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国民投票は民主主義ではない!(EU離脱の騒動を見て)

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【EU離脱を問う国民投票による混乱】
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世界中の人々が、まさかと思ったのではないでしょうか。イギリスが6月23日にEU(欧州連合)からの離脱の是非を問う国民投票の結果が予想外に「離脱」が勝利しました。投票結果は、離脱51.9%残留が48.1%という僅差だったようです。

ところが、その後、議会のウェブサイトにはやり直しを求める署名が殺到しており、6月30日時点でついに400万件を超えたようです。

かたや、この結果を受けて、キャメロン首相は「2度目の国民投票はない、この決定を受け入れるべきだ」とコメントしながらも、自分自身は辞任するとしており、混乱に拍車をかけています。

この国民投票の行動に疑問を投げかけているのが、「離脱派の公約違反問題」です。
離脱派は、投票前にイギリスがEUを離脱すれば、以下のことが実現すると公約していたようです。

◯ イギリスのEUへの週3億5000万ポンドの拠出金がなくなり、国営の国民保険サービス(NHS)に出資できる

◯ EU加盟国からの移民制限で移民をゼロにする

ところが投票結果後、離脱派の幹部が

◯ EUへの拠出金は実はEUからの補助金を引くと、実質は週1億数千万ポンドだった

◯ EU加盟国からの移民はゼロになるわけではなく、少しだけ管理できるようになるだけ

であったことを認めたのです。

そんため、EU離脱の投票結果を後悔する「Bregret」といった造語も広まっているようです。


ここで、問題提起したいことは

たった一度の国民投票の結果が「民意」なのか?「民主主義」なのか?

ということです。

【多数決方式の歴史と国民投票での問題】

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国民投票の制度自体に、特に異議を唱えるつもりはありません。ここで問題にしたいのはそのやり方が「単純な多数決」であることです。

多数決とは、古くは中世のイギリス議会から議会運営の手段として採用され、アメリカでも有名な「ロバートの議事規則」で議会運営の基礎となっている決定方法です。

ただし、この多数決の前提としては、提案が動議された後、議会において、十分な議論と提案の修正を行い、議論がつくされた最後に議会投票によって決定するということです。この方法が、現代の議会制民主主義の根幹となっています。


さて、振り返って直接住民による多数決を行う場合はどうでしょうか。国民投票は議会と異なり、以下のような問題があります。

◯ 国民による十分な議論を行えない。または行う時間がない。
◯ 提案を修正するというプロセスがなく、当初の提案のyes,noつまり「二者択一」となってしまう
◯ 論理や議論でなく、感情やムーブメントに流されやすい


【多数決方式に変わるコンセンサスビルディング方式】

ただ、最近では、この議会における「多数決」さえも運用の仕方によっては問題が生じると言われています。例えば51%で決定された議題については実は49%の人々が反対しているということです。そしてこの49%の人たちの考え方は決定には無視される事になるのです。


このため、最近では住民に多大な影響を与える公共政策の分野には、多数決ではない意思決定方法である「コンセンサスビルディング」という手法も取り入れられてきました。


この「コンセンサスビルディング」は、ある公共政策に利害関係のある「ステークホルダー」を「招集」し、そのメンバーが「役割と責任の分担」を行い、「ファシリテーションにより集団問題解決」のパッケージ案を出し、最後に案にたいして投票ではなくコミュニケーションにより「合意の達成」をする、というプロセスです。

この新しい意思決定手法は米国マサチューセッツ工科大学のローレンスEサスカインド教授により提唱され、今では欧米の公共政策の意思決定に取り入れられています。

【国民投票、住民投票の問題】

このような最新の考え方を考えると単純に「多数決」により51%の過半数を確立したものの、残り49%の民意を無視する、現代の「国民投票」制度がいかに原始的か理解できるでしょう。

日本でも同様に2015年5月に「大阪都構想」の是非を問う住民投票すなわち「大阪市特別区設置住民投票」が行われましたが、こちらも賛成49.62%反対50.38%で、結果は「反対」となったことは記憶に新しいと思います。

ここでも、この住民投票結果は約半分の大阪住民の民意しか現れていない訳です。賛成した大阪市民の民意は、結論には無視されているのです。

【解決策は?】

私は、政治には素人ですが、素人でもわかる解決策は、以下の2点かと思います。

案1. 「単純な多数決」による国民投票や住民投票の結果で政策の意思決定は行わない。

案2. 「単純な多数決」による国民投票、住民投票を行う場合は結果が「8割以上」出ない限り、民意とみなさない

案1の場合、何が重要かと言うと、実はある政策について賛成、反対する場合、その結果よりも「理由」のほうが大事だということです。

これは「コンセンサスビルディング」の考え方にもありますが、「賛成および反対をする理由(訳)をオープンにして、それに対してのパッケージ案を両者がきちんと議論する」、ということです。

つまり、「民主主義の議論によって、賛成でも反対でもない、両者の折衷案である第3の案を一緒に考える」ことが本来必要なことなのです。

それを考えると膨大な参加者の国民投票、住民投票ではなく、「国民、住民に選ばれた代表が委員会、検討会のようなものを作り、そこで徹底的に議論し、そのプロセスも結果も国民、住民にオープンにする方法」が、公平な意思決定方法であると考えます。

案2は、それでも、政治の世界では古く歴史のある国民投票、住民投票をやりたいというのであれば、51%、49%という結果で物事が決まる事がおかしい、せめて常識的に民意を代表する、というのであれば80%以上の投票がある提案のみ、結論とみなすべきです。

51%、49%であれば、基本的に採決不可です。それぞれにメリット、デメリットがある案ですので、やはり同様に委員会、検討会を立ち上げて、両者が納得するパッケージ案を再設定して、再度国民投票、住民投票を行い、8割以上に民意がくるように持っていくべきでしょう。

以上、繰り返しになりますが、世界各地および日本国内で行われている「単純な多数決」で結論がでる国民投票、住民投票を安易に行うことは辞めるべきだと思います。我々人類はより進化した民主主義の方向に向かっていくべきと考えます。

(参考文献:コンセンサスビルディング入門 ローレンスEサスカインド著 有斐閣)

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