ヒットの裏にはWhyあり。ビジネスマンと起業家が考えた、仕事の意義の見つけ方。
「ビジョナリー・カンパニーでは、基本理念(Why)の力が比較対象企業よりも、遥かに強い」
という結論を提示しています。
累計再生回数が1,000万回に迫る、TEDでのサイモン・シネックの講演「Start With Why(邦題:優れたリーダーはどうやって行動を促すか)」は、アップルやライト兄弟といった世界を動かすイノベーションの背景には、圧倒的な「Why(なぜそれに取り組むのか?)」の存在が不可欠であると指摘します。
翻って、テラモーターズの徳重徹氏や、C2Cのマーケットで日本最大級のビジネスココナラ( http://coconala.com/ )を立ち上げた南章行氏などを始めとするアントレプレナー(起業家)と議論をする中でも、よく話題に上がるのが、このWhyの存在です。
では、本当に突き抜けるために必要なWhyを育むためには、どんな営みを行うべきなのか?
本記事では、この観点について、起業家として日々奮闘するアントレプレナー、及び、大企業の中でプロジェクトリーダーやマネージャーとして活躍するイントラプレナーの意見を交えながら、この点について深堀りします。
本記事の要旨(読了7分):
【1】議論のきっかけ:『Whyによって「手触り感」のある社会を目指そう』という話
【2】Whyの必要性は賛否両論
【3】イントラプレナーはWhyでなくHowからスタートし、WhatとWhyを深堀りする
【4】Whyが無くても商業的に成功することはあるが長期的には続かない
【5】「社会的」かつ「自分的」なWhyを獲得すると突き抜ける
【6】間接的なWhyというのも存在する
【7】Whyを探求するには3つ程有効な方法がある
それでは、本編です。
【1】議論のきっかけ:
『Whyによって「手触り感」のある社会を目指そう』という話
まず、この議論行うきっかけとなった、現代の日本に生きる自分たちにとって「なぜWhyが重要か?」
という話について、簡単に共有します。
この内容は、前出の徳重氏や南氏を初めとして、多くのアントレプレナー・イントラプレナーとの過去のやり取りの中から整理した内容です。
しかし、欧米に経済的に追いつくことでWhyが弱まり、企業がリストラやM&A・海外経済の影響による浮沈をする中でWhatがぐらつくようになり、現代の多くの人は、安心してHowだけに取り組めなくなってしまっています。実際、現状では事業好調な企業に勤める多くのサラリーマンも、「今後はどうなっていくのか分からない・・・」という、漠然としたモヤモヤ感、不安感に包まれていることを口にします。
ですが、これに悲観することはありません。
という営みは、これまで巨大システムに守られ、経済的に世界最高水準に達した現代日本の我々が、次にトライすべき課題です。
この、多くの人が「社会に手触り感を持つ」ための一番の近道は、実際にこのステップを踏襲し、既存の社会の枠組みにないWhy、Whatを自分自身で模索し、突き抜けて成功する存在を多く創り出すことにあります。
このような動きを日本でもどんどん加速させ、Whyから初めて、突き抜ける営み、イノベーションを増やしていこうじゃないか、というのが、今回の議論のスタートラインとなった話です。
【2】基本的に賛否両論が渦巻く
さて、今回のWhyの必要性議論、とにかく実に多くの賛否両論が入り乱れました。先ほどの「Whyと手触り感のある社会」という話を共有すると、実績あるイントラプレナーの間からは、
「率直に言って、Whyはそれほど重要でないという思いを強くしました。」(元戦略系コンサルティング・ファームマネージャー)「Whyという観点があることが新たな発見でしたが、まだWhyとは何か?がまだ腑に落ちていないところがあります。」(外資系メーカー・マーケティングマネージャ)
・Whyは、幾度となく遭遇する困難を突き抜けるエネルギーを生む
・突き抜けるためには、Whyによって「応援される」必要がある・Whyは人の存在や思考に一貫性を与えてくれる
(シンクタンク上級コンサルタント)
【3】イントラプレナーはWhyが無くてもスタートはできる。だが・・・
イントラプレナーの場合、所属している企業が既に取り組んでいるテーマ(=What)はすでに定義されており、その中で役職と立場によって、企業が保持する資源(人・金・モノ)をコントロールする権限を与えられます。
「イントラプレナーはWHYからではなく、まずWHATが与えられてそこからWHYを深堀するというのはまさに自分の体験と照らし合わせてもその通りだな、と感じた」(人材系企業経営メンバー)
「Howが人生において先にくるのは必要なステップで、WhyやWhatが後にくるというのが決して悪いことではない。むしろHowという経験があって、WhyやWhatがあるのでは?」(国内企業システム部長)
「Whyは必ずしも最初に生まれる、または気づいているモノではないのかもしれない。 What、Howを実践していく中で省みた時にWhyが整理され、より明確なモノになっていくのかもしれない。」(元Web系企業コンサルタント)
自分の目の前のビジネス、商売に注力して仕掛けをするうちに、
「部下やチームで、上司がWhyやWhatを導けるようにマネジメントスタイルを変化させれば、とても強いチームが作れるのでは?」(国内系企業システム部長)
「Whyは必要なのか?」
と問われたとき、イントラプレナーの回答は、
(スタートには)Whyは必要ない
(継続・強化のためには)Whyが役立つことは間違いない
となるのかもしれません。
【4】Whyにプラスの側面があるのは認めるが、Whyがなければ商業的に成功しないのか?
個人的な経験から言えば、必ずしもWhyがそれほど深くなくても、イントラの場合はビジネスとして成功するケースは、ザラにあります。適切な人材を当てて、メディアを正しく使い、オペレーションを万全にすれば、そこそこの商材であっても、そこそこのWhyであっても、ビジネスとしての成功はあります。「Whyは人の存在や思考に一貫性を与えてくれるということ。これは自分がテーマとしていることで、ディスカッションさせていただいた方の多くは自覚があるにせよないにせよ、それを実行している方たちだなぁと思いました。」(人材系企業社員)
【5】Whyは社会的でなければならないのか?
次に出てきた論点は、これです。これをそのままWhyにしちゃいけないの?世の中の人に共感してもらえるようなもの、他の人のためになるような「社会的なWhy」でなければ、Whyはダメなの?
「Whyを掘り下げると根源的欲求に近づいていってしまう」(敎育系ベンチャー代表)
アメリカの著名な心理学者であるミハエル・チクセントミハイが提唱する「フロー理論」の中でも、個人が没頭できる仕事こそ、最大の成長と成果をもたらす、という指摘があります。
では、この個人としての充足があれば、Whyは必ずしも社会的なものでなくてもいいのでしょうか?
Whyを「自分のあり方」と「社会のあり方」の両方を矛盾なく関連するかたちで持った段階で、初めて少し突き抜ける感じがする
・実はWhyはエゴの上に成り立っている(結局は自分が幸せになるため)・Whyには自分の中だけの深淵なWhyと、自分以外に表現できるWhyがある。・自分以外に表現できるWhyは、エゴに基づいた自分の中だけのWhyが、社会に受けいられる形で調整されたもの
(シンクタンク上級コンサルタント)
こう考えると、「Whyと自分のあり方との合致度」「Whyと社会のあり方との合致度」には、次の図のような関係があるかもしれません。
何時間でも何日でも、没頭して集中して、それに取り組むことそのものが楽しいことを続けるのが、最もパフォーマンスが上がるし、最も成長をもたらすし、その取り組みそのものが幸福である(フロー理論より)。
自分が直接知らない多くの人の共感を得ることができ、自分だけではどうしようもない資源や才能を集めることができ、多くの人が社会に対して貢献できる、エネルギーのうねりをもたらすことができる。
「自分に嘘をつかず、本当の自分を開示し、自分との対話を行うため(結局は自分との戦い) 」(シンクタンク上級コンサルタント)
【6】WhyとWhat・Howの関係は直接的とは限らない
そして、忘れずにおきたいのが、このポイントです。自分が根源的に持っているWhyは、それが直接的に自分の取り組むWhatやHowといった行動につながっていなくても、間接的に自分のWhyを具体化する人たちへのサポートという形もありえるという観点です。「他の方の話を聞いていて、WhyをWhat・Howへ転換させる方法って、必ずしもダイレクト・直接的ではないのだなと思いました」(サービス系企業マネージャー)
「Whyのテーマが大きいなか、自分が弁護士としてやれることは限られている。一方で、リスクをとってチャレンジするアントレがいる。自分が弁護士としてそうした人たちをサポートすることで結果的にwhyに直結できるんじゃないかと気づきました。」(弁護士)
「ディスカッションを通じて(Why/What/Howの)ツリーには複数の形があるのかな、という印象を持ちました。具体的には、多くの人を巻き込んで行く大木を育てたい人、誰かの大木の枝になりたい人、とかね。」(ベンチャーキャピタリスト)
【7】具体的には、どうやってWhyを深めていくのか?
では、具体的にどうやってWhyを深めていけばいいか。その答えの1つは、先ほどから挙がっている「How・What・Whyの繰り返し」にあります。「本気で何かにチャレンジすると何らかの矛盾や課題に気づきやすくなり、そこで初めて新たなWhyが生まれてきたり、もともと持っていたWhyがより「太く」なったりするもの」(ベンチャー経営者)
「Whyを持っている人に出会ったり、問いが投げられる機会があることは、きっかけになる可能性はあるけれど、もっと地道な、小さな(上記の)ループを回しながら、幹を太くしていくんじゃないかなぁという気がする」(ベンチャー経営者)
「Whyは探し続けることで、いつか見つかる。という話が印象的でした」(海外人材系企業マネージャー)
【方法3】Whyに忠実そうなWhatやHowを試せる実験場を持つ
「人は気が進まない、よくわからないことにはWhyを求め、論理的に納得感を作り動く。個人視点で見ると、Whyを作るというのは、協力してもらえる人への説得力を持った何かを作るということであると思う。ただし、非常に言語化しにくいがゆえに、言葉にすると嘘っぽくなってしまうことは多々ある。 」(銀行勤務・非営利コミュニティ運営者)
「夢中に取り組んでいるときにはWhyは言語化される必要は無く、何かを成し遂げた後に後付けで論理的に整理される場合も多いのではないか。言葉で説明してしまうと、とたんにつまらないものに感じてしまう側面もある。説明不可能なものはどこか魅力的に感じる。その一方で、今回のイベントで自分のWhyを言語化することで自分自身の思考の整理をすることもできた。」(ゲームメーカー勤務)
「(他の人達とWhy・Whatを紹介し合うことで)自分のWHYを整理することができた」(大手電機メーカー勤務)
「ダイアローグを通じ、他の3人のメンバーからは、「Whyはできているよ!」と言われ、自己認識と他者から見える自分のギャップに驚きました。自分ではいつも自信がなく、人には何も与えられないと思っていましたが、何となくですが、自分らしさを見つけられた気がします。私は私でいいんだと思い、血が通った感じになりました。」(広告代理店勤務)
そんなときに役立つのが、例えば高校生・中学生への敎育をテーマとしたパートタイムNPOへの参加。
普段とは違ったHowやWhatを試すことができ、自分にとってのWhyを色々と模索することができる場を持つことによって、そのWhyの幹を、より多角的に深めることができます。
以上、いかがでしたでしょうか。
あなたが現在取り組んでいるHowやWhatには、突き抜けることのできるWhyは存在していますか?
それでは
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