スルガ銀行VS日本IBMの争いはその結果よりも過去経緯やこれからの過程が気になる。
スルガ銀行がシステム開発を巡って日本IBMを提訴した、とのこと。
■スルガ銀行プレスリリース
「経営システム開発にかかる損害賠償請求訴訟の提起について(2008/03/06)」
http://www.surugabank.co.jp/surugabank/01/07/080306.html
オルタナティブ・ブログのブロガーの方には日本アイ・ビー・エムの現役社員およびOB・OGの方が結構たくさんいらっしゃるので、この話を取り上げるべきかどうかの迷いはあったが、少なくとも関連していない人間の方が取り上げるべきかもしれない、ということであえて書いてみる。
スルガ銀行、と言えば、ネット時代初期の頃からインターネット上のバーチャル支店展開を行ったり、パラボラアンテナやサーバーで武装した(?)移動銀行窓口車(http://www.surugabank.co.jp/surugabank/01/03/0103030000.html)を用意していたり、また、先日では他の金融機関に比べ一早くゆうちょ銀行との提携を行ったり、とその長い歴史や同族経営といったプロフィール(沿革はこちらをどうぞ。→http://ja.wikipedia.org/wiki/スルガ銀行)からは想像できないITに対しての理解やどん欲さ、またビジネスにおける柔軟性を持っている企業だ、という印象が個人的にある。
このニュースに対して、個人的に注目をせざるを得ないのは、「何故スルガ銀行は提訴という手段をとらざるを得なかったのか?」という所である。
正直、システム開発がうまく行かない、というのはあちらこちらで起こっていることだ、と思う。その理由には色んなものが考えられるが、少なくとも受託業者を訴える、ということは、自分達には瑕疵が無い、ということを証明しなくてはいけない。瑕疵が無い、ということを証明する、ということはその開発プロセス・決定プロセスやその一連にあたっての検討事項等を公開することになるのでは無いか、と思う。まず先進性をうたう企業ならば、その情報公開だけでも嫌がるのでは無いだろうか。
また、それだけ十分な証拠がある状況であれば、受託業者側もその瑕疵を認めざるを得ないはずであり、そうなれば訴訟云々に持ち込まれる前に、話し合いで解決が図られているはずであろう。例えば発注側が極端に小さい会社で、受注側が極端に大きい会社である場合は、発注側が結局泣き寝入りさせられる、ということはあるかもしれないが、(事実としての企業規模は別にして)スルガ銀行と言えばそれなりに名をはせた企業であり、日本アイ・ビー・エムが「えいっ!」と捻ることができるような企業でも無いように個人的には思っている。
それに(かなり個人的な思い込みだが)訴訟大国と言われる米国企業の血を引く日本アイ・ビー・エムなのだから、法務・法規対策については十分に用意があるに違い無い、と思うのだが、そこに対してわざわざ正攻法で「提訴する」ことになったスルガ銀行の意思は、一番重点におく部分としてどこにあるのだろうか。それは決して賠償請求金額の多寡では無いような気がする。
自分も過去数々のシステム開発に携わる中で、担当してくれている個人は別にして、受託業者側を訴えたくなるような気持ちには何度となくなったことがある。でも、それはあくまで個人の感情であって、会社をあげて正式に申し入れをするだけの内容が整っているか、と言えばそれは別である。会社として正式に提訴する、というのは余程の理由があったのだろう、と思う。
今これを書いているのは正直に書くと、2008/3/7のAM4:20あたりである。現時点、スルガ銀行のプレスリリースには出されているものの、日本IBMのプレスリリースには一切当件に関する記述は無い。広報担当のコメントとして「契約上の義務は果たしていると考えている。今後も話し合いを続けていく」とニュース類に記述されているだけである。ただ、これを深読みすると、やはり”話し合いはされていた”のだ。結果として埒があかない、とスルガ銀行が判断した、ということだろうか。
当事者では無いので、どっちが正しい、とか、おかしい、とかをコメントする立場にも無いし、その勝ち負けにも興味は無い。ただ前述のように、「どうして相手に瑕疵があったと言い切れるのか?」、「それをどうやって証明していくのか?」ということには非常に興味を持っている。それはシステム開発フローとして必要なプロセスの証明になるのか、もしくは不足感を明示化させるものなのか・・・。
もし法廷が公開されるのならば、是非傍聴に行ってみたい、と思う。
【参考記事】
・日経BP社
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080306/295561/
・NIKKEI NET
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080306AT2C0601706032008.html
・YOMIURI ONLINE
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080307-OYT1T00002.htm
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