくグイグイ進んでいくと、見えなくても先が少しづつ見えてくるかなと思うんですよね」

もっと製造業を面白くしたいですね

−最後に、言い残したことがあれば

「いやあ、もっと製造業を面白くしたい、ですね。最近のトレンドとして、わりとB2Bの業務ソリューションの方にドメインを切っているケースが多いですが、一方で、ユニークなモノづくりがシリコンバレーや中国の深センに移ろうとしている中で、まだまだ日本初のモノづくりができる余地があると思う。どんどん、そこの波にのって、面白くしていければなと。思っています」

「クラウドファンディング( https://www.makuake.com/project/mabeee/ )のご支援、ぜひともお願いしたいです。買っていただきたいですし、周りにそういうMaBeeeを使う人(お子さんをお持ちのパパ・ママなど)、プラレールユーザーの方がいらっしゃれば、薦めていただけると有り難いです。

あと、電池はまだまだ使い方があると思いますので、こんなところでこう使えるというのがあれば、どしどしとご意見ください( info@novars.jp )」

こんな岡部さんの挑戦は、正に今日2015年11月11日11時開始のクラウドファンディングで始まったばかりです。この挑戦、そして岡部さんがつくろうとしているプラットフォームでの挑戦、ぜひともご注目ください。

それでは

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