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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

「許す」って大事なことだと思う

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スポーツ音痴(観る方には無関心、という意味で)ではあるものの、これだけ賑やかだとつい見てしまう世界陸上。

ボルト。失格でしたねぇ。1回のフライングで失格。 ふむ。 そういうルールになったのか。

何年も血のにじむような努力をして、1回のフライングで失格なのかぁ・・。そうか。 

ま、このルール改定にはいろいろな事情があるのでしょうから、言及しませぬが、ふと、仕事に置き換えて考えてみました。

人は、40年くらい働くわけです。その間には、実にいろんなことがあります。あるでしょう。あるにちがいありません。

失敗、ミス、失態、失点・・・何回かはある、はず。 その中には、許されないものも含まれる。法律に触れるなんてのは、NGの最たるものだろうけれども、でも、たいていのミスは許される範囲ではないかと思うのですね。(このあたりの説明は、注意深くしないと、突っ込まれそうですが)

わたくし、30代半ばのころ、少しグレておりまして、口をついて出てくる言葉といえば、ネガティブ、という時期がありました。

「会社が悪い、制度が悪い」(とはっきり言ったかどうかは忘れましたが、そういう思考だったという記憶ははっきりあります)と、ふてくされていたこともありました。

当然、上司だのそのまた上司に呼び出されては説教されました。何回も。

ある日、ついに「最後通牒」という感じで、上司の上司(本部長だったかしら?)に

「淳子さんは、もうここではいらないから、他の部署に異動することも考えてみたら?考えておいて」 

ってなことを言われました。

おお、人材育成の現場に長くいたけれど、他の仕事をしろ、という通告です。

この時、初めて真剣にいろんなことを考えました。キャリア、モチベーション、仕事、自分、好きなこと、生きていく道・・・。

で、何に対してグレていたか、も分析できました。グレていた原因は、実にくだらないもので、そんなことに抵抗していたってしょーがないような、ホント、「どこ見て仕事してるんだー」と今の私なら、即刻突っ込むようなものでした。

それから、心を入れ替えて、くだらない理由であれこれ思い悩んだり、グレたりするの、やーめた!と思ったのでした。

自分がすべきこと、できること、今目の前にあることを粛々と、楽しみながらやっていこう、と。(1日でこの考えに至ったのではなく、数週間考えての末です)

かなり真面目に、一生懸命取り組んでいたので、上司の上司に「他部署に行くことを考えろ」と言われたこともすっかり忘れていました。なぜか「異動辞令」が出ることもなく。

半年以上経ったある日、「他部署へ行け」と言った上司が、突然、「新しい仕事」を私に紹介してくれました。

「これ、挑戦してみないか?」と。

以前からやってみたかったことだったので、「ぜひ!」と即答。まったくの新しい仕事に取り組むことになったのでした。

さらに半年以上経過して、

「あの時、異動を考えろとボクは言った。その後、淳子さんの様子を見ていた。しばらくしたら、ふっきれたかのようになった。何があったのかは知らないけれど、もう大丈夫だと思った。で、新しい仕事の話があった時、今の淳子さんなら任せてみようと思った。以前の時の淳子さんだったら絶対に話を持ちかけなかった」

と言われたのでした。

内心『あ~ぁ、いつまでも不良でいなくてよかった』と胸をなでおろしました(笑。

この時、思ったのですねぇ。

「許す、って大事だなあ」と。

人は、いつもいつまでも同じではない。モチベーションが高いこともあれば、そうでないこともある。ネガティブなこともあれば、ポジティブなこともある。失敗ばかりしてしまう時期もあれば、だんだんスキルアップして、失敗しなくなることもある。

いずれにしても、「以前より良くなった部下・後輩」に対して、いつまでも「過去のネガティブな側面」を覚えていて、それを言い続けるのってよくないんだなあ、と思ったのです。

「彼って、最近頑張っているよねぇ」「うん、そうだね」とならず、
「でもさあー、3年前は、すごくネガティブな人だったんだよぉー」と過去を持ち出すって、なんだかかわいそうだ。

それよりも、「今、頑張っている」ならそこに目を向けてあげればいいじゃないか、と。

「敗者復活戦があってもよい」のではないか。

仕事してて、一度もグレたことがない人もいるかもしれません。
そういうちゃんとした大人もいるに違いありません。

一方で、一時的に少しくらいグレることが誰にでもあるような気もします。(グレる=ネガティブになる。やる気失なう。文句たれになる。などなど)

いつまでも「グレている」ならそりゃ駄目だろうけれど、何かのきっかけに立ち直って、しゃんとしたのなら、前のことは許してやろうや、でいいと思うのです。だって、40年も働くのですよ。

私は、自分が許してもらった経験があるので、「過去は過去。今は今。今がいいなら、もうそれだけでいいじゃないのよ」と思いたいし、思うようにしています。

「許す」って大事だと思う。
「許す」こともスキルの一つです、たぶん。

ところで、「上司に持ちかけられた新しい仕事」とは、「雑誌での執筆」でした。

ものを書いたことなどなかったのですが、やってみることにしました。

その最初の仕事が、2002年6月に創刊された、伝説?の「日経ITプロフェッショナル」という雑誌での連載です。(雑誌が「伝説の」です)  最初は、3か月くらい、という話でスタートしました。

たまたま多くの方に読んでいただけて、へなちょこ文章も徐々にコツがわかり、まともに、ましになりました。連載はずーっと続いて、それが縁となり、今でも日経BP社さんのお仕事は細々と続いています。(現在は、ITproで連載しているのですよ。)

あの時、グレたままだったら当然、今に至る執筆活動はないわけですし、立ち直った後、許されなかったら、やはり、物を書く仕事に就く機会に恵まれることはないまま現在に至っているでしょう。そしたら、当然、このオルタナティブ・ブログも書いていないんですねぇ。

「許す」。英語では、”forgive”と言いますよねぇ。

”give”なんですよねぇ。私はチャンスを”give”されました。

なんだか、しみじみ。

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