自分が思う「なるはや」と他者が思う「なるはや」は相当違うのだ
「なるはや」という言葉を知ったのは、実は数年前です。20年以上仕事をしていて、一度も耳にしたことがなかったのです。
何で知ったか? 糸井重里さんの『大人語の謎。』という本で、です。(この本、すんごく面白かったので、お奨め! 社会人って、謎のワードを使って生息しているものなんだなあ、と改めて思いました。「さくっと」ってどういうとき使う?など)
なるはや:なるべくはやく。なるべく早く。なるべく早くしてね、の時に使う言葉なんですねぇ。
「”なるはや”でお願いします」
「”なるはや”で片づけてね」
きっとそんな風に使うのでしょう。
さて、ある時、「みなさん、”できるだけ急いで”などと指示を出しているかも知れませんが、”できるだけ急ぐ”の定義は人によって相当異なるはずですよ。」と言ってみたことがあります。
それを聞いた20代のリーダーがさっそく職場で実験してみたそうです。
「これ、できるだけ急いで処理してね、と言った場合、みんなは、”どのくらいで処理するべき”だと思うの? 一人ずつ、言ってみてくれる?」
すると、メンバの答えは以下のようなものだったそうです。
「2時間以内くらいかな」
「今日中」
「今晩中」
「明日の朝くらいまで」
「今週中」
リーダーは、のけぞるほどに驚いたと言います。「えっ!? みんな、そんなにとらえ方が違うの?」と。
「私の”できるだけ急いで”は、2時間以内!というつもりだったけど、これだけ幅があるの? これほどにとらえ方に違いがあるの? だから、いつも”期待通りに成果が出てこない”と私は思っていたんだあ。 時間の感覚がこれほどまでに異なるのに”できるだけ急いで”と言ってもダメなのだなぁ」と深く反省したとのこと。
これ、ありがちですよねぇ。
うちの部下は仕事が遅い、と思ってしまうかも知れないけれど、実は、指示する側が「なるはや」としか言っていない。
それでは、意図が正しく伝わるのは難しいのです。
・・・・で、こんな話を先週の研修でしたところ、ある方が「はっ!」とつぶやき、にやりとしました。
「○○さん、何か心当たりでもおありですか?」
「あ、ええ。今、インド人と仕事をしているんですが、メールにASAPって書いて送ることが多くて、でも、なんだかうまく通じないんですよね。僕のASAPと相手のASAPがきっと全然違うんだ。何月何日何時、と指示しないから、うまく意思疎通ができないんだ、と気づきました(笑)」
ASAP(As soon as possible:できるだけ早く)、日本のビジネス用語なら、それこそ”なるはや”ですね。
日本語は、あいまいに表現することが多く、「ちょっとティッシュ2-3枚とってくれる?」なんて言い方も日常ではよく使います。「2枚なのか3枚なのかはっきりせー」と突っ込むことなく、適当に「2-3枚」を相手に渡すわけです。手にしたティッシュは、2枚かも知れないし3枚かも知れないし4枚かもしれませんが、だいたい、そんな感じ、で用は片付く。
けれど、仕事において、このあいまいさがミスコミュニケーションの元になるのですねぇ。
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糸井さんの『大人語の謎。』 ・・・この本で知った「ビジネス用語(?)」は数知れず。面白い言葉がいっぱい出てきます。
新社会人になる内定者のみなさん、読んでもいいけれど、あまり染まらないようにしてくださいね(笑)。