オルタナティブ・ブログ > 平凡でもフルーツでもなく、、、 >

感覚人間の思いつき、、、気になった記事、、、雑記等

環境少女報道のサムネイル画像から感じた「人は笑みを浮かべた人々をより信頼できると感じ、怒っている人々をより信頼できないと感じる」という研究結果のこと。

»

■サムネイル画像の表情に困惑

怒れる環境少女のメッセージとして

「私たちを裏切った」、「よくもそんなことを」、「裏切り、許さない」

といった強烈な言葉と、怒った表情の写真と共に沢山のニュースが報じられたとき(まだ中身を読む間の段階)わたしは困惑というか、正直引いてしまいました。

なぜそう感じたのかを、少し言語化してみます。

見出しのメッセージと相まって、サムネイルとして使用されている画像を眺めていると、何とも不穏、不愉快な印象を抱きました。

スピーチの様子をYoutube(動画)で確認したことで、この印象は少し薄らいだのですが...

■第一印象の科学

この体験から書棚にあった「第一印象の科学 なぜヒトは顔に惑わされてしまうのか?」にもう一度目を通してみました。

人間は良くも悪くも、0.1秒ほどの時間で、顔を見て印象を形成してしまう性向が備わっているそうです。

この判断は正確とはいえず、あくまで○○な顔の外見として、人々が共有しているステレオタイプを引き出す手がかりの一部となるということで、外見をコントロールすることの重要性を説く言説に通じている訳ですが...

人は、信頼性の印象を形成するとき、中立的な顔にそなわるポジティブまたはネガティブな感情表現への類似性に頼るということが推論できる。こうした感情表現はとりわけ、行動意志を知る手がかりになる。たとえば怒っている人は多くの不快なことをするだろうから避けたほうがいい、というように。

中略

ほとんどの状況では、人は幸せな顔の見知らぬ人にアプローチし、怒った顔の見知らぬ人は避けようとする。信頼性の印象は、相手の意志を読み取ろうとする努力が現れたものなのだ。

信頼できると知覚された顔は、魅力的、情緒安定、知的、攻撃的的でない、脅威をもたらさない、顔などとして知覚されるのだそうです。

この印象には多くの重複性があり、単純な構造でも、そうした印象を体系化できる可能性があるとのこと。

こちらの図は、第一印象の構造を図示したもの。

横軸の左から右にいくほど、顔はポジティブに知覚され、縦軸は、下から上にいくほど、威力があると知覚されるそうです。顔がある位置は、その人物が善悪と威力について近くされたレベルを示しています。

CCI_20190929_090353_0001.png

出典:アレクサンダー・トドロフ著:第一印象の科学 なぜヒトは顔に惑わされてしまうのか?:P151より

ここを読み返してみて、今回初期の報道を見て生じた自分の気分・感情は、やはりここで体系化されていることに収まっていると感じました。

■画像選択を間違った可能性

今回ご紹介した、「第一印象の科学 なぜヒトは顔に惑わされてしまうのか?」のP202で、

諸研究でも、人は笑みを浮かべた人々をより信頼できると感じ、怒っている人々をより信頼できないと感じることが裏付けられている

と明言しています。

民主主義において政策議論や社会運動を拡大するためには多くの人を巻き込んでいく必要がある訳で、良くも悪くも、デジタル操作が一般的になるはるか以前から、新聞社の編集者たちは「画像選択」という印象操作をしてきました。

ネットで記事をクリックしてもらうために、扇情的な見出しやインパクトの強い写真を使用する傾向が強いことはこれまでにも指摘されています。

今回の世界規模での露出が怒りに満ちたサムネイル画像と共に配信されたことで、見知らぬ大多数の第1印象は果たしてどんなモノだったのでしょう?

画像は人の印象を歪めることもできるのですから、環境少女を後押ししたい、賛同者を増やしたい側のメディアは違うメッセージや画像で配信したほうが、否定的な反応を軽減できた可能性もあると考えられないでしょうか?

P.S.
このエントリは、環境少女の主張内容については範囲外として書いています。
あくまで人間の認知機能(それも間違うことが多い)について明らかになっている知見をもとに、個人的な意見を書いたものです。

Comment(0)