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E-waste(電気電子機器廃棄物)という現実

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 先日(米国時間で11月11日)、米CBSテレビのドキュメンタリー番組「60 Minutes」でE-waste問題を扱った「Who Was Following Whom?」が放映され、その内容に端を発した議論がアメリカのIT系サイトやブログ等で目立った(上記リンク先では10分強の番組の抜粋を視聴可能)。

 E-wasteとは、古くなって廃棄されたコンピュータとその関連製品やAV機器、携帯電話等の総称であり、解体した各種部品から重金属やレアメタル等を回収するための貴重なリサイクル資源でもある。

 そうしたE-wasteのリサイクル処理は現在、主に発展途上国で行われており、上記番組の取材先である中国広東省グイユは世界中のE-wasteが集中することで有名な都市の一つだ。

 グイユの様子に関しては、上記60 Minutesのビデオよりも、ニュース専門テレビ局Currentが2007年に放送した番組のストリーミング公開ビデオ「Toxic Villages」が参考になる。うずたかく積み上げられたE-wasteが町の風景を灰色に染め、リポーターが画面に映り込まなければモノクロ映像なのかと錯覚してしまうほどの異様さだ。

 グイユの労働者の多くは不法移民であり、国や自治体などによる保護もないまま、それでも他の仕事よりは給料が良いからという理由だけで、非常に危険な作業に従事しているという。そして、医療機関の研究データによれば、同地区住民の多くが鉛毒やガンの高い発症率を示しているとのこと。

 自分はこれらのビデオを見ていて、ちょっとした無力感に襲われた。なぜなら自分も大量のE-wasteを排出する側の一人であり、もしかしたらこの前に廃棄したテレビは、このグイユへ送られているかもしれないからだ。

 E-wasteのリサイクル処理は、誰かがしなければならない仕事だろう。そして、本来であれば、こういう仕事に従事する作業者やその周りの人間に対しては、可能な限り危険がない策が施されるべきだ。しかし、そのためには多くの手間と費用がかかってしまう。結果として、人件費が安く土地の余っている中国のグイユのようなところへ仕事が集中することになる。

 ビデオに映る荒廃した近未来SF映画のようなグイユの風景を見て、このような状態を野放しにしている中国政府を責めるのは簡単なことだ。けれど、実際にこれらの大量のE-wasteを排出しているのは、先進国と言われる欧米諸国や日本だ。自分達の国でやりたくない仕事を発展途上国に丸投げするような結果になっている現実を考えると、一体誰が解決すべき問題なのかと思い悩んでしまう…。

 今すぐ実現可能で誰もが納得できるような単純明快な解決策は、残念ながら無い。けれど、IT業界に少しでも関わる立場であれば、こういうことが世界のどこかで起きているということぐらいは知っていても良いのかなと思った次第。

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