「経験学習」のポイント①「エンジョイメント」(楽しむ)についての考察
「経験学習」・・・。2011年からずっとおっかけているテーマの一つです。特に、松尾睦さんの『「経験学習」入門』(ダイヤモンド社)は、学術書ではなく、ビジネス書として書かれているので非常に読みやすく、クライアントの人事や人材開発ご担当者、現場のOJT担当の方など大勢に勧めまくってまいりました。
松尾先生によると、経験から学ぶ力で大事なキーワードは、まず3つ。
●ストレッチ (背伸びし、挑戦すること)
●リフレクション (内省、振り返り)
●エンジョイメント (楽しみを見つけること)
自分の復習のためにも、この3つについて順番に考察していこうと思います。
と言いつつ、今日は3つ目の「エンジョイメント」から。
仕事が楽しくない、とか、楽しい仕事なんてない、とか、仕事というのは基本的に苦役みたいなもんである、とか、いろいろな言い方で「仕事≠楽しい」と思っている方はそれなりにいるように思いますが、一方で、何をしていても楽しい、どんな仕事でもそこに楽しみを見つけるという方もまた大勢います。
遊園地で遊んでいるわけではないので、向こうから楽しい仕事がやってくるということではなく、どんな場面でもどんな仕事でもその中に自ら「楽しさ」を見つけ出す努力、工夫をしている、というのが正しいように思います。
たとえば、こんな例があります。(以下紹介するのは、全部、研修の現場でご本人からお聞きしたエピソードです)
●オープン系の開発が花形な時代に、自分は汎用機でCOBOLを担当することになった。新人、若手時代は、「ああ、COBOLか、汎用機か」とちょっとがっかりしたのだけれど、よく考えたら、こんなに地味というか目立たないというか、誰もが”がっかり”するCOBOLであれば、社内では非常にニッチな状況になってきているのではないか、と気づいた。だったら、どうせやるなら、会社一のCOBOLerになって、どんな相談でもどんな質問でもどんなトラブルにでも対応できるような技術者になろうと決意したら、急にCOBOL開発者という自分の役割が楽しくなってきた。
●開発は、ものづくりをしている実感を味わえるけど、保守だと「動いて当たり前」と思われ、褒められることもないし、止まったらすんごく文句言われて、楽しいことなんてあまりない。だから、モチベーションが下がりがちだった。だけど、ある時に、ふと、保守のしづらいシステムってあるなあ、と気づいて、それはどういう開発をするかってことが影響するんだと思うようになった。だから、今は、どういうシステム開発をすれば、保守もしやすいシステムになるのか、ということを保守担当の視線から分析的に見るようになった。 うちは、異動があるので、いずれ開発も担当できると思うけれど、保守で感じていた「メンテしづらい・メンテしやすい」システムの違いを開発に異動した暁には活かしたいと思っている。だから、今はモチベーションは高くなってきた。
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いまの仕事のとらえ方を自分で変えてみるという例ですが、この話をしてくださったのは、確か30歳前後のエンジニアでした。(共に10年くらい前の話です)
いま40代になった彼らは、どのように仕事をとらえているのかなあ、と興味があります。いつもこんな風に自分の仕事をよく考えて、楽しむポイントを見つけていれば、部下や後輩たちにもそういう”とらえ方”を語ってあげているのではないかなあ、と想像しています。
そういえば、以下の話は以前も紹介した気がしますが、上司が部下に「とらえ方」を伝え、楽しみを見つける方法を語っていった例です。
●経理を担当して何十年になる。この仕事は、放っておけば、単に金額の書いてある書類をただ処理していくだけのルーティンになりがちだが、あちこちの部署から出てくる書類を見ているうちに、わかってくることがたくさんある。たとえば、”この部門は、こことの取引を始めたのか””この部署は、これらをたくさん購入しているけど、すると、こんなことを手掛け始めるのだろうなあ”・・・そうやって、お金の動きによって、会社が目指す方向やら部署ごとにしていることが手に取るようにわかってくる。そういう意識で経理関係の書類に対峙しなさい、と配属された新人にも伝えている。だって、どうせ仕事するなら、楽しいほうがいいし、学びが多いほうがいいでしょ?
いい話だなーと思ったエピソード。
意識の問題、目の付け所の問題、どうやって意味づけするのか、によって、「エンジョイメント」の要素は、きっと変わってくるはず。
そして、「楽しく」取り組む方が絶対に成果は高いはず。高い成果がでれば、自分が成長でき、さらに何か新しいこと、難しいことに挑戦する機会が得られ、またまた成長できる・・・・という好循環が生まれる。だから、「エンジョイメント」が「経験学習」において3つのキーワードの1つに挙げられているのでしょう。
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2013年3月8(金) 13:00~17:30 に
「経験学習をOJTに活かす ~現場で若手をどう育てるか~」セミナー開催します。
松尾睦先生(神戸大学大学院)をメインゲストでお迎えし、「経験学習」と「若手育成、主にOJT」をトピックに進めます。 松尾先生の講義、全員参加のワークも松尾先生のファシリテーションで進行。田中も「現代のOJT事情」をお話し、最後には松尾先生×田中淳子の「トークタイム」のようなことをする予定です。
経営者、人事・人材開発の方向けです。ご来場の皆様と一体になっての参加型セミナーです。”若手育成”、”経験学習”、”OJTの制度化”、”OJTのPDCA”といったキーワードにご興味のある方、お待ちしております。
*『「経験学習」入門』(ダイヤモンド社)をお読みになってから参加なさるとより効果が高まるはずです。ご一読後のご参加をお奨めしております。