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「ヤフー/LINEはGAFAになれるか?」

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今回は時事ネタに突っ込んでみたいと思います。

さる2019年11月18日にヤフーの親会社であるソフトバンクグループのZホールディングスLINE経営統合で基本合意したと発表されました。年内に法的拘束力のある合意書を締結し、2020年10月を目処に統合するそうです。

この記者会見の際、Zホールディングスの川辺社長は統合の目的として「日本、アジアから世界をリードするAIテックカンパニーを目指していきたい。」と語っていました。

この世界をリードするAIテックカンパニーとは「GAFA」すなわち

Google(アルファベット)
Apple
Facebook
Amazon

に対して日本から挑戦するという意気込みを示したと思われています。
それではこの統合したヤフー/LINEGAFAにどのくらい力の差があるのか、GAFAと対抗することがそもそも現実的なのかを検証してみたいと思います。

1. 企業規模

少し古いですが、2017年度のデータから売上規模をみますと

Google: 1109億ドル
Apple: 2292億ドル
Facebook: 406億ドル
Amazon: 1799億ドル

それに対してこちらは2018年度のデータになりますが

ヤフー/LINE: 105億ドル(2071億円+9547億円=11618億円)

Facebookの1/4ですが、Google, Amazonと比較すると1割以下の規模感です。

2. 時価総額

次に時価総額をみてみましょう。

2019年1月のデータから

Google: 7006億ドル(3762億ドル+3244億ドル)
Apple: 7153億ドル
Facebook: 3424億ドル
Amazon: 8100億ドル

これに対して

ヤフー/LINE: 291億ドル(3.2兆円)

と、なんとここでもFacebookの8.5%、Amazonの3.5%しか時価総額がなく、大きく引き離されております。時価総額でみると桁が違うという印象です。

3. 研究開発費

時価総額からの投資資金量が効いてくるのが、研究開発費ですが、2018年度のデータから

Google: 2.4兆円
Apple: 1.6兆円
Facebook: 1.1兆円
Amazon: 3.2兆円

これに対して
ヤフー/LINE: 200億円程度

ということです。研究開発費まさにAIテックカンパニーの生命線であり成長の糧ですから、これだけ規模が違うと、そもそもこれから戦うというより土俵にのぼることも難しいと思います。

4. 特定サービスで戦う

このようにGAFAの企業と真っ向から戦っても、象に戦いを挑む蟻のように瞬殺されてしまうので、サービス特化型で戦っていけないかを考察してみます。
GAFAが現在提供している主要サービスは以下のようかと思われます。

ブラウザー/ポータルサイト(Google,Apple)
検索エンジン(Google)
地図情報/ナビ(Google)
写真登録検索(Google,Facebook(Instagram))
動画登録検索(Google(YouTube), Facebook(Instagram))
音楽配信(Apple, Google, Amazon)
ニュース配信(Google, Facebook)
メール/メッセージサービス(Apple, Google, Facebook(WhatsApp))
スケジュール管理(Google, Facebook, Apple)
翻訳サービス(Google)
クラウドサービス(Google, Apple, Amazon)
AIスピーカー(Google, Apple, Amazon)
PC(Apple)
スマートフォン/タブレット(Google, Apple)
映画配信(Apple, Amazon)
デジタルキャッシュ(Google, Apple, Amazon, Facebook)
SNS(Facebook)
EC(Amazon)
自動運転(Google, Apple)(現在研究中)

これに対してヤフー/LINEが得意とする代表サービスは次のようと思われます。

メッセンジャーアプリ(LINE)
ポータルサイト(Yahoo)
オークション(Yahoo)
EC(Yahoo(ZOZOタウン, アスクル))
デジタルキャッシュ(LINE, Yahoo(PayPay))
金融保険(LINE, Yahoo(ジャパンネットバンク))

特に日本ではLINEのメッセンジャーアプリはデファクトになっています。
それではこのメッセンジャーアプリマーケットをみてみましょう。

全世界でのメッセンジャーアプリのランキング(2016年のデータ)
1位 WhatsApp(Facebook)
2位 QQ(中国)
3位 WeChat(中国)

7位 LINE

首位のWhatApp(Facebook) が全世界で10億人近いユーザーがいるのに対してLINE利用者は2億人にとどまっています。ここをどこまで増やしていけるのかがポイントです。

またヤフーの強いネットオークションに特化していくのはどうでしょうか。
ネットオークションサービスでの世界No1はeBayです。

eBay: 837億ドル(2016年度)
ヤフーオークション: 79億ドル(8667億円)

このようにeBayと比べると10倍以上の開きがあります。これはヤフーオークションが国内でのサービスなので仕方ないと思います。海外に打って出れるかというのがポイントです。

こうした既存の強いサービスを伸ばしていくのと同時に、新しい分野でGAFAに一矢報えないか。
例えば、今後新たにサービスが広がっていく「デジタルキャッシュ/FinTec」の分野で攻めていくのは良いのかもしれません。

この分野はGAFAは影響力が大きすぎるが故にFacebookが批判を浴びている「リブラ」のように各国の金融規制があるためGAFAはあまり大々的に金融サービスを打ち出しづらい分野です。

LINE PayやLINE証券保険などとジャパンネットバンクPay Payをうまく融合させてFinTec分野で日本で実績を作り、世界に打って出る可能性はあるかもしれません。FinTecの分野では国内のメガバンクやFinTec企業など連合軍を作る必要があるかもしれません。

5. エリア、国で棲み分ける

少なくともLINEはメッセンジャーアプリで日本でNo.1のシェアをとっています。またYahooも、国内ではヤフオク、ZOZOやアスクルなどの特定品のECでシェアを持っています。

とにかく日本でまずはサービスや顧客数を伸ばすことは現実的な戦術かと思います。次にそのビジネスモデルを他のアジアの国に展開する。またアジアの企業と組んでその国のシェアをとる、というアジア中心にエリアを固める戦略も考えていると思います。

例えばLINEのメッセンジャーアプリはタイ、台湾、インドネシアではすでに高いシェアを持っています。ヤフーのサービスと組み合わせてこうした国をその国の企業とも連携しながらデファクトなプラットフォームを作っていく方法もあります。

6. 最後に

ヤフー/LINEがGAFAに対してこれだけ大きな開きがある中で個別領域、個別マーケットでシェアを広げていく可能性について考えてみましたが、もしGAFAレベルの売上規模、時価総額規模まで成長させることを考えているのであれば、今のままでは難しいと思います。

ここで切り札となるのはヤフーの親会社のソフトバンクです。特に孫正義会長の運営する10兆円ファンドなるものを活用して、ヤフー/LINEを核としながら、日本初、アジア初の「AIテックカンパニーグループ」を大きくさせる方法しかないと思います。そのためにはより一層、有望な先進企業を買収したり、既存の大手企業と連携する必要があります。

とにかくAIテックの研究開発費を年間1兆円ほど使えるくらいの規模感になる必要があります。そのためにはその分野に強い大手ITベンダーの一つくらい買収する必要があるかもしれませんね。

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