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IBMは着実に肉体改造してマッチョになっている!!:IT業界ウォッチャーシリーズ第3回

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今回はグローバルなIT企業の戦略ウォッチの第三弾です。

今回モデルとするのはIBMです。

私も日本IBMには元同僚がたくさん働いており、また日本IBMのポール与那嶺社長は、前職のボスでもありますので、是非頑張ってほしい企業の一つです。


IBMはIT業界で長い歴史を持つ企業です。1911年に設立されてからすでに1世紀以上、グローバルなITビジネスをリードし続けています

現在でも売上規模で800億(2015年)以上あり、HPが規模を分割した今、名実共に「世界最大のITカンパニー」であります。

さて、IBMの過去20年の売上推移を見ると、HPやデルのような派手な動きは見られません。800億ドルから1100億ドルの間をキープしています。ただ、傾向でみると

1996-2008 730億ドルから1103億ドルまで漸増↗︎
2008-2012 950億ドルから1070億ドルまでのレンジを維持→(最高値は2011年)
2012-現在 1020億ドルから800億ドルまで漸減↘︎

つまり1996年から2008年までは売上は上り調子で、その後1000億ドル前後の状態が5年間続き、そこから現在まで売上規模は徐々に落ちている

ということなのです。

ちなみにCEOでいくと、1993年に、有名なルイスガースナーが就任し、その後2003年サミュエルJパルサミーノに交代し、そして最近では2012年に当時副社長であったバージニアロメッティが初の女性CEOとなり、現在に至っています。

今のロメッティCEOが就任した時から売上規模は落ちてきているようです。

こうした売上規模の推移から見ると、IBMは2011年までは調子よかったけど、今は衰退の一途ではないか、と見えるのですが、実はそうでもないようです。

IBMの純利益(Net Income)の1996年からの推移傾向を見てみると驚くべき事がわかります。

「IBMは、この20年で利益を倍増させており、またこの10年間に高い利益を着実に出している」とうことです。

純利益 (Net Income)

1996年 54億ドル
2006年 95億ドル
2015年 132億ドル

と増えています。

売上高利益率でみると

1996年 7%
2006年 10%
2015年 16%

とやはり増えています。

年代でみるとちょうど2006年あたりから売上高利益率が10%を超えてきたようです。

また最近の2015年の16%の利益率は、売上高で最高であった2011年の利益率は15%に比べても全く遜色ありません。(ちなみに日本の大手IT企業の利益率は一桁です(10%にもいかない)。)

つまりパルサミーノ→ロメッティというCEOの中で、IBMは「利益を着実に出せるマッチョ体質であり、それは全く変わっていない」ということです。

それでは、IBMのこの「マッチョ体質」を具体的に見ていきましょう。

まず、2005年の調子が良いときでも、HPと同じように、PC事業を中国のLenovoに売却しています。

それと同様に2014年にロメッティはx86サーバーすなわちPCサーバー事業を、同じくLenovoに売却してしまいました。

さらには、それに留まらず、同じく2014年に過去IBMマシンの差別化の源泉であった半導体製造部門(工場含む)グローバルファウンドリーズ社に譲渡してしまいました。

つまり「付加価値の低いコモディティ的事業はしっかりと切り離す」体質改善をまず断行したのです。

次にIBMのセグメント別の売上の推移から事業体質の変革をみてみます。

従来からのハードウェア事業の売上高は毎年下がっている↘︎
クラウド関連事業とコグニティブソリューション事業の売上高が近年急激に上昇している↗︎

という、まさにハードからクラウド/ソフト/サービスへの事業体質の変化がみられます。

例えば2000年のIBMの事業における売上高構成(概要)は

ハードウェア 42.8%
グローバルサービス 37.5%
ソフトウェア 14.3%
金融その他 5.5%

この時期までのIBMはハードウェアの事業売上が42%と、まさに「ハードウェアの会社」でした。

これが、2013年になると、

グローバルテクノロジーサービス(クラウド含む) 38.7%
ソフトウェア 26.0%
グローバルビジネスサービス 18.4%
システムテクノロジーズ (ハードウェア含む)14.4%

ハードウェア事業の比率が14.4%まで低下しています。

そして変わって主軸に躍り出たのはクラウド、データセンター系の「グローバルテクノロジーサービス」事業とソフトウェアとコンサルティング、BPOなどの「グローバルビジネスサービス」事業となります。

そして最新の2016年第3四半期の事業別売上高をみてみると、さらに変化があり、

グローバルテクノロジーサービス 40%
コグニティブソリューションズ 22%
グローバルビジネスサービス 22%
システムハードウェア 6%
インテグレーションソフトウェア 5%
オペレーティングシステムソフトウェア 2%

となっています。

つまりハードウェア事業は売上比率でわずか6%まで縮小してしまいました。

それに対して、技術サポートサービスやクラウドインフラサービスを含む「グローバルテクノロジーサービス」は引き続き主軸として継続的に伸びています。

またコンサルティング、BPO、アプリケーションマネージメントなどの「グローバルビジネスサービス」も引き続き一定のウェイトをしめています。

さらに、ソリューションソフトウェアやトランザクション処理ソフトウェアを含む「コグニティブソリューションズ」22%と急激に育ってきているのです。

またIBMのプレスリリースによると、クラウドサービス、ビッグデータ分析、モバイル、ソーシャルネットワーク、セキュリティを「Strategic Imperatives」と位置づけて、これに該当する事業の合計はこの第3四半期だけで80億ドル(42%)、中でもそしてクラウド事業伸び率は44%増であるとのことです。

IBMは、ロメッティがCEOに就任してから、17四半期連続の減収となっていますが、「高い水準の利益率を維持している」ことに加えて、低付加価値事業を上手く売却、譲渡し、また事業割合を縮小して、「より高付加価値で戦略的なクラウド、コグニティブソリューションの事業に体質をシフト」しています。

今年10月の第3四半期決算時にロメッティがコメントした言葉がまさにそれを表しています。

「注力分野は2桁の成長を続けており、業界の垣根を超えて顧客がIBMから新たな革新の価値を引き出している」

つまりIBMは人間で言えば、「体重は増えないが肉体を改造してマッチョな姿に変貌しようとしている」ように見えます。1世紀以上たつ巨大企業でこうした変革ができるのは恐るべき、いや素晴らしいことだと思います。

(参考サイト:YCharts、CNET japanニュース記事)


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