国民のためには、一度「国家破産」したほうがいいのかもしれない:『円が消滅する日』感想
私がお世話になっている、元光文社ペーパーバックス編集長で、現在はジャーナリストとして活動している山田順さんから、新著『円が消滅する日』を献本いただいたので読んでみました。山田さんはこれまでにも『出版大崩壊』『資産フライト』『本当は怖いソーシャルメディア』といった社会的なテーマに深く切り込む著作を出していますが、この本も国の財政破綻問題をテーマにした衝撃作でした。
私は、経済学を本格的に勉強したことはなく、普段は経済に関する本もあまり読んでいません。元ツカサグループ代表で、現在会津で昭和30年代村計画を進めている川又三智彦さんが主宰する会津村塾の勉強会に参加するようになって、現在の日本の財政はいつ破綻しても不思議はない状況にあるということは聞いていましたが、この本を読んで、より具体的に財政問題を把握できたように思います。
何が書かれているかというと、日本の財政はもう引き返し可能なポイントを過ぎてしまい、財政破綻=国家破産を避けることはできないということです。増税は、役人や政治家が、自分たちが担当している間に破綻しないように少し先送りするための方便でしかないと。それで実際に財政破綻がどういう形で起きるのか、国家破産するとどうなるのか、それに備えて私たちに何かできることはあるのかといったことが、これまで財政破綻したことのあるアルゼンチンや韓国、ロシアなどの例をあげながら説明されています。
現在、国民の金融資産が1500兆円近くあり、このうち負債を引くと実質的には1110兆円ぐらいしかなく、政府の債務が約950兆円、これに企業や海外の負債を含めると1075兆円になり、この債務が金融資産を越えてしまうと、国債の引き受け手がなくなり、国家はこれ以上借金できなくなります。そうすると最終的には日銀に国債を引き受けさせざるを得なくなり、通貨としての円への信頼が失われ、ハイパーインフレが起こり、円の価値がほとんどなくなってしまうということです。
勘違いしていけないのは、国家破産というのは、単に「現在の日本政府の破産」に過ぎないということです。現在の借金のつけを未来に先送りするよりも、一度国家破産して現在の状態を招いた政治家や役人たちには退場してもらい、新しい体制をつくったほうが、現状維持よりも、未来に希望を持って生きられるのではないかと山田さんは主張しています。
国家破産に備えて私たちができることとしては、山田さんは、円建ての資産を持たず、海外口座でドルを持つことを推奨しています。
私自身は、会津村塾で川又さんが主張していることですが、財政破綻に備えて、これからはコミュニティで自給自足的に、お互いに助け合って生きていける体制をつくっておくことが重要だと思っています。
最近「貨幣経済」から「評価経済」へという話が、ネット上でよく話題になっていますが、財政破綻により、いつお金の価値がなくなるかわからないような状況だからこそ、評価や評判、信頼、共感といった目に見えない価値が、より重要になってくるのではないかと思います。
山田さんの主張は、以下の山田さんのブログの記事でも読めます。
愛国者なら「即刻国家破産せよ!」と主張すべき。財政破綻を逆手に増税を画策する財務省、支持する大メディア、破綻はないとする識者は、みな「反・愛国者」。国民を地獄に導く!
賛成するにしろ、しないにしろ、こういう論点もあるのだということを、ぜひ本も読んでみて、知っておいたほうがいいと思います。