研修の「出口」と「入口」を明確にしておくこと
各社、新入社員研修まっただ中の今、現場の方が、「この部分の講師をして」と依頼され、数日から数か月限定で講師業に従事することもよくあります。
現場で実務家として活躍している方なので、知識もスキルも豊富。実務経験もたくさんもち、現場で切ったはっただって何度も経験してきている。
しかし、「講師」としてのトレーニングは受けていない。そうなると、「頭の中にあるたくさんの知識や技術、自分の体にしみこんでいる多くの体験」をうまく伝えることができない。それはもったいない。
というわけで、内製で研修を行う企業向けに「教え方講座」のようなことを担当する機会も増えてきました。
わかりやすい教材作り
初心者を理解させる講義の仕方
一方通行ではなく双方向に進めるテクニック
質問への答え方
問いかけで巻き込むスキル
困った受講者の対処方法
・・・など、アカデミックに解説できることもあるし、経験則で「こういうことがよく起こるが、こういう場面ではこうしたらいい」と伝えられる部分もあります。
そんな中で、今日は一つ。「出口」と「入口」のことを書いてみましょう。
研修を任されたとき、事前に考えておくべきなのは、「出口」と「入口」を明確にすることです。
●出口:この研修を終えると、どういう状態になっているはずなの? これはたいていの場合「学習目標」として表現されます。
●入口:この研修を受講する人は、「何ができて」「何ができない」人なの?
この「出口」と「入口」のうち、出口に相当する「学習目標」のことは考えるのですが、入口についてはあまり深く考えていないことも多いようです。
「新入社員でしょ。うん、わかった」というレベルの理解で終わっているケースもあるように思います。
でも、ここ、大事なんですよね。
問いは2つです。
「受講者は”何ができる人”ですか?」
「受講者は”何ができない人”ですか?」
ここをおさえておくことで、講義や演習の進め方などをより具体的に考えることができるようになります。
たとえば、
●キーボード操作はできます
●WORDやEXCELは使えます
●Java以外のなんらかの言語でプログラムを組んだ経験はあります
●PowerPointは使えません
●Javaでプログラムを組んだことはありません
といったことを一度整理してみるのです。
そうすると、「この部分は丁寧に講義しないといけない」とか「ここはいきなり演習で試してみることからスタートしても大丈夫だな」とか「この用語を知らない可能性が高いね」とか「この言葉は知っているから、復習として伝えるだけでいいね」なんてことがより明確になります。
「出口」と「入口」の間をつなぐのが研修です。どこから入ってどこへ出ていくのか。
特に、ベテランの方が新入社員に教える場合、「入口」の想定を見誤るケースもあるように思います。「え、このレベルからわかってなかった?」とあとで愕然とするというようなこともあります。
だから研修を準備する際、最初のころ、この2つを整理しておく。
ところで、内製で研修を担当する場合、たとえば、5月1週目は、A事業部で扱っている製品を、5月2週目は、B事業部で扱っているサービスをと、複数部門から教材と講師がアサインされることがあります。が、このとき、講師は前後の流れを把握していない場合もあるかもしれません。
前週までのカリキュラムではこれを教えて、これを体験させている。その次を引き受ける自分はここを「入口としてスタート。そして、自分からまた翌週別部署にバトンタッチするとき、自分が担当した箇所の「出口」が次週の「入口」になる、という連携がとれていないといけないのだけれど、部門ごとに準備にあたると、「自分が担当する部分」以外は関心がなかった、ということも考えられます。でも、新入社員研修は点ではなく線になっていけないので、前後を知っておくことはどの講師にも必要です。
「出口」「入口」を明確にすることに加え、前後のつながりを理解しておくことも重要です。