モノづくりのイノベーション 〜ノンフライヤーで活性化する調理家電市場〜
モノづくりとコトづくりをイノベーションの視点から考えるとどんなことが議論できるでしょうか?私は、モノづくりのイノベーションは『技術革新』だと考えています。優れたモノをコトに埋め込むことで他にはない体験や経験の創出が可能になります。そしてコトづくりのイノベーションは、『ビジネスモデルの変革』だと考えています。
今年、最も家電業界でヒットした商品といえば誰もが認めるのは間違いなくフィリップスの『ノンフライヤー』でしょう。油を一切使わずにエビフライやポテト、とんかつなどの揚げ物が作れる調理家電の新星です。最高200℃の熱風を高速で対流循環させることで、食材全体を一気に加熱することで、食材表面の水分を3%以下にし、揚げ物のようなサクサクの食感に仕上げるという。2013年2月に「油を使わないで揚げ物ができる」というキャッチフレーズとともに製品が発表されると話題は沸騰。4月の発売と同時に量販店の店頭から商品が消え、一時は届くまで2か月待ちの状態になったという。日本に先立ちすでに世界100か国を超える地域で150万台以上も売れている戦略商品だが、中でも日本での売れ行きは最速ペースだと言われています。
- 成熟した家電市場に新たなマーケットを切り開く
日本の調理家電市場は約5000億円規模で、その6割をIHクッキングヒーター、炊飯器、電子レンジが占めているらしい(野村総合研究所推計・2010年)。ノンフライヤーの成功は、この成熟しきった家電市場に新たなマーケットを切り開いたといえる。フィリップス エレクトロニクス ジャパンでは、「男性用シェーバーなどの『メンズグルーミング』、『オーラルヘルスケア』、オーディオ製品などの『ライフスタイル』という3つのカテゴリーに加え、2009年に一旦撤退していた『キッチン』を加えた4つのカテゴリーを柱に今後ビジネスを展開していくと宣言しています。
内閣府食育推進室が実施した「食育の現状と意識に関する調査」(平成22年度)によると、油を多く使った料理(揚げ物や炒め物など)を1日に2回以上食べる日が週に2回以上あると答えた人が全体の約65%に上ったという。大ヒットの背景には、「お父さんや子どもに大好きな揚げ物を食べさせてあげたいけど健康が心配」というお母さんの気持ちが見え隠れします。フィリップスの報道によるとごはんと汁物をつけても、従来のとんかつ1枚と同等の摂取カロリーに抑えられるという。
- ノンフライヤーに見る技術革新
ノンフライヤーは調理皿が引き出しのようになっており、中のバスケットに鶏肉や海老フライなどの素材を置いて調理する。調理皿の上部にヒーターが設置されており、さらにその上部から下に向かって風を送る。もともと欧米では「エアフライヤー」という商品名だったらしいが日本では製品の特徴をよりわかりやすく伝えるため「ノンフライヤー」に変更したらしい。なるほど先ほどのお母さんの気持ちを考慮したネーミングだ。
さて、このノンフライヤー、なぜ油を使わずにからっと揚げることができるのか?その秘密は「高速空気循環技術」と内釜底の「スターフィッシュ」デザインによる「エアーサーキュレーション技術」にある。庫内上部に設置されたヒーターで最高200℃の熱風を高速で対流循環させることで、食材全体を一気に加熱し、サクサクの食感に仕上げる。そしてバスケット下部にあるこのヒトデの形をした「スターフィッシュ」デザインが、熱風を上部に巻き上げることで、高速かつ均一に加熱するという仕組みだ。
- 手軽な調理のためのレシピも用意
この「高速空気循環技術」と内釜底の「スターフィッシュ」デザインにより、食材の油のみで表面を均一に加熱し旨味を閉じ込め、調理時間も短縮できるという。80度から200度までの幅広い温度調節で料理上手も納得の仕上がりが期待できる。設定通りの温度をキープして失敗もないという。
また、フィリップスのレシピサイトには、さまざまな調理方法のレシピが掲載されている。これなら料理に不慣れな若者や忙しいビジネスマンにとっても買ったその日から”即戦力”になるかもしれない。コトづくりの観点から言えば、できればユーザーの発案した調理方法やメニューをシェアできるようなコミュニティーを充実させるとさらに拡がると思われる。
バスケット容量の関係から個人や小さな子供の家庭では重宝することは間違いないが、大人4人の我が家での導入は、暫し様子をみることになる模様(笑)容量をアップした新製品の投入を期待したい。
(つづく)