マイナンバーサイト、100億円かけ利用率0・02%報道に感じる違和感
朝日新聞が
マイナンバーのサイト、100億円かけ利用率0・02%:朝日新聞デジタル
- 「マイナポータル」のサーバーの利用率が、100億円かけ利用率 0.02% に留まった
- ハローワークと他の公的機関をつなぐサーバーを厚生労働省が約80億円かけて整備しながら、利用率が 0.1% だった
- 過大な想定に基づくサーバー整備の実態が改めて浮かび上がった
- 内閣府はサイトの運営を続けながら、新たな整備費をかけ、クラウドを中心とした新システムを構築
- クラウドだと実際の利用に応じて費用が決まるため、利用が少ない場合に支出を減らせる
↑このように税金の無駄使い感を煽るタイトルで記事を公開しています。
配信が7/27(土) 3:00配信で、これを書いているタイミングでヤフーでは3000を超えるコメントが寄せられ、興味の高さを伺うことができます。
記事では、国民の7割近くの8700万人がカードを保有との前提のもと、
- 自分の個人情報をどの行政機関がどう利用したかチェックできる
- 自分の所得や社会保険料の納付状況などを確認できる
- 税金や予防接種などのお知らせを受け取れる。なりすましなどによるマイナンバーの不正利用を懸念する声を受けて、整備された。
このような目的でサイト利用が2,025万件という予想を立て、(2018年度までの6年間運用した)費用として100億が掛かったとしています。
そして、サービスが始まった17年7月~今年5月に(1)~(3)の利用は11万件余にとどまり、月平均にすると5千件近くと想定の 0.02% だったと報じています。
予想 | 月間実績 | |
(1)自分の個人情報をどの行政機関がどう利用したかチェック | 6,090,000 | 707 |
(2)自分の所得や社会保険料の納付状況などを確認 | 6,090,000 | 3147 |
(3)税金や予防接種などのお知らせを受け取れる。 | 8,070,000 | 1130 |
20,250,000 | 4,984 |
この数字、確かに想定と実態との乖離と、構築費用が税金であることを考えれば批判されるのは致し方ないところ。
ただ、レベルは違えど何かしらのシステム構築に携わることがある立場からこの報道を見るに、実際にサイトがパンクするような事態やセキュリティに関する問題が生じた時には、それはそれで批判されるのは確実。
またプロジェクトを立ち上げ、推進する立場の人が算出する数字として、あまり低い利用率で仮説立案することもできなかっただろうとも思います。
記事の後半部分にあるように、クラウド移行で大幅な経費削減が見込まれる事案であることも事実だろうと思いますし、今回判明したという数字から税金の無駄使いとして批判するのは簡単ですが、報道姿勢へ感じる残念さは以下の点においてです
- 実際にユーザ数8700万人が利用した場合、扱う情報としてセキュリティ面でも神経質にならざる得ないシステムのコストとしての16億の妥当性の検証はしていない
- 100億は6年間のコストであることはタイトルからはわからない
- 政府の意向としてもクラウドへの移行についても報じてはいるが、クラウド利用に関して生じる一般的なセキュリティへの懸念点には触れていない(当たっているかは別として)
- 利用状態で費用が変動するクラウドサービスは、本件のようなシステムには向いている領域であるが、これがGAFAなどの事業者となった場合の問題点(プライバシー面、租税回避のいずれも)には触れていない
はたまた、「マイナポータル」で事故が起きたら起きたで、その時はまた猛烈な批判に晒されるでしょうから、関連各所の苦労はこれからも続くでしょうし、本当に大変だろうな...と思うばかりです。