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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

【ATD 2016 JAPAN SUMMIT 報告②】 「研修のBefore」と「After」を大事にする

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ATD SUMMIT報告第二弾です。
(第一弾は、コチラ


「研修の効果」を上げるために、どうすればいいのか。

そもそも、研修については、

●20%が「受講して勉強したことを全く使わない」
●60%は「少し使うけど、すぐあきらめる」
●20%が「使ってみた結果、仕事上の成果につなげている」

ということが調査の結果、わかったんだ、とブリンカーホフさんはおっしゃいました。

100%の人に研修費用を投資しても、Returnがあるのは20%。
つまり、ROIが20%の人にだけ集中している、これって、もったいないよね、と。

では、研修の結果がどうして実務に活かされないのか。

「よい研修がないからです」
「研修がへぼいからです」
「ろくな講師がいないからです」
「古い教材で、どこの時代の話なんだ?なんて思うようなものばかりだからです」

などと研修内容そのものに起因している面もないわけではありません。

ありませんが、研修そのものよりも、研修のBeforeと研修のAfterのほうに「研修の成果が実務に結びつかない要因」の大半があるんだ、と彼は言います。

例えば、

【Before】
●経営がトレーニングの価値、意味を理解していないし、理解していないから、部下(上級の管理職など)にもその効果のほどを説いていない
●研修受講者の上司が、受講者である部下に「何のための研修なのか」「何を学んできてほしいか」といった期待を伝えていない
●受講者が研修受講に必要な前提知識、予備知識を持ち合わせていない
●受講者が研修で学ぶことが実務にどう役立つのか全く知らないまま研修に参加してしまう
●上司が研修にいく部下を動機づけしていない

といったことが「研修のBefore」の課題。

一方、

【After】
●研修で学んできたことを上司が部下に使うよう支援していない
●前のやり方のままのほうが推奨される
●目の前の実務、数字をこなすことが優先され、新しいやり方に挑戦することは後回しにされる
●学んできたことを使うことがその組織ではリスクである
●学んできたことを使うためのコーチングやサポートを上司から得られない

こういった要素により、「研修後の効果」が出ないとも言っていました。


ブリンカーホフさんいわく、

「研修での学びが実務の成果に結びつかないのは何故?どこに原因があるの?」と調査をすると、大半の回答は、「研修のAfterにある!」と出てくるそうです。

勉強はしてきたけど、使わない、使えない。 意志の問題だったり、環境の問題だったり。上司の支援不足だったり。要因は数々あれど、とにかく使うことがない。

「だったら、研修後"After"を何とかすればいいんだな!」と思うのは早計で、「Afterがダメになるのは、Beforeにその原因がある」と言います。

「事前にどんな研修を受け、どういうことで役立てるのか、どんな風に学んでくるか、といったことが分かっていないまま研修に参加した人が、事後にその学んだ内容を効率よく効果的に実務で活用し、ビジネス上の成果につなげるというのは難しい」

なんてこともおっしゃっていました。

研修の効果を最大化するために、研修そのものの内容をきちんと設計し、コンテンツ開発をし、訓練を受けたしっかりした講師が研修を担当する、というのは大前提として、研修の中身の事ばかり考えるよりも、「Before」と「After」を何とかすることを考えたほうがよい、とブリンカーホフ氏は強調していました。

いや、まさにその通り。

このくだりを聴いていて、ふと思ったことがあります。

人材開発担当の方とお話しているときに、「研修に先立ち、上司から受講者に一言、動機づけしていただくだけでも効果が違うので、5分でいいから面談するようにしてはいかがでしょうか?」と提案すると、たまに「いや、いや、現場を巻き込むわけにはいきませんよ」という答えが返ってくることがあります。

今まで、「確かに現場は、研修の協力をするのは嫌がるかもな」と思ったのですが、考えてみれば、研修は、人材開発部門のためにやるわけではなく、現場の実務をより良いものにする(ビジネス上の成果につなげる)ために行うはずで、「現場を巻き込むのはできない」と考えるのはちと変なんじゃないだろうか、と。

現場のために、人材開発を企画運営しているのだから、最初から「現場」が中心になくてはいけないはず。

上司は、部下の研修参加に、「最も重要な利害関係者」になっていないといけないのに、「研修の事前面談なんてそんなもん、させないでくれ」というのは、目的と手段がなんだか見えなくなっているってことなのかもしれないな、と思ったのであります。

ブリンカーホフさんはこうもおっしゃっていました。

「世のマネージャは、研修に協力していると思っているが、それは、部下が受講したいといった時、その書類にサインして、研修に出させてあげることでその協力は済んでいるうと思っている節がある」

と。

本来学習効果を最大にするために、上司の関与は欠かせないのだから、そこを人材開発の方は現場とコラボしなければなりませんな、といったことをブリンカーホフさんは力説なさっていたのでした。


なお、全て英語のプレゼンで、同通キットで日本語も聴いていたものの、どのスピーカーも恐ろしく早口で話す&通訳が専門用語を訳し間違えるといったことがあったため、ATDサミットに関してここに書いてあることは、私が私なりに理解したこと、であることを申し添えておきます。


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