IOT、ビッグデータ等の新技術の波がIT業界構造を根本から変える!〜ITプロマッチへの道(その6)
ITプロマッチへの道シリーズの第6回目です。
前回、クラウドの波がIT業界構造を破壊していくという話を書きました。
今回はIOT,ビッグデータなどの新技術の波が日本のIT業界の企業を根本から変えてしまう!という話をしていきたいと思います。
最近のITのニュースはIOT、ビッグデータなどの新技術を活用したものが爆発的に増えてきています。
例えば
シード 生産ラインをIOT化、ビッグデータ分析で歩留まり向上
キャノン 100万台の複合機をネットでつなぎビッグデータ分析
米GE CTの稼働データを収集してビッグデータ分析し故障予知
良品計画 販売履歴をDWHクラウドとBIツールを使い分析
トヨタ 400万台の自動車から走行情報をクラウドに吸い上げ、ビッグデータ分析し、ドライバーにフィードバック
三井情報 太陽光発電の異常をネット接続しクラウドにより故障早期発見
(日経コンピュータ2015年より)
また大規模アプリケーションが常識だった金融業界でも、今、スマホ決済/送金、オンライン融資などのネットを使った新たなビジネスモデルFinTechの波が押し寄せようとしています。
今までの「社内の業務を支援するPCとサーバーで構成されたシステム」とは全く異なる「クラウドとIOT,ビッグデータ、モバイル端末などの新技術を活用して新たなビジネスモデルを構築する」というケースが今、圧倒的に増えているのです。
これは、エンドの顧客であるユーザー企業の経営者や担当者の関心が、新たなビジネスを創出し、他社と差別化していくために、モバイル、SNSの活用、ビッッグデータ分析、そしてデバイスをネットワークでつないだIOTという全く新しい技術分野にシフトしているためです。
今はまさに10年に一度の「IT活用の転換点」なのです!!!
この「新技術を使った新しいビジネスモデル導入」の特徴は、新技術の適用検討とビジネスの要件検討を同時に行う点が特徴です。
つまりこうしたシステムは、「今迄の業務システムのように、かっちりとした要件定義書があり、それに沿ってエンジニアが時間をかけてウォーターフォールでシステムを作っていくタイプでは対応できない」ということです。
この分野は技術革新のスピードが速いので新技術をいち早く適用した新ビジネスモデルで試してみて、そのプロトタイプをブラッシュアップしていくようなアジャイル型の開発のほうが合っていると考えられます。
その場合に、システムを作る体制はどうあるべきでしょうか?
今迄のような大手Sierに丸投げして、そこから下請け多重構造のピラミッドで開発するようなものでないことは確実です!
そのヒントは次のような記事にあると思われます。
「GE IT人材のみ込む」(日本経済新聞2015.11.12)より
「GEは今、製造業のデジタル化で生き残りを目指す方針を掲げました。そのための競争力維持のために、自らIT人材の積極的な採用を開始しています。また同様にメルセデスベンツなどの自動車会社も自動車のデジタル化を推進するためにIT人材を積極的に取り込んでいます。」
このように、新技術を活用した新たな「デジタルビジネスモデル」を構築するためには、もはや、ユーザー企業が自社の中にIT人材を大量に確保して、システムを構築しないと間に合わない、競争に勝てないということです。
欧米では、ユーザー企業内のエンジニア比率が高く、こうしたユーザー企業内でのIT人材確保には慣れていると言えます。
これに対して日本は元々、ユーザー企業におけるIT人材の比率が欧米に比べて極端に低く、多くを今迄、外部の大手Sierに依存してきました。
もうそういう時代ではなくなってきたということです。
グローバルで欧米の企業と競争していくためには、自社に優秀なエンジニアを持つ欧米の企業にデジタル化のスピードで勝てません。
日本のユーザー企業も特に自動車、金融などのグローバルで競争の激しい業界から、ユーザー企業内にIT人材を確保する方向に変わっていくと思われます。
そして、その場合、ユーザー企業は新技術の知識や導入経験を持つIT人材を積極的に外部に探しにいくでしょう。今迄下請け多重構造の中で、旧来型のアプリケーション開発経験しかないIT技術者は厳しいかもしれませんが、逆に今迄外部の中小IT企業に所属していたIOT,ビッグデータ、モバイルなどのIT技術者は今後、ひっぱりだこになるでしょう。
また繰り返しになりますが、ユーザー企業は自らのデジタル化を邁進するために、もっともっとIT技術者を雇うべきです。そうしないとグローバルなビジネスのデジタル競争に生き残れません。
またこの流れは日本のIT業界の構造を根本から変えていくでしょう。
日本のIT業界構造の特徴はSierと呼ばれる会社が非常に多いことです。
しかしユーザー企業がIT人材を自ら持つようになったら、これは多くのSierにとっても死活問題となってきます。
今後IOT等の新技術の流れに対して生き残るためには、
Sierは逆に「ユーザー企業」になるべきです!!!
日立製作所、東芝のようにSierでもあり、自らがビジネスを行うユーザー企業であるように、他のSierも得意な業界のユーザー企業と合併、提携、協業をして、
自らが「ビジネスモデル構築のプレイヤーになる」べきです。
既にその動きはあります。アクセンチュアがユニクロと協業してデジタル化を一緒に推進していくケースや大日本印刷と日本ユニシスが協業して新たな決済モデルを構築しようとしている動きなどです。
さて、それでは国内の下請け多重構造に属する中小IT企業やIT技術者はどうすればよいのでしょうか。
現在の下請け多重構造のIT業界の大半は、従来型の業務アプリケーション開発を中心としたスキルセットであると想定されます。(会社によっても違うとは思いますが、全体的には業務アプリ開発の割合が圧倒的に多いため)
またそうした企業の技術者から考えても、例えば今迄C言語のプログラミングばかりやってきたけど、今後こうした新技術の波にどう乗ったらよいのか、ということに悩んでいると思います。
しかし、IT企業やIT技術者がITの潮流に乗れないようでは存在意義がありません。ここは歯をくいしばってもこの新技術の波に乗れるように今から考えておくべきです!!
まず下請多重構造に属するIT企業は、目先の大手からの下請けビジネスとは別に、これはという新技術に対して、自社の強みを作っていくべきです。具体的には積極的に新技術を自社のIT技術者に学ばせ、吸収させるべきです。
中小のIT企業が新技術を学ぶ方法として、既に大手Sierが行っているように、そうした新技術を導入したいと考えているユーザー企業と組むことが良いと思います。その場合は「協業」ということになるため、十分なお金は出ないかもしれませんが、お互いに大きなメリットがあるはずです。
IT企業としては、社内のIT技術者にそうした新技術の試験開発の経験を積ませる、ユーザー企業としては、自社のビジネスにどのように新技術が使えるかの実証実験ができる、という両者にメリットがあります。
もしその後、その新技術がものになりそうであれば、今度は本格的なプロジェクトをそのユーザー企業と一緒に立ち上げればよいのです。
下請け多重構造の中小IT企業でも、クラウドも含めたこうした新技術に積極的に立ち向かい、吸収し、実績をあげていくことによって、新市場で活躍できる可能性があります。
むしろ中小のフットワークの良いITのベンチャーのほうが、クラウドサービスなどを利用して早く、安く「新技術サービス」を顧客に提案できるかもしれません。
このようにIOTに代表される「新技術による新たなビジネスモデルの創出」は、日本のIT業界の構造を変えていく根本から変えていく可能性が非常に高いのです。
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