シリコンバレー見聞録―その10 体験型IoTショールーム「Open house」
ビックデータと、身の回りの製品がデータを送受信する「モノのインターネット」(IoT)は、間違いなくビジネスと社会に革命を起こすと言われています。我々KNOWLEDGE INTEGRATERは、このような新たなビジネスチャンスにデジタルビジネスをどう乗りこなせばよいのか?
前回紹介した「b8ta(ベータ)」が青山のブティックだとすると、今回紹介する「Open house」は、イオンやヤマダ電機か。TARGETは、全米5位の小売業で一般市民に馴染みのディスカウントストアらしい。店舗数は1500店舗近くにも登る。そのような小売店でなぜIoTなのか?謎は、深まるばかりだが答えは、時間が教えてくれるかもしれない。
《ブルテリアのマスコットが出迎える入り口》
《ショールームに入るとAppleストアのような空間が》
家庭の中でのIoTを実感できるショールーム
この店舗のユニークなところは、様々な生活シーンをクリスタルなアクリル版で仕切られた部屋でデモ展示していることにある。いずれの製品もどのように動くのかイメージできるようにデモ形式で紹介している。Sonosのワイヤレス・オーディオ・システムは、ユーザー・インターフェースをクラウド上に置いているため、ユーザーは、スマートフォンだけで操作することができる。mimoのベビーモニターは、赤ちゃんの睡眠を監視できるらしい。
《Sonos(左)やMimo(中、右)など様々な生活シーンでの家庭用スマート製品のデモ》
外出時のペットは、飼い主からすると気になる存在だろう。ペット用のカメラやわんちゃん用の餌を与える商品を紹介していた。
《プランターのセンサーやペット関連のスマート製品》
Googleに32億ドルで買収されたNESTは、デジタル・サーモスタットと火災報知機を製造するベンチャーだ。NESTのサーモスタットは、住宅内の温度管理プロセス全般(燃料の購入から室温設定、暖房器具、換気扇、空調システムへの電力供給まで)をデジタル化し、NESTが提供するクラウド・データ・サービスと連携することで様々な価値を提供する。たとえば、電力会社に消費電力のデータを提供することで電力会社はエネルギー消費量の予測精度が改善するという。NESTは、単にサーモスタット業界に留まらず、エネルギー業界にも影響を及ぼす。
《NEST(左)やhue(中)などは数年後には家庭に当たり前のように装備されるかもしれない》
ダイソンや見慣れた台所用品に加え、体温計にもIoT化の流れが。
《dysonやIoTつきの鍋に加え、Smart Ear Thermometer(耳型体温計)も展示》
なんでもスマート(笑)
《スマートバスケットボールやスマートトイ、スマートウォッチ》
製品から複合システムへ
マイケルE.ポーターによると、接続機能を持つスマート製品のケイパビリティ増大に伴い、業界内の競走状況が変化するほか"事業領域"が拡大していくという(HBR2015/4 IoT時代の競走戦略)。これは、競走の基本が「1.製品」から関連性の強い製品からなる「4.製品システム」、さらには多数の製品システムの複合体(「5.複合システム」)へ移行するのにともなって起きる。たとえば単なるヘルスケア用のデバイスを提供する企業が、将来は医療・健康産業業界で競争しているかもしれない。
- 製品(いわゆる従来のProduct)
- スマート製品(Smart Product)
- 接続機能を持つスマート製品(Smart Connected Product)
- 製品システム(Product System)
- 複合システム(System of Systems)
ここに展示されているデバイスは、2.スマート製品もしくは3.接続機能を持つスマート製品であるが、システムとしてインテグレーションするには、我々KNOWLEDGE INTEGRATERの腕の見せ所だろう。
10回に渡って連載してきたシリコンバレー見聞録も残念ながら今回でおしまい。また会う日まで。いや、次はあなたがレポートする番だ!
(おわり)