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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

「金の斧、銀の斧」式聴き方。

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部下との1on1ミーティングや目標管理面談でもいいし、顧客へのヒアリングでもよい。

聴く、という場面は、そこここにある。

「聞く」はHear、「聴く」がListen。Listenをするんですよ!と以前、何かの研修で教わって、そういえば、「アクティブリスニング」って言うもんな、と思った。若いころの話。

「傾聴」とか「アクティブリスニング」とか「耳を傾ける」などと何度も何度も大事、大事と言われている方、多いだろうと思う。


そうそう、「聞く」は「門構えの中に耳が隠れているけど、聴くは、"十四の心を持って"きくってことですよ」と、教わったこともあった。

「十四の心」。なるほど。

でも、聴くのは実はとても難しい。多くの人が、しゃべってしまう。聴くよりも話す分量が多い。

研修内でのロールプレイでそれは顕著に表れる。ということは、現場でもきっとそうなりがちなんだろうと思う。

「もっと相手に質問してみませんか?訊いてくれたら答えること、たくさんあるかもしれませんよ」と講師としてアドバイスすると、「あ、そうか、質問ですね」と素直に反応され、次のロールプレイの時は、「質問、質問」と自分に言い聞かせながら取り組んでいく。

でも、この時、起こりやすいのが「金の斧、銀の斧」式聴き方である。

「オープン質問」(はい/いいえだけでは答えられない、間口の広い質問)を投げかければよいのだけれど、つい「クローズ質問」になってしまう。

「●●さんは、志望通りの配属先だったの?」
「じゃ、それ、嬉しかったでしょう?」

「この間のプロジェクト、大変だったみたいだけど、どう?疲れた?」
「疲れた分だけきっとやりがい感じたよね?」

こういう問いかけの仕方が「金の斧、銀の斧」式である。


「お前が落としたのは、この『金の斧』か? 『銀の斧』か?どうじゃ?」

どうして、こういうクローズ質問になるかといえば、相手の代わりに自分が先に考えてしまうからだ。

「こういうことを話したいのではないか」、「こういう気持ちなのではないか」と相手のことを考え、相手の思いや気持ちを推察して、それを念頭に問いかけるから、ついクローズになってしまう。

「虚心坦懐」(きょしんたんかい)という言葉がある。

相手の代わりに考えるのをやめて、ただただ素直に聴いてみればよい。

「●●さんは、配属についてどういう希望を持っていたの?」
「希望通りに配属されて、どんな気持ちだった?」

「この間のプロジェクト、どんな状態?●●さんの今の気分とかモチベーションとかどう?教えて?」

相手について聴いているのだから、相手が答えるための幅を持たせてあげればよいのだ。


「金の斧ですか?銀の斧ですか?」と答えを想定して聴くのではなく、「あなたはここで何をしているのですか?」とか「あなたは何を探しているのですか?」とか「あなたは何を落としたのですか?」と尋ねれば、相手は話したいことを話したいように答えるに違いない。

クローズ質問ばかりになる面談や商談があったら、「金の斧、銀の斧はダメ」と心の中で呪文のように呟いてみてください。

ぜひぜひ。

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「聴く」については、たくさん本が出ています。
私が読んだのは、このあたりです。


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勤務先で社員がリレーして「アドベントカレンダーブログ」やってます。

私も書きました。12月8日。「オンライン研修」のこと。

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