RPA考~今だからわかるRPAとは、他のテーマとの連携は?
今回はRPAすなわちRobotic Process Automationについて調査してまとめてみました。
すでに数年前からIT業界で騒がれているRPAですが、すでに多くの企業で導入事例が増えていると聞きます。また色々なコンピューター系雑誌の紙面やWebサイトなどでRPAについて解説しているものも増えてきました。
それらを一通り把握したうえで、少し整理しますと
1. RPAを一言で定義すると「主にホワイトカラーが担うPC操作などの定型的な事務作業をソフトウェアで自動化する行為や技術」です。
2. RPAの導入事例としては日経コンピュータに掲載されているもので以下のようなものがありました。
日本生命保険の事務作業をRPAで高速化 (2017.9.17掲載)
大和ハウス工業の勤怠関連を中心に定型的な事務作業をRPAで自動化(2017.9.17掲載)(2018.6.21掲載)
武蔵コーポレーション、パーク24でのRPAでデータ入力削減(2017.9.28掲載)
電通の働き方改革でRPAにより放送局事務、会計事務の削減(2017.11.23掲載)(2018.6.21掲載)
トランスコスモスでBPOサービスのデータ入力、業務システム監視などにRPA適用(2017.11.23掲載)
茨城県つくば市でNTTデータと共同研究で、市の業務にRPA適用(2018.2.15掲載)
サントリーHDで営業支援、在庫管理などにRPA導入(2018.6.21掲載)
総務省は2019年1月、総合無線局監理システムを使った業務の効率化にRPAを適用(2018.6.21掲載)
SMFLキャピタルは会議室の椅子のIOTとRPAを使って会議室状況把握(2018.6.21掲載)
住友電気工業はシステム保守業務にRPAとビジネスチャットを使ってシステム性能低下を通知(2018.6.21掲載)
東証がRPAを2019年までに150業務に適用し効率を100倍以上に(2018.9.13掲載)
もちろん、こうした記事に掲載されている以外にもここ数年で非常に多くの導入事例が生まれていると思います。
理由は、普通のシステム開発に比べて、投資額が非常に安価な割には目に見える効果が出やすいことです。
3. RPAツールおよび提供企業、ビジネスマーケット
こうしたRPAブームに乗って、コンサルティングファームやベンダー等も、ここぞとばかりにマーケットへの参入をアナウンスして実績を積んできています。
実際にツールを持っているベンダー(NTTデータ、RPAテクノロジーズ、UiPathなど)はもとより、RPAコンサルティングから設計、導入、そして社内システムとの連携、インターフェースもあるため、アクセンチュア、PWC, アビーム、デロイトなどの大手コンサルティングファームから、NTTデータ、日立、富士通、IBM, NEC、CACなどほとんどのベンダーが現在、セールスと導入を繰り広げているようです。
2018年度の国内RPA市場規模は44億円(調査会社アイティアールより)とあり、2020年には70億円を超える予想がでています。
ただ、こちらの数字はどうみても少ないため、周辺のコンサルティングやシステム連携まで含めると市場はもっと大きいと推定されます。
4. RPAと他のITテーマとの連携
さて前置きが長くなりました、RPAが、元々は単なる「PC操作の自動化」だったものがこれだけ普及してくると、RPAを知る上で他の技術との関連やこれからどのような方向に向かうかが気になってきます。
そもそもITシステムは色々な技術の総合体ですから、RPAが全体のITシステムの中で今後どのように融合していくのかを考えてみたいと思います。
(1)RPAとOCR〜狭義のRPAの得意分野
RPAとOCRすなわち光学文字認識との連携です。このOCR連携はRPA先進導入企業の事例で必ず出てきます。例えば東証が導入したRPAの利用例ではWEBブラウザーで表示したPDF文書をソフトロボットがその中の数値を抽出し、Excelに取り込み自動集計する業務が挙げられています。
多くの企業では、業務はシステム化されていると言いますが、東証のように「デジタルしていない文書をPDFファイルで外部と受け渡す」さらには「外部の顧客や取引先から紙で提出されたものをPDF化して保管」することはまだまだ非常に多いのではないかと想定されます。
紙やPDFファイルはそのままデジタル化していないため、それをExcelや業務システムや入力する業務は社員がPC上で「手作業」で行なわざるを得ないケースが非常に多い。この部分にRPA+OCRを適用するケースは非常に多いと思います。
ここででてくるソシューションがRPA+OCRなんですね。例えばソフトバンクは2018年10月からOCRサービス「Tegaki」と自社のRPA製品を自動処理できるようにするようです。またクラウドワークスと業界大手のRPAテクノロジーズ、そしてパナソニックソリューションテクノロジーの3社がRPAとOCRを組み合わせたサービス「Forge RPA」を今年9月から始めています。RPA+OCRは今後RPA適用のディファクトになると思われます。
(2)RPAとBPR〜RPAは現行業務を自動化することにしない工夫
基本的に「既存のPC業務をそのまま自動化するRPA」と「PC業務も含めた業務全体を見直すBPR(Business Process Reenginering)」は、検討する方向性やレベルが全く異なります。
特に検討レベルで考えればRPAよりもBPRのほうがより広く高次のレベル、レイヤーに位置すると思われます。
ですから本来論で考えれば、まず大きな視点で当該業務のBPRを検討して、業務の無駄をなくし、それでも必要となるPC業務をRPA化するのが順番としては良いと思われます。
ところが、ここで問題なのが、こうした大きなプロジェクトとなるBPR改革に取り組まずに、RPAで担当者の現行の業務をそのまま自動化する場合が多いのでは、ということなのです。
この場合BPRすなわち業務改革は一旦棚上げ、先送りされてしまうわけです。
今後の解決案としては、RPAのシステムの適用の企画フェーズにおいて、少し広めの現行の業務分析を合わせて行なった方が良いでしょう。
そしてできればその段階で多少の業務改善を行なった上で、それでもでてくる定型業務にRPAを適用するなどの考慮が必要でしょう。
せっかくRPAを適用しても将来的に必要ない業務として廃止されてしまっては、投資が無駄になりますからね。
同じ観点でBPMとRPAを連携できないかというアイデアがあります。業務改善をして、BPMを導入している場合、同じルールベースのBPMとは親和性が高いのではと思われます。BPMツールでカバーする業務全体の中の人のPC業務にRPAを適用すると、より効率化効果が高いと想定されます。
(3)RPAとERP(業務システム)〜RPAはERP(業務システム)を補完するもの?
RPAが効果を上げる分野は既存のERP(業務システム)の入出力の部分が多いのではと想定されます。ERP(業務システム)に入力する際に例えばPDFからの社員が再入力していた業務を、RPA+OCRでPDFを自動読み取りをして業務システムに送ってあげればERP(業務システム)の機能補完となります。
また既存の業務システムに画面が複数あり、各画面の情報をサマリーしたい場合もRPAが役に立つようです。
前述の「総務省が総合無線局監理システムを使った業務の効率化にRPAを適用」の例では、業務システムの複数の画面からRPAが担当者が定型的に見る情報を自動収集して一つの画面に集約するという業務システム補完を目指しています。
またそれ以外にもRPAの得意分野として「社内システム間連携」「社内システムの起動操作」がありますが、これらもERP(業務システム)を補完する機能と位置付けられます。本来であればERP(業務システム)に追加機能を開発しますが、RPAツールの方がたぶん少ない投資、工数で実現できるということかと思います。
(4)RPAとビッグデータ/AI 〜 進化するRPA
いわゆる単純作業を行うロボットであるRPAとビッグデータとディープラーニングをする高度なロボットであるAIというのは、今は分野を棲み分けていると思います。ただ、このRPAとAIはどちらも人の仕事をサポートするロボットですよね。近い将来、融合する日が来ると思います。
例えば現在のRPAは、人間があらかじめ設定したシナリオベース、ルールベースで動いています。このシナリオ、ルールをAIによってRPAが自ら作成したり、修正することができれば、まさに人の業務を丸ごと大体できるわけです。
現実的にルールベースの修正という範囲であれば、RPAを一度導入した後の保守においてAI機能は有効です。この議論については、丸ごとRPA+AIを信用するのはまだ時期尚早なので、人間が最終判断をするためのレコメンドをする機能が考えられているそうです。
ベンダー企業の取り組みとしても、ソフトバンクがPapperのロボティクス技術やAI技術をRPAホールディングスのRPAツールと連携して融合できないかの検討や、IBMは自社のWatsonとRPAツールを連携できないかというサービスを開発しているとのことです。
(5)RPAとクラウド
RPAの主流は今でもPC環境で稼働する「PC形式」のようです。その場合でも管理サーバー上にマネジメントツールを置いて一元管理することができるようです。
最近はよりラージスケールで、システム部門で管理できるようなサーバー上で一元的に動かす「サーバー形式」の製品も出てきました。
ただ今のIT業界は「クラウド時代」ですので、いわゆるオンプレミスとして自社でRPA用のサーバーを持たずに、クラウド上のRPAをサービスとして利用するという「クラウド型RPA」も今後普及してくると想定されます。
と思って調べてみたら、RPAツールベンダーのRPAテクノロジーズはは2018年6月に同社のBizRobo!のクラウド版BizRobo! DX Cloudの提供を始めていました。
さらに、このクラウド版BizRobo! DX Cloudを使って、人材派遣大手のパソナテックと共同で、給与計算や会計などのサービスをクラウドで実施することも10月から始めているようです。
ただ現段階ではこのRPAのクラウド化、ハードルもあるようです。それはセキュリティです。クラウド環境から社内のPCや社内のシステムにアクセスする場合にその接続にVPNなどのセキュリティ対応を施す必要があります。
(6)RPAと働き方改革
政府から企業まで世の中全体が、数年前から「働き方改革」と称して、社員の残業を削減したり、仕事環境を良くしたりしながら、生産性向上とワークタイムバランスの両立を図っています。
RPAも、社員の定型的なPC業務を自動化するため、この働き方改革の一つの大きな手段ではあります。
ただ、働き方改革と大きく打ち出した場合、現在のRPA機能以上のものがITとしても求められています。例えば
◯ 会議の効率化(会議時間を管理するMicrosoftのMyAnalyticsなど)
◯ テレワーク(V-CUBE、LINE WORKSなどのリモートコミュニケーションツール)
◯ 仕事の段取り管理(Office365ベースのアプリ、SFDCなど多くの支援システム)
◯ 働きすぎなどの人事管理(退職リスクを予測機能などオーバーワークを検知して知らせるシステム等)
働き方改革として目標を掲げている場合には、働き方改革=RPAでは、少し力不足でしょう。ITを活用した働き方改革は、より、総合的に検討されるべきテーマです。
(7)RPAとEUC 〜 ロボット人事部?
特にPCで稼働するRPAがユーザー部門の担当者のPCで続々と導入されていくと、昔のバズワードの「EUC(End User Computing)」を思い出しませんか?
10年以上前に、企業の業務システムの使い勝手が悪かった時代、ユーザー部門で、当該事業に必要なデータ活用などのシステムをユーザー部門が自ら開発して利用することが普通でした。
これを「EUC(End User Computing)」と呼んだのですが、この「EUC(End User Computing)」は導入した当初は効果が高いのですが、時間が経つに従って、担当者も異動して、中身を知る人が誰もいなくなり、内部がブラックボックス化していくことが多かったのです。
筆者も最初にRPAを聞いた際に、このEUCや担当者が異動したらブラックボックス化するのでは、ということが気になりました。
結論から言うと、最近のRPAはサーバー上で稼働する形式のものであれば、システム部門や社内にそのサーバーとRPAアプリを一元管理するセクションを置いて管理していくことも可能ですし、そうした管理体制、保守運用体制が求められています。
事例で面白いのが、電通のRPA導入プロジェクトでは「ロボット人事部」というセクションを作ったそうです。この「ロボット人事部」の5人の任務は、ソフトロボットの名簿や配属、勤務状態、健康状態を管理するということです。
以上、PRAの最近の動向をまとめてみました。ご一読されて参考になれば幸いです。
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