東日本大震災の最大余震が高速道路上で襲ってきた・・・
4月7日(木)は仙台を中心とした被災地への訪問でした。この被災地訪問の目的は大きく分けて 3つ。ひとつは、Hack for Japan (http://www.hack4.jp/)というプロジェクトをかねて、Google 及川さんとの同行訪問。そして、もうひとつは、マイクロソフトとして被災地にどういう貢献ができるかといった現場の情報収集、最後に個人的なボランティア活動でした。
で、その帰りに、あの最大規模の余震に遭遇したのです。しかも、時速120km(あ、スピード違反だ・・・)で走行する東北自動車道の追い越し車線。軽い震度だと走行中の自動車が気づくことは少ないと言われています、が、が、しかし、今回の余震となるとそれは別ものでした。最初は「ハンドルがとられる」程度、そして次第に「なんとか姿勢を保つのが精いっぱい」といった感じで安定しなくなるのです。おまけに目の前の直線で平らなはずの路面がうねるように見えるのでした・・・。正直この瞬間はかなりあせりました。まぁ、しかし障害物も対向車もなく、まっすぐに走ればよいだけの高速道路ですから無事に余震はやり過ごすことができました。ただし、その後、高速道路のすべての掲示板が、「通行止め、ここで出よ」と表示が切り替わるのです。とはいうのもの、いったん高速道路を出ると、都内への帰路を急いでいる私には大きな足かせとなるので、なるべく走行を続けなければならないということで、ひたすら都内に向けて運転を続けるのでした。と、同時に、Twitter やら、SMS やら、Facebook メールやら、電話が鳴り響きます。そう、安全を確認する私の知人たちからの連絡です、とてもありがたいです・・・。ある、が、しかし、走行中です・・・。少なくとも数分間は停車して応答することはできないのです。その連絡のない空白が余計に安否確認の連絡を助長していたのかもしれません、連絡をいただいた皆様、ごめんなさい。
ところで、この仙台を中心とした被災地への訪問で実感をしたのは、
・「仙台市内のIT企業の立ち上がりの速さ」
・「ITインフラとITスキルという大きな壁」
・「新聞・テレビ・ラジオにかなわないインターネット」
でした。
そう、仙台市内は大きな余震が多少襲ってくるものの、多くの企業が平常時にもどりつつあります。IT企業(特にソフトウェア産業)は在庫を持たない、物流をもたない、工場をもたない、ということで物理的な被害が少なく、ライフラインとインターネット環境さえ整えば、ビジネスは限りなく平常時に近くなるのです。しかし、その仙台駅周辺から車でわずか30-40分、そこには目を覆いたくなるような被災地があるのです。
「復興に向けた地域」と、いまだに「救出作業が続く被災地」の両面が存在するのです。
車でわずか30分ほどで見えてくる被災地の風景、この風景を前にして、しばらく言葉が出ない・・・
また、訪問したいくつかの企業は「Twitterで安否確認をした」という声や、「UStream で津波映像を見た」という体験を伝えてくれました。しかし、これは全体で言うと少数なのかもしれません。多くの人々は指定避難所に駆け込み、状況もわからないまま絶え間なく来る余震に耐えていたのだと思います。停電をはじめとするライフラインの寸断によってインターネットどころではない、という環境におかれた被災者の方々が多いことと思います。さらには、すべての人がインターネットを使いこなせるわけではありません。インターネットを使いこなすには充電されたスマートフォンが存在し情報を自分から探せる能力が必要です。さらには、パソコンの場合は、充電、ネットワーク機器といった部分にもケアが必要です。
そうなのです、被災地には「ITインフラとITスキルを使いこなす一部の層」と「インターネットどころではない!」という、これまた両面が存在するのです。
そして最後に、現地の方々の体験談から「新聞・テレビ・ラジオにはかなわないインターネット」を実感しました。避難所ではテレビ、ラジオが情報を得る手段だったそうです。そして、なんと地元の新聞は翌々日から無料で被災地に配布されるようになったのです。地元の新聞、地元のラジオですから、避難されている方々にとってもっとも身近な情報を伝達することができるようです。インターネット上でこれらの情報を探すのは非常に大変なのかも知れません。どこに情報があるのか、どのように情報を得るのか、という目的に対して能動的に行動・操作をしないと情報にありつけません。しかしながら、新聞・テレビ・ラジオは、避難所にいるだけですべての人にまんべんなく情報が降り注ぐのです。インターネットが双方向で世界中の人々とコミュニケーションできるとは言え、新聞・テレビ・ラジオにはかなわないメディアであると再考させられた体験談です。
地元の被災者の方々に必要な情報を素早く提供した新聞・河北新報
Hack for Japan という活動は、被災地の方々の救助・復興のために役に立つサービスを構築したりサービスのアイデアを出しあうことで、開発者が貢献できるプロジェクトです。今回訪問した体験をもとに、被災地の方々の立場・視点で物ごとを考えることができるように努力をしたいと感じています。
また、サービスが提供されたとしても被災地でインターネット接続できる環境がないくては意味がありません。そこで、マイクロソフトでは数千台にもおよぶパソコンを寄贈するプロジェクトをスタートさせました。これで少しでも「ITインフラが無い」という壁を取り払うことができればと思います。また、被災地ではパソコン上のエクセル(Excel)でさまざまな集計を行い効率化をしているケースが見られました。インターネット環境がなくとも、パソコンがあれば、作業の効率化は可能です。今回マイクロソフトが寄贈する数千台のパソコンにはもちろん、オフィス(Office)が入っており、あらゆる業務に役立てていただきたいと思っています。
マイクロソフトのパソコン寄贈プロジェクトによって到着した約100台のパソコン(第一弾)
最後に、私の今回の目的のひとつに個人的なボランティアがあります。それは被災ペットの救出です。というか、実際には避難所に居るペットを首都圏の動物保護センターへ移送することです。被災地の避難所ではペットと快適に過ごすことはできません。そこで、避難所のペットを一時的に移送するのです。このボランティア活動は私が被災地へ出発する前々日に、たまたま Twitterに流れてきた、「相馬市・南相馬市に今週中に行かれる方、ペットを保護していただけませんか?」というつぶやきです。会ったこともない方のペットを、これまた会ったこともない動物保護センターに届けるというボランティアは Twitterによって結ばれたのです。やはり、インターネット・ソーシャルネットは被災地の方々の役に立つことができた、とあらためて実感しました。