「お金がなければ生きていけない」という常識をぶち壊してくれる本:『独立国家のつくりかた』感想
オルタナブロガーの大木豊成さんが「(お金だけじゃないけど)お金は大事だよ~」というエントリーを書いてらっしゃいました。確かにお金は大事だし、お金がないとできないことはたくさんあるし、お金がなければ生きていけないというのが常識になっていると私も思いますが、そんな常識をぶち壊してくれるような本を最近読みました。『独立国家のつくりかた』という本です。
著者の坂口恭平さんは、子供のころから、なぜ人間だけがお金がないと生き延びることができないのか、そして、それは本当なのかといった疑問を抱えていたそうです。早稲田大学の建築学科の学生だったときに、路上生活者のことを調べていて、彼らが都会のゴミを転用してブルーシートハウスをつくり、お金をかけずに楽しく生活していることを知り、物事を見る視点や思考を変えて、共同体として集まって協力しあえば、0円で生活することは簡単にできるのではないかと考えます。そして、自分でもモバイルハウスをつくってみて、システムをゼロからつくることは難しくても、自分で生活をゼロから組み立てるのはそんなに難しいことではないと結論づけます。そうやって考えて実践してきた内容を写真集『0円ハウス』や著者『TOKYO0円ハウス0円生活』にまとめています。
東日本大震災とそれに続く福島原発事故の後、坂口さんは、逃げるべきだと知りながら言わない政府はもはや政府ではないから、今は無政府状態であり、政府がないのはまずいから、自分で政府を立ち上げようと、「新政府」をつくってしまいます。
坂口さんのやり方で面白いなと思うのは、単にやみくもに動くのではなく、ちゃんと法律や規則を調べて考えていることです。路上生活者の人たちが河川敷に家をつくって暮らしていけているのは、河川法よりも憲法第25条の生存権のほうが優先されるからだとか、モバイルハウスは建築基準法では家とはみなされないから、免許がなくても建てられるし、固定資産税もかからないとか。新政府をつくるときにも、「国家とは何か?」を定めたモンテビデオ条約にある、国民、政府、領土、外交のできる能力という4つの条件を満たすように考えています。そういう決まりごとをベースにしながら、それを新しい視点で見直すことで、新しい生活のレイヤーをつくってしまうようなやり方が興味深かったです。
日本政府は現在約1000兆円もの負債を抱えており、消費税増税などの愚策で今後より悪化することは目に見えてますし、ユーロ危機により世界経済自体がリーマンショックよりも悪化する可能性も高まっていて、近いうちに日本の財政が破綻する可能性はかなり高いと私は思っています。国家の財政が破綻したときに何が起きるかというと、一つはハイパーインフレなどでお金の価値がほとんどなくなってしまうことです。そういう事態に備えて、意識を変え、心の準備をしておくためにも、この本は参考になると思います。