「派遣社員、3年勤務なら時給3割上げ」そんな利益はどこにある?
「派遣社員、3年勤務なら時給3割上げ」というニュースが昨晩報じられました。
年金不足問題などを考えれば、こういった施策も必要なのかもしれませんが、現実のビジネス環境を考えるとお役所の感覚のズレを感じずにはいられません。
その辺の理由は後述させていただくとして、まずご紹介したい記事があります。
先日、事業を継続していくためにどのような工夫や努力が必要なのか、いま一緒に仕事をしているメンバーと意識合わせをするために、ネットコマース株式会社さんのメルマガで配信された記事をスタッフの皆に共有して話し合いの場を持ちました。
事業を継続することと、できるだけ値下げ圧力に屈しないために、どうしたら良いか?という点で、わたしもこちらの斎藤さんと同意見。
「課題解決型」はコスト削減が正義である。だとすれば、ここに従事しても労働単価を上げることは難しい。つまり、そこに関わっている限り、いまのスキルのままで、いまの仕事を続けながら、給料は上げて欲しいといっているようなもので、どだい無理な話である。自分や家族の将来のためにもっと給与を増やしたい、あるいは、時代に即した仕事にチャレンジしたいと考えるのであれば、エンジニアであれ、営業であれ、「価値創造型」に対応できるスキルを身につけるしかないのだ。
同じ仕事を続けているということは、「少しでも安く」の圧力が、常にかかり続けるということを意味します。
またIT方面など新陳代謝のスピードが速いビジネス環境においては、3年同じことをやっていることが稀だったりします。
つまり、能力が認められている人ほど、新しい仕事に取り組む圧力に晒されるとも言えると思います。
現在時給1000の仕事を、待遇改善の名の下に1300円、1500円にするのも現在の日本においては必要な社会施策なのかもしれません。
ですが、IT化などによる、効率化・省人化が進めば、進むほど、同じ仕事が3年経過すれば、「少しでも安く」の圧力がかかります。
そのとき、「少しでも安く」の圧力がかかる仕事で時給3割値上げの原資をどこから捻出するのですか?と
つまり、自分の携わっている仕事が「課題解決型」でコスト削減が正義である場合、賃上げを要求すること自体がビジネス原理に反していて実現可能性が低いと私は考えます。
なので、そういう努力を自分の能力開発に充てたほうが結果への早道だったりしないでしょうか?
厚労省の狙いはあくまで「同一労働同一賃金」だという指摘もあろうかと思います。
ただ、今回の記事を見るに、
自助的に、生き残りと収益の健全化に取り組んでいる事業者からすると、あまりに世間の実態から乖離してないか?と自分は感じました。
時給1000円も払えない企業は淘汰されてしまえという主張にも一定の正しさはあるかと思います。
ただし、IT業界の末端であるウェブ制作の事業領域であっても、アルバイトに1500円~2000円を払う用意があっても人材が集まらないという一面もあります。
また、デジタルマーケティングなど、ITとビジネスの両面のスキルセットが必要な領域では、かなり高額の給与設定をしていても企業が望む人材の確保は難しい現実もあります。
簡単に人手不足というのは簡単ですが、収益構造は無視して、単純に時給が安いから上げろという問題の他に、企業としてはそれなりの給与を払う用意があるのにそこに到達する人材が極端に少ないという問題にも着目する必要があるのではないでしょうか。
大多数は、そこは国や企業が育成すべきだというのかもしれませんが、フリーランスから独立起業で30年サバイブしてきた身としては、値段の交渉できる職能・能力を確保するのはまず自分の努力だと思うのです。