「タレントマネジメント」の定義って?
皆さん始めまして。野石 龍平(のいし たっぺい)です。
私は現在、総合コンサルティングファームで人事上流/eラーニング/HCM領域のERPコンサルティングに日頃携わっています。元々はSI企業出身で、そこでも一貫してHCMソリューションやeラーニングを用いた企業における人材育成の領域に携わってきました。
このブログでは人事/ITコンサルタントとして日々感じること、また人事/IT領域における新潮流や動向、事例などについてお話できればと思っています。皆さんにも、多様なコメントを頂き、活発な議論が出来れば幸いです。
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先日11月30日~12月1日の二日間、青山学院大学にて行われたeラーニングカンファレンスWinterにて講演を行いました。
http://www.elc.or.jp/forum/Conference2006_winter_pr_1031.htm
講演タイトルは「変化の時代のタレントマネジメント~一人ひとりのパフォーマンスを高める~」です。このトラックは「ニュー・トレンド」 ~eラーニングを取り巻く新潮流~と題されており、近年盛んに言われるようになってきた「タレントマネジメント」について、その新潮流の動向を世間一般の事例を見ながら、考えていく内容でした。
概念自体は2000年前後にマッキンゼーがまとめた「War For Talent」によって世の中に広まったもので、この当時のタレントマネジメントはどちらかと言えば、「非凡な才能を持った人材をどのように引き止めておくのか?」という定義でした。
しかし、最近この定義自体も変わってきていると感じます。また、この流れを受けて近年日本でも様々な方がタレントマネジメントについて論じていますが、特に一定の定義が確立している訳ではありません。
ただ人材不足によってタレントマネジメントが日本で求められているのは確かなようです。
特に2006年はビジネス系の雑誌でも、「人材不足」に関する内容が紙面を飾ることの多かった一年でした。日経ビジネスの10月号では、「人材沈没 育てず 伸びずのデフレスパイラル」という特集が組まれたのも、皆さんのご記憶に新しいのではないでしょうか?
では何故今、日本企業は人材不足にあえいでいるのでしょうか?
そこには単に人手が足りないというだけの人材不足から、スキルが足りないという意味での人材不足へのパラダイムシフトがあります。
近年のビジネス環境の変化を端的に現せば、「多様化」「迅速化」「グローバル化」というキーワードがあげられます。
製造業の方は、顧客のニーズが「多様化」していて、商品のライフサイクルが短くなってきていることを肌で感じているのではないでしょうか?特に清涼飲料水や加工食品の種類の多様化はここ十年で一気に進みました。
また今年猫も杓子も唱えた「Web2.0」におけるロングテールの取り込みにも、「多様化」が密接に繋がっています。ニッチでも多様なコンテンツを取り揃えることがWEBサービスにおいても非常に重要になってきているわけです。
そしてグローバル化では、日本の製造業や自動車メーカーがBRICsへの進出を加速化していることから、海外ビジネスに対応できる人材が求められています。
これらのビジネス環境の変化によって、多様なスキルを持った多様な人材が求められるようになってきています。
グローバルに活躍できる人材、匠の技を持ったスペシャリスト、統率力を発揮するリーダーといったように、単に「突出した非凡な才能」というだけではなく、多様な人材の一人ひとりがもつ才能をマネジメントする重要になってきているわけです。
またこれは日本企業が成果主義導入で、評価や報酬を改革し人件費を抑制することを進めることばかりに注力し、人材育成にあまり手をかけてこなかったことも要因の一つかもしれません。
そう考えると最近企業でSNSの導入が盛んに行われていることも、うなずけます。SNSを用いてボーダレスなコミュニケーションを推進していくことが狙いであり、要するに部門や縦の関係の垣根を取り払いダイバーシティ推進に役立てようという狙いです。
例えばNTTデータで企業内SNSを導入した狙いは「セクショナリズムを排し、仲間の知恵と力を合わせ」ることだそうです。同様にNTT東日本、NTTコムウェア、総務省など大体の企業では同様にセクショナリズム(部局割拠主義)を排するという狙いのようです。
http://www.nttdata.co.jp/release/2006/073101.html
また日本企業におけるダイバーシティの取り組みは外資系企業よりも遅れているといわれており、特に男女のダイバーシティを勧めることからまず取り組む企業が近年非常に多くあります。このSNSは男女間の垣根を取り払うという意味でも一役買うのではないでしょうか?
また今年の大きな流れとして『FLEX ENTRY』型の採用が増えたことも、タレントマネジメントを考える上で面白い事例です。これはそもそもソニーが始めた採用方法がもととなり、このように呼ばれています。従来は4月に一括採用して、同時に一括入社し、来春卒業予定の「大卒」「大学院卒」を採用するという企業が大半でした。しかし『FLEX ENTRY』型では、4月以降も5月6月9月と順次採用を行ったり、入社時期についても採用が決まってから数年間の猶予を持つことができる(=ギャップイヤー)制度を導入したり、そもそも「学歴不問」というようになります。これにより今まで手を伸ばさなかった範囲まで手を伸ばし、才能を見つけ出そうというわけです。
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/Jobs/flex/
このようにタレントマネジメントはいまや非凡な才能(所謂2:6:2の上位の2)に着目するのではなく、一人ひとりのもつ能力を伸ばし、生かしていくことが求められていると考えます。
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非常にサマライズしましたが上記のようなことを最近は考えています。
このブログの読者諸氏の会社ではどのような人材マネジメント上の取り組みが行われているのでしょうか?
もし何か面白い取り組みを行っている企業があれば是非教えて欲しいです。コメントお待ちしています。
次回は近年の企業におけるコンプライアンスやCSRとeラーニングの動向についてお話します。