医療従事者の勉強熱心さには頭が下がります
昨年、ある大きな総合病院で研修のお仕事を頂戴し、3か月にわたり、20人の看護師に「Instructional Design(インストラクショナルデザイン:教材設計の工学的アプローチ)」と「講義スキル(いわゆる、デリバリスキル)」の研修を提供しました。
みなさん、当然のことながら、臨床の看護師さんなので、自分の担当病棟があって、日々患者さんと接しています。そして、部下や後輩がいて、彼・彼女を育てる立場でもあるのです。
なぜIDを?と疑問に思ったところ、「看護師が集まる勉強会」(←病院を超えたコミュニティ)では、「院内での教育をきちんとするなら、まず、教材設計からだよね。ってことは、IDを勉強しなくては」という話が進行していて、自主的にID勉強会をコミュニティでも、さらに持ち帰り院内でも行っていることがきっかけだったそう。
IDは、難しい本が多いので、自習するには限界があるんですね、たいていの場合。それで、当社に相談があって、研修として提供することに。
看護師さんは、それぞれの担当分野の教材をIDに基づいて作っていきます。たとえば、「人工肛門の説明をする」とか「脳卒中の症状について教える」とか「助産管理について」とか「うつ病」「院内感染」「院内のマナー」といったこととか、多岐にわたった内容を、一人ひとり教材化するのです。(いやあ、勉強になりました)
研修時間内だけでは解決しないので、間に1か月開けて、宿題にし、教材を磨きあげて、2回目の研修へ、という流れにしていましたら、みなさん、お忙しいのにきちんとやって来ていました。
2交代制の中で、どうやって?なんてお尋ねしたら、「ランチタイムにお弁当片手に資料直ししました」などとおっしゃる。
とにかく勉強熱心なんです。
質問してみました。
「医療分野も日進月歩で、新しい治療法だの新しい薬だの、あるいは、新しい病気だの覚えること、大量にありますよね。その勉強をいつもしながら、さらにIDなんて教育学に触れるのは、もう大変なんじゃないかと思うのですが、すごいですよね。どうして学習のモチベーションが保てるのですか?」
すると、おひとりの看護師長がこうおっしゃったのです。
「看護師、というか、医療従事者は、医療について常に最新の情報や技術を持っていないといけないから一生勉強が続くということを学生時代から徹底的に教えられ、自分でも意識してきました。だから、そこにIDが加わっても、後進を育てるために必要だと理解しているので、同じことなんです」
・・・。
凄すぎる。
専門分野を追いかけるだけでも大変なのに、専門外のことでも仕事に取り入れていこうとするこの姿勢。素晴らしい。
これはひとつの病院の例ですが、最近、社外の勉強会に行くと、医療従事者の参加が目立つのですね。ビジネススキル系、マインド系の研修でも。
それと、同僚がIDを学ぶために大学院に行っているのですが、学生の多くが医療従事者(医師、看護師)だとも言っていました。
背筋がぴんとしてしまいます。