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Digital×PR 大航海時代

空気を「つくる」から「読む」広報へ

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「アンビエント・アウェアネス」とは何か?

最近気になっている言葉に「アンビエント・アウェアネス」という言葉がありま
す。そのまま訳せば「周囲の認知」となりますが、日本語らしくすると
「空気を読む」となるのではないかと思います。
*dankogai氏は「空気を読む力」としています


「戦略PR」がバズワードとなった時には「空気」は「つくるもの」でしたが、
おそらく今は「読むもの」なのかもしれません。

この言葉を取り上げようと思ったのは、ちょうどクーリエ・ジャポン
8月号の特集「ツイッター時代の人間関係論」で、NY Timesのライター
CLIVE THOMPSON氏による「アンビエント・アウェアネス」の記事が
邦訳されていたからです。
*CLIVE THOMPSON氏の記事はこちら(英語)

記事の中で"Ambient awareness"についてはこのように説明されています。

社会科学者はこのようなオンラインでの絶え間ない交流を
「アンビエント・アウェアネス」と呼んでいる。これは、物理的に
そばにいる人のちょっとしたしぐさ(ボディ・ランゲージやため息、
的外れな受け答えなど)がちょっと目に入っただけでその人の
気分がわかるということとよくあてはまる。(訳:筆者)

Social scientists have a name for this sort of incessant online contact.
They call it “ambient awareness.” It is, they say, very much like being
physically near someone and picking up on his mood through the little
things he does ― body language, sighs, stray comments ― out of the
corner of your eye.(原文)

このように、ちょっとしたことを感じ取り、その情報から人や場所の
空気(状況)を読む「能力」、それが"Ambient awareness"なのです。


フェイスブックにおけるアンビエント・アウェアネス

記事の中では、"Ambient awareness"の一例として、フェイスブックへの
「News Feed」機能導入の際のことが触れられています。

「News Feed」は友人やファンになっているページなどの更新情報が一つのペー
ジにまとめられているもので、この機能ができる前はいちいち友人などのページ
を訪問して更新を確認しなければなりませんでした。

もちろん、現在もこの機能はフェイスブックにあるのですが、機能導入の際には
ユーザーからかなりの反発があったそうです。

なぜなら、自分が気軽に更新している内容が友人みんなに知られてしまうから。

これを受けて、フェイスブックにプライベート設定ができるようになり、ユー
ザーはどのような関係の人物まで投稿内容を公開するかを自分で決められるよう
になりました。すると、反発は次第になくなりました。ユーザーはNews Feedの
便利さを理解し、利用するようになっていきました。

News Feedの機能追加によって、ユーザーが感じた恐怖とはまさに自分の「ちょっとしたこと」が周囲に伝わり、
プライバシーが筒抜けになってしまうのではないかという恐怖だったのではないでしょうか。

ちょっとした投稿で自分が何を考えているのかわかってしまう、
逆に、News Feedの更新をみることで、今友達が何をしているのか、
何を考えているのかがわかる。

これもひとつの"Ambient awareness" の側面であると考えられます。


企業とアンビエント・アウェアネス - アップルの「アンテナゲート事件」から

さて、フェイスブックを始め、ツイッターやブログ、商品レビューといった
いわゆる「オンラインの口コミ」が企業のマーケティングにとって重要性を
増していく中で、企業はそれを活用しようとして悪戦苦闘しています。

特に事件や事故が起きた時には口コミは企業を動かす力にもなります。
最近ではAppleの「アンテナゲート事件」が代表的な例でしょう。

iPhone 4のある部分を手で持つとアンテナ性能が落ち、電波が弱くなって
しまうという情報
がブログを始めとしたオンラインメディアで報告され、
それを受けてAppleは「ソフトウェアの欠陥」としてOSのアップデートで
対処しようとしました。

しかし、集団訴訟が起されたり、有力紙Consumer Reportで「推奨できない」と
いったコメントがでることで、より踏み込んだ対処を取らざるを得ない状況に
なりました。

そして異例の記者会見を行い、アンテナの問題はiPhone固有の問題ではない
ことと、アンテナ問題を解決するケースを無償配布すると発表しました。

これによってアンテナ問題はいったん鎮静化しているようです。
とはいえリコールという最悪のシナリオは回避しているものの、
Appleブランドが受けた影響は少なくありません。

特に、他社製品を引き合いに出した性能比較についてはウェブサイトを作って
比較してみせるなど強くメッセージを発信していますが、各社から反論を受ける
など、この戦略がうまくいっているようには思えませんし、またそのメッセージ
がユーザーを説得することに成功しているとは言い難いと感じられます。

つい先日iPadという製品によってパソコンでも携帯電話でもない、
新しいデジタルデバイスの市場を切り開くことに成功したAppleのように
優れたマーケティングを行う「空気作り」の上手な企業であっても
「自社が何を求められているのか」を把握することは困難なものなのです。

ユーザーを引き付けるトピックや製品を作り、PRするという
「空気づくり」も重要かもしれませんが、これからの時代のマーケティング/PR
においては企業も「空気を読む」能力を求められるのではないでしょうか。


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