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オラクルの体質改善(クラウド戦略)は間に合うのか!!:IT業界ウォッチャーシリーズ第4回

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今回はグローバルなIT企業の戦略ウォッチの第4弾になります。

今回モデルとするのはオラクルです。

オラクルと言えばRDBすなわちデータベースソフトのOracle Databaseが有名ですが、私は通称オラクルEBS、正式にはOracle E-business Suiteのほうに馴染みがあります。前職でERPコンサル事業をしていた際、SAPと並んでOracle EBSも企業に良く提案していました。

オラクルは、結構歴史が古く、創業は1977年ということですので、今年で何と創業40年になるんですね。逆に言うと40年間、IT業界で成長し、成功し続けている老舗企業であるということです。

第一期オラクルとしては創業から20年間は前述したOracle Databeseを主軸の製品として競合DBメーカーであるInformixとSybaseと競い勝って、データベース市場を独占しました。

この時期の売上規模はおよそ100億ドル利益25-30億ドル、でした。

第二期オラクルはデータベース事業に加えてアプリケーション事業を本格的に成功させた時代で、この時期、CEOのラリーエリソンは、多くのアプリケーション企業をM&Aするという戦略に打って出ました。この2000初期から始まった時代ではオラクルは以下の企業を買収して、主にERP,CRM系のアプリケーションソリューションを手中にしています。

2005年 ピープルソフト買収
2006年 シーベルシステム買収
2007年 ハイペリオン買収

この時期は売上規模も2008年200億ドルのオーダーにのり、利益も60億ドルにのせました。

そしてオラクルの歴史の中で大きいのが2009年にサーバーベンダーであるサンマイクロシステムズを買収して、ハードウェア、ミドルウェア、アプリケーションを総合的に提供できる総合ITベンダーとなったのです。

この段階である意味、規模の面では第3期オラクルとして現在のオラクルに近い形となりました。

2010年 売上268億ドル、利益61億ドル
2011年 売上356億ドル、利益85億ドル

そして2011年以降のオラクルは、というと、以下のように売上規模はほぼ横ばいです。

2012年 371億ドル
2013年 372億ドル
2014年 383億ドル
2015年 382億ドル
2016年 371億ドル

利益も一旦、微増しましたがまた減っているので、こちらも5年間でほぼ横ばいと言って良いでしょう。

2012年 100億ドル
2013年 109億ドル
2014年 110億ドル
2015年 99億ドル
2016年 89億ドル

ただ、利益率は高いですね。以下のようになります。若干落ちてきているのが気になりますが、それでもIT企業の中では極めて高い利益率です。驚きです。

2012年 27%
2013年 29%
2014年 28%
2015年 26%
2016年 24%

さて、これだけ利益率の良いオラクルですが、現在、売上、利益が頭打ちになっています。その原因は「ITのクラウド化」です。

政府や企業などの顧客が、自社でシステムを持つ「オンプレミス」からクラウドベンダーのシステムを利用する「クラウド」に時代は変化しています。

オラクルのビジネスはやはり「オンプレミス」のビジネスモデルであるため、「クラウド」のビジネスモデルである、アマゾン(AWS)やSFDC(セールスフォース)にシェアを奪われ続けているのです。

以前、オラクルのラリーエリソンは「クラウド」について痛烈にこきおろし、「ファッションにすぎない」とコメントしていたようですが、ここに来てようやく本腰を上げてきたようです。

特に昨年のOracle OpenWorld 2016で、ラリーエリソンはアマゾン(AWS)を引合いにしながら自社のクラウド事業である「Oracle cloud」の優位性を全面に打ち出しました

ここ一年の四半期の数字でみても

2015年12-2月期 売上90億1000万ドル クラウド事業 5億8300万ドル(前年比57%増)
2016年3-5月期 売上105億9400万ドル クラウド事業 8億5900万ドル(前年比49%増)
2016年6-8月期 売上89億9500万ドル クラウド事業 9億6900万ドル(前年比59%増)
2016年9-11月期 売上90億3500万ドル クラウド事業 10億5300万ドル(前年比62%増)

売上高に見るクラウド事業の比率でみると

12-2月期 6.5%
3-5月期 8.1%
6-8月期 10.8%
9-11月期 11.7%

と明らかに少しずつですが、伸びている!のです。


ただ問題は、「オンプレミスからクラウドへの移行スピード」対して「オラクルのクラウド事業が伸びるスピード」間に合うのか、という点です。

このようにトップダウンで、クラウド事業を必死に大きくしようとしているオラクルですが、アプリケーションの分野ではスピードアップのための起死回生の一手にでました。

2016年7月にERPシステムのクラウドを手がけるNetSuiteを93億ドル(日本円で1兆円!)で買収したのです!!

確かにNetSuiteは全世界で3万社以上の顧客を抱えて、年率30%台で成長している優良クラウドベンダーです。

規模も2015年12月期の年間売上は7億4114万ドルでERPのSaasベンダーとしては最大の企業です。

ただ不安な情報もあります。NetSuiteは2007年の上場以来、赤字が続いているのです。2016年4-6月期の累積赤字はなんと7億4143万ドルにも達しているようです。オラクルの業績に短期的には悪い影響をもたらすでしょう。

またオラクルのトップダウンのクラウド戦略は、「クラウド事業売上高の不正処理の可能性」という歪みも生み出してしまいました。

元クラウド事業のファイナンスマネージャーを努めていたSvetlana Blackburn氏が「オラクルは2015年のクラウド事業の売上を従来型のサービスの売上から移し替えた」と内部告発しているようです。ちなみにオラクル側は一切否定しているようですが。

このように実質的なトップのラリーエリソンとCEOのマークハードがそろって「クラウド」の大号令をかけているオラクル、この先もIT業界を生き残っていけるのか、多いに興味がわくところです。

ただオラクルの強いのは、数字からみると、売上利益は横ばいでも、常に非常に高い利益率を稼いでいる事です。その利益を使ってクラウドビジネスに今後もM&Aなども含めて一層投資してくると思われます。

今後も毎回の四半期決算でアナリストがオラクルのクラウド事業の業績に一喜一憂することでしょう。

(参考サイト:YCharts、日本経済新聞、IT PRO,Bloomberg、ダイヤモンドオンライン、ZDNet、Wikipedia記事)


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