ついに日本の終身雇用制度が完全終了へ
ついに終身雇用制度が完全終了へ
一昨日こんなニュースが報道されました。
経団連、通年採用へ移行 新卒一括見直しで大学と合意 :日本経済新聞
経団連は新卒の学生の就職活動について、通年採用を広げていくことで大学側と合意した。春の一括採用に偏った慣行を見直す。能力を重視した採用の動きが強まるなか、大学を卒業した後での選考など複数の方式による採用へ移る。自由な採用活動が広がる契機となり、横並びの一括採用と年功序列を象徴とする日本型の雇用慣行が大きく変わりそうだ。
確かにこの制度改変は、日本型の雇用慣行が根底から変化をする要因になると推測されます。
また、19日、ついに終身雇用の完全崩壊を感じさせるこちらのニュースも報じられました。
経団連会長"終身雇用を続けるのは難しい"(日本テレビ系(NNN)) - Yahoo!ニュース
経団連・中西宏明会長「正直言って、経済界は終身雇用なんてもう守れないと思っているんです。どうやってそういう社会のシステムを作り変えていくか、そういうことだというふうに(大学側と)お互いに理解が進んでいるので」
インタビュー映像の「正直言って経済界は終身雇用なんてもう守れないと思っているんです」の、「終身雇用なんて」という表現には笑ってしまうしかありません(苦笑)
どちらの話題についても、週明け22日に開催される協議会で報告されるようなので、ニュースとして報じられるのを待ちたいと思います。
至るところにある時間的遅れ
『世界はシステムで動く ―― いま起きていることの本質をつかむ考え方』の著者であるドネラ・メドウズは、望ましい家族規模についての社会規範が変わる上での時間的遅れは少なくとも1世代の時間的な経過が必要だとしています。
同書では、物事の変化に必要なさまざまな要素についてバスタブと注がれる水を例にこんなモデルを紹介しています。
バスタブの水は、排水栓を抜けばもちろん水が流れ出ていき、バスタブの水位は空っぽになるまで下がっていきます。
このモデルからわたしたちは以下のようなバリエーションの存在を知ることができます。
- すべてのインフローの合計が、すべてのアウトフローの合計を上回っている限り、ストックのレベルは上昇する
- すべてのアウトフローの合計が、すべてのインフローの合計を上回っている限り、ストックのレベルは低下する
- すべてのアウトフローの合計がすべてのインフローの合計と等しい場合は、ストックのレベルは変わらない。インフローとアウトフローが等しくなった時点に到達していたレベルで、動的な平衡状態に保たれることになる
従来システムとこれからのシステムのストックとフロー
では、このモデルを新卒一括採用と終身雇用に置き換えてみると、こんなイメージでしょうか。
ドネラ・メドウズは、人間はどうもフローよりもストックに集中して考える傾向があり、加えて、フローに注意を向けるときにはアウトフローよりもインフローに集中する傾向があるとしています。
ただ、今回の通年採用へ移行と終身雇用制度の終焉確定はまさに、企業における人材獲得のインフローとアウトフローの根本的な変革を要求するものであることが予想できると思います。
そして企業は制度移行まで2つの相反するシステムが混在するなかで、必要とされる人材獲得を行う必要に迫られるでしょう。
また、ドネラ・メドウズが教えてくれるように、望ましいとされる社会規範が変わる上での時間的遅れは少なくとも1世代の時間が必要とした場合、一括採用と終身雇用を常識とするマインドセットを持つ世代から、新たなシステム(モデル)が当たり前の世代への入れ替わりには、数年ではなく、少なくとも数十年の時間的遅れが生じます。
そして、このストックとフローにおける経時的な挙動に対してさまざまな対応が必要となることでしょう。
取りも直さず、経団連会長が「終身雇用を続けるのは難しい」と発表することの社会に与える影響は計り知れないものがあるでしょう。