クラウド普及を想像できなかった日本の大手IT企業
夏野氏が投稿がニュース化した理由
夏野 剛氏のTwitter投稿から、
- ドワンゴの夏野剛社長「76歳の母になんてひどい押し売りしてるんだろう」ドコモ携帯のオプションに苦言
- 「76歳の母にひどい押し売り......OBとして情けない」 夏野氏、ドコモの契約オプションを批判
- 「76歳の母になんてひどい押し売り」ドコモOBのドワンゴ夏野社長、ドコモの大量不要オプションに苦言
こんな感じでニュースとして報じられています。
このような契約は目新しいものではないですが、今回元ドコモの夏野氏が古巣のドコモに対して「OBとして情けない」とコメントしたからここまで話題になったのかな...と推測しています。
ここ最近クラウド関連ビジネスでサブスクリプションモデルへの注目度が高まって来ており、日経の誌面などでも目にする機会が非常に増えていると感じます。
ただ振り返ってみれば、ガラケー時代からほぼ使わないけれど、サービスやアプリの契約が継続しているケースが相当数あり、その経済規模は馬鹿にできないレベルだったはずです。
そういう意味で今回多くの反響があった原因としては、
- ドコモ出身者で著名人のOBが古巣の稼ぎ方を批判したから
- 高齢者にとって不要と思われる契約をさせられていたと推測できる内容
- グレーゾーンでビジネスを拡大するベンチャーとかではなく、日本有数の巨大企業がこういう商売をしていた
こんな感じに集約できるのでは?と考えています。
Slackの「フェアビリングポリシー」
IT系の会社などではメールを使用する割合がかなり減って来ているようです。
国内サービスですとチャットワーク、海外サービスだとSlackなどを利用されているところが多いのではと推測します。
当ブログの読者の方にSlackの説明は不要かと思いますが、これから上場を予定しているテクノロジー・ベンチャー企業。
料金システムは利用プランに対して毎月もしくは年払いするサブスクリプションモデルとなっています。
前項では、NTT系という日本有数の巨大企業が不要な契約を多数結ばせるような商売をしていることが炎上の原因ではと推測したわけですが、ここで取り上げたSlackはベンチャー企業ながら「フェアビリングポリシー」というものを採用しています。
これは、機械的にユーザが活動(会話)しているかを検知して、メンバーが Slack を 14日以上利用していない場合、非アクティブとなり、請求期間中に利用されなかった日数分の日割額が、Slack クレジットポイントとして Slack アカウントに払い戻される課金システム。
つまりメンバーの登録をしていても単純に頭数で課金するのではなく、システムが稼働状態をチェックして状況に応じた金額を請求するシステムになってます。
利用者にとって不要な契約を複数結んで毎月収益を上げる儲け方とは正反対の手法で、まさに「フェア」な請求ポリシーを採用しているのです。
日本企業のお家芸「顧客第一」にも海外勢の影
サブスクリプションモデルは収益確保の確実性の高さが人気のひとつであると言えます。
そういう意味で冒頭紹介した大量不要オプション契約は、売上を定常的に確保するためには正攻法であるとも言えます。
サブスクモデルが話題となる中で、流行を取り入れたいだけの企業が月額と言いつつ年契約しか選択肢がないとか、冒頭取り上げたような利用しないオプションを多数契約させるといったことは、本当に顧客のことを考えている企業が選択する手法なのか、わたしが言うまでもないことかと思います。
これまで顧客を第一に考えるというようなアプローチはこれまでだと米国企業よりも日本企業のほうが優れていた分野ではないか?とわたしは考えていました。
Salseforceなどはカスタマー・ファーストを掲げていますし、まだ上場前のベンチャーであるSlackが「フェアビリングポリシー」を取り入れていることから学ぶことが多くあるような気がしませんか?
クラウド普及を想像できなかった日本の大手IT企業
米国においてはギグ・エコノミーなるものが拡大しつつあるようですが、テクノロジー業界の動向としてはサブスク・モデルの月額課金から都度課金という概念の普及が進むように思います。
その中核になるのはAWSのLambdaのようなサーバーレスアーキテクチャーなどかな?と推測したりしているのですが、このテクノロジは、かなりざっくりですが、原則としてユーザーからのアクセスなどによって、プログラムが動いている間のみ課金がされるシステムを提供するものです。
この「プログラムが動いている間のみ課金がされるシステム」は収益機会の最大化という観点からするとサービス提供側としては辛い面がありますが、ユーザ側からすれば歓迎すべきサービス形態かと思います。
このように本当に顧客が望む形を実現しようとすると、サービス提供側としてはリスクを抱える、厳しい側面があることも出てきます。
繰り返しとなりますが、米国のテクノロジー企業が自分たちの収益機会を減らしてでも、ユーザの便益を追求してサービス提供している姿があることを忘れてはいけないように思います。
今日取り上げたAmazon、Slack、Salesforceを始め、クラウドを活用してサービスを提供する企業がどんどん伸びるなか、富士通やNECのリストラのニュースが報じられています。
富士通はかつて米IBMに果敢に挑み、高性能のメインフレーム(汎用機)を短期間で開発した実績を持つ。通信機器や半導体でも業界をリードしたが、00年代以降、NECともども中韓勢に敗北。半導体やパソコン、携帯電話といった事業を相次ぎ売却・縮小。経営資源をシステム構築などの分野に集中させる構造改革を進めた。
しかし、そのシステム構築でも2010年代以降はGAFAにも領域を侵食されている。システム基盤では米アマゾン・ドット・コムなどは複数の企業や個人が間借りして利用するクラウドに毎年数千億円を投じ市場を育ててきた。
一方、富士通など日本勢は「クラウドは信頼性が低い」として個々の企業にサーバーを売り続けていたが、設備の維持費を3割程度削減できるクラウドへの移行を進める企業は急増した。ANAホールディングスは予約データの分析などでアマゾンのクラウドを導入している。高い信頼性が求められるインフラ企業にまでもクラウドが普及する現状に、今春までに3千人を削減するNECの新野隆社長は「恥ずかしいが10年前には想像できなかった。気づいたときには追いつけなくなっていた」と振り返る。
(強調は筆者)
今日紹介した、フェアビリングポリシーであったり、カスタマーファーストというような領域においても「恥ずかしいが10年前には想像できなかった。気づいたときには追いつけなくなっていた」とならないことを願っています。
※昨日投稿したエントリ(現在は非公開)の内容を改変し、新たな記事として投稿しました。