オルタナティブ・ブログ > 点をつなぐ >

触媒のように世の中のいろいろな人やものをつないで変化を起こしていきたいと思っています

世界銀行東京事務所のソーシャルメディアへの取り組み

»

オルタナブロガーの徳本昌大さんがすでにレポートされていますが、私も昨日、世界銀行パブリックセミナー「開発とソーシャルメディア」に参加してきました。

来年の10月に世界中から金融や開発の関係者が約2万人集まる世界銀行の総会が日本で開かれることになって、今までもTwitterやメールニュースなどによる情報発信はしてきたそうですが、これを機に世界銀行のことをより多くの人たちに知ってもらおうと、これまで以上にソーシャルメディアに力を入れることになり、12月1日には世界銀行東京事務所のFacebookページを立ち上げたそうです。

その世界銀行東京事務所のソーシャルメディアの広報担当官に、私がロサンゼルスに住んでいたときからの友人で、『ソーシャルメディア革命』『検証 東日本大震災 そのときソーシャルメディアは何を伝えたか?』といった著書も出している立入勝義さんが就任し、その立入さんからお誘いをいただいて参加しました。

最初に世界銀行東京事務所代表の谷口和繁さんから挨拶があった後、立入さんによる「開発とソーシャルメディア」というタイトルのプレゼンがありました。以下、私が興味をもった内容を箇条書きで書いていきます。聞き間違いなどで多少発表内容と違っているところはあるかもしれません。

・2012年10月に総会が開かれる。日本での開催は40年ぶりで、日本が世界銀行に加盟してから60周年。

・もともとエジプトのカイロで総会を開催する予定だったが、政情が不安定になり開催できなくなった。通常は総会の準備に3年かかるが、1年で準備できる場所はどこか検討し、震災からの復興をアピールする意味でもいいだろうと日本政府も了承して、日本でやることに。

・世界銀行は途上国に融資を提供する国際機関で、1994年に国際通貨基金(IMF)と共に設立合意され、現在の加盟国は187カ国。資金だけでなく、開発に必要な技術や知識も提供している。

・戦後、日本も世界銀行から、東海道新幹線や東名高速道路、黒四ダムなど31のプロジェクトで融資を受け復興してきた。現在は第2位の出資国となっていて、世界銀行から見ると成功したモデルになっている。

・2012年の東京総会に向け、発信力を強化していく。世界銀行としての知識や経験をコンテンツにしてソーシャルメディアなどを活用して発信、共有していくことで、日本として何ができるのか考えるきっかけにしていきたい。

・世界銀行の本部は、すでにFacebookやTwitter、YouTubeなどソーシャルメディアの活用が進んでいて、動画やインフォグラムなどの豊富なコンテンツを持っている。世界初のアプリコンテストや、社会問題の解決を目指すハッカソンも開催している。東京事務所でも、動画を日本語化するなど、豊富なコンテンツを活かしていきたい。

・世界銀行東京事務所のソーシャルメディアへの取り組みとしては、2010年10月からTwitterの公式アカウントを開設。11月29日の時点でフォロワー数が1603。タイの洪水や、人口70億到達などその時々の時事問題にからめて開発問題のことをつぶやいたりしている。

・12月1日から世界銀行東京事務所のFacebookページを開設。記事、動画、インフォグラム、画像、投票など幅広いコンテンツを載せてアピールしていく。今後、日本への融資内容を紹介した「31プロジェクト」のウェブサイトも立ち上げる予定。


次に、東日本大震災発生からわずか4時間後にsinsai.infoという復興支援プラットフォームサイトを立ち上げた、総責任者の関治之さんのプレゼンがありました。

関さんは、位置情報関連の第一人者で、GeoMediaSammitも主催されている方で、もともとOpenStreeMapというWiki的手法で世界地図をつくるプロジェクトに関わっていて、CrisisMappingという被災地域の地図を作成するプロジェクトも始めていたそうです。

東日本大震災が発生してすぐに、OpenStreeMapの日本のプロジェクトの代表者からメールが来て、自分たちで何か支援活動ができないかという話になり、メンバーの中にすでに被災地支援用のUshahidiというオープンソフトを研究している人がいて、そのソフトを使ってすぐにsinsai.infoを立ち上げることができたとのこと。その後、ボランティアベースの運営て、モデレーターと開発者を合わせて200人以上が参加するプロジェクトになったそうですが、ソーシャルメディアがなければ、このように多くの人たちが集まって協力することはできなかっただろうとおっしゃっていたのが印象に残りました。


その後、国際協力機構(JICA)の広報課長の友成晋也さんから、JICAや「なんとかしなきゃ!プロジェクト」におけるソーシャルメディアの取り組みについてのお話がありました。

JICAは2010年10月に公式Twitterを始め、現在フォロワーは約8000人、公共機関のアカウントとしては30位、独立行政法人としては2位だそうです。Twitterを始めたことで、JICA内のほかの部署から、この情報を発信してほしいという依頼が来るようになり、全体としての広報マインドが向上したとのこと。今まで炎上などの問題はゼロで、ネガティブなリツイートも月に1、2件ぐらいだそうです。

国際協力を考えるプラットフォーム「なんとかしなきゃ!プロジェクト」の一環で、今年の夏から東アフリカの飢饉の現実を知ってもらうための「SOS AFRICA」キャンペーンを開始し、11月8日にFacebookページをオープン。14日間で3451人が「いいね!」をクリックして、ページ自体は861,691人に見てもらえたとのこと。公共機関にとっては、ソーシャルメディアは費用対効果がいいことと、数字が明確に出てくることがありがたいという話をされていました。


セミナー全体を聞いてみて改めて思ったのは、公共機関やNPO、NGOなどの社会起業は、ソーシャルメディアとの相性がいいということです。もともと社会的な問題を解決するという共感を呼びやすい事業をしているので、ソーシャルメディアを使うことで、よりその共感を広めることができると思います。そういう方々でまだソーシャルメディアを活用していないところも多いと思いますが、ぜひ活用してほしいですね。

セミナー終了後に、世界銀行東京事務所の代表の谷口さんからお話を聞く機会がありましたが、来年の総会のときには、学生ボランティアを500人ぐらい募集する予定だそうです。若い人たちに、世界中から集まるトップクラスの人たちと交流する場を与えて刺激したいとのことで、総会をきっかけに、世界レベルで考えられる人たちが増えたら素晴らしいですね。興味のある方は、ぜひ今のうちに世界銀行東京事務所のFacebookページTwitterをフォローしておくといいと思います。

Comment(0)