マイクロソフトは成長の限界を突破できるのか!!:IT業界ウォッチャーシリーズ第5回
今回はグローバルなIT企業の戦略ウォッチの第5弾になります。
今回モデルとするのはマイクロソフトです。
マイクロソフトというと、ファウンダーの億万長者ビルゲイツとあの「Windows」の印象が大きいと思います。特にPCのOS「Windows」は世界中のPCの9割のシェアを今でも持っています。ここからのライセンス収入は莫大なものであり、マイクロソフトの稼ぎの源泉もそこにありました。
マイクロソフトはこのキラー製品「Windows」を軸にして1975年創設から40年近く目覚ましい成長を遂げてきました。その歴史は成長の歴史でもあります。
売上規模でみると、
1980年 750万ドル
1990年 8億ドル
2000年 230億ドル
2010年 625億ドル
と着実に大きく成長していることがわかります。そしてついに
2015年 936億ドル
と過去最高となり、IT業界の巨艦IBMを売上で抜きさった!のです。
(IBM 2015年売上928億ドル)
それでは事業の中身を見ていきましょう。
マイクロソフトの主軸事業はコンシューマー(ビジネスユース含む)向けの「Windows」やPCソフトの「Office」等でしたが、それ以外にも主にビジネス市場向けに
サーバーOSの「Windows Server」
データベースソフトの「Microsoft SQL Server」
コミュニケーションソフト「Microsoft Exchange Server」「Microsoft SharePoint Server」
CRMソフト「Dynamics CRM」
などは、多くの企業にITインフラ、ビジネスインフラとして導入されているものです。
また最近では、タブレット端末「Surface」やスマートフォンの「Windows phone」などPC以外の端末にも力を入れています。
また、家庭用ゲーム機「XBOX」もマイクロソフトのコンシューマー向けの有力な事業です。
こうしたいわゆる主軸事業で、マイクロソフトはここまでの業績を稼ぎだしてきました。
純利益や利益率も非常に高く、例えば過去の業績をみると、
1997年 利益35億ドル 利益率29%
2000年 利益94億ドル 利益率41%
2003年 利益75億ドル 利益率23%
2006年 利益126億ドル 利益率28%
2009年 利益146億ドル 利益率25%
2010年 利益188億ドル 利益率30%
2011年 利益232億ドル 利益率33%
2012年 利益170億ドル 利益率23%
2013年 利益219億ドル 利益率28%
2014年 利益221億ドル 利益率25%
とものすごい高利益企業であることがわかります。特に2000年の利益率41%とか普通では考えられないですね。
この豊富な利益とキャッシュを使って、マイクロソフトは2011年と2014年に大きな買い物をしました。
2011年 ビデオコミュニケーションソフト「Skype」を85億ドルで買収
2014年 NOKIAのデバイス事業を75億ドル(54億ユーロ)で買収、2万5千人の社員を吸収
そのため、その影響もあり、買収後の2012年と2015年はいずれも利益が前年よりも落ちています。特にNokia事業を買収した後の、2015年の業績は
2015年 利益122億ドル 利益率13%
とここ20年で初めて利益率が10%台と急激に落ち込みました。
2015期の決算が落ち込んだ原因は、2015年の第4四半期の決算で、なんと31億9500万ドルという大きな赤字を計上したからです。
ただこちらは発表では、買収したNokiaの事業に関する減損費用とそれに伴う特別費用を計上したためということでした。
ただ、結局そこまでして取り込んだ携帯事業でしたが、翌年2016年の5月に、「フィーチャーフォン」関連の事業は中国のHon Hai傘下のFIH Mobileに3億5000万ドルで売却してしまいました。
マイクロソフトは引き続き、売却後も「Winsows 10 Mobile」「Windows phoe」の開発は継続して行う、と言っていますが、携帯事業に関してはどうも足踏みした感があります。
この携帯事業としては、市場がGoogleの「Android」とAppleの「iOS」に二分されている状況では、「Windows phoe」の成長は難しいと思われます。
ちなみに2016年の決算をみると
2016年 売上853億ドル 利益168億ドル 売上高利益率20%
と減収増益となり、業績(利益率)はやや改善したように見えます。
そして、マイクロソフトの今後の稼ぎ頭となりそうなのが、Cloudビジネスです。
マイクロソフトのクラウド事業として
Intelligent Cloud事業として、法人向けクラウドサービスの「Azure」
Productivity and Business Processes事業の中の「Office 365」
があります。いずれの事業も最新の2017年第1四半期の決算で
Azure 売上高 対前年比116%(2倍強)増
Offece 365 売上高 対前年比51%増
と目覚ましい成長を遂げています。
このように、PC、サーバーのOS、ソフト製品で今まで高利益をたたきだし、IBMを超えるほどの規模に成長したマクロソフトは、従来の「PC、サーバー事業」の衰退を見越して、Nokiaの「携帯端末事業」を買収したが上手くいかずに、新たに「クラウド事業」に希望をみだして、試行錯誤している姿が見えてきました。
ただ、それでもマイクロソフトの強みは、全世界に膨大な数の「Windows」がまだあることです。新OSの「Windows 10」は、クラウド時代を見越して、無料配布という形にしましたが、それでも4億台のPCにインストールされたようです。
また「Windows」上で動く「Office 365」の月間アクティブユーザー数は、企業向けで8500万人、一般向けでは2400万人のユーザーが利用しています。
それ以外にも買収したSkypeの全世界のユーザーは2億8000万人います。
また最近買収したLinkedInのユーザー数は2億人と言われています。
こうした膨大な資産を活用して、新たなクラウドを軸にしたサービスに移行できるかがマイクロソフトの今後の勝負となるでしょう。
2014年からマイクロソフトのCEOは長年CEOをつとめてきたスティーブバルマーから、当時エンタープライズ部門のシニアバイスプレジデントであったサティアナデラに変わりました。
従来型のビジネス猛烈に押し進めていたスティーブバルマーに比べて、現CEOのサティアナデラの戦略はだいぶ違うように見えます。
サティアナデラの戦略は「Mobile First」「Cloud First」の名の元に、マイクロソフト製品だけにとどまらず、よりオープンな連携を指向しているようです。
例えばAzure上でのLinax環境の提供、VMwareやSalesforce.comとの連携など、従来より、よりオープンな戦略に変わってきています。
2015年9月のSalesforce.comのカンファレンスで登壇したサティアナデラは
「IT業界の中でゼロサムゲームを演じるのはばかげたことだ。我々はもうそういうことにこだわらない。」
と言って多くの聴衆を驚かせたようです。
またサティアナデラは、現実世界にデジタルを重ね合わせる次世代のコンピューターインターフェイスプロジェクト「HoloLens」を推進したり、また2016年秋のITエンジニア向けイベント「decode2016」では人工知能とディープランニングがどのようにマイクロソフトのサービスを変えていくかを語ったりと、精力的に、マイクロソフトが実現したい新機軸を伝え始めています。
今後も新たなリーダーが率いるこの世界一のIT企業マイクロソフトの動向は見逃せないでしょう。
(参考サイト:YCharts、IT media、ASCII.jp、livedoorニュース、ビジネスネットワーク.jp、TechCrunch.japan、日本経済新聞、ZDNet、Wikipedia)
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