解決策を実行できるプロジェクトにしていこう!! つまらない仕事をワクワクさせる〜問題解決その5
今回はいよいよ、問題解決シリーズ最後の「解決策を実行できる形にする」
について説明したいと思います。
- 問題に気づく
- 問題の本質を見極める
- 本質に対する解決策を考える
- 解決策を実行できる形にする
前回の「本質に対する解決策を考える」のステップで、今後、組織が行うべき解決策が挙げられ、その優先度付けが決まりました。
ただこのままの状態では、結局ここまで議論して出した仮結論が実行に移されないで終わってしまうでしょう。この最後のステップではこの解決策を実行させるために何をするべきかを説明していきます。
結論から言うと以下のステップを踏む必要があります。
1.アクションプランを作る
2.アクションプランの承認をとる
3.アクションプラン実行のためのプロジェクトを作る
4.アクションプランの実行をモニタリングする
1.アクションプランを作る
解決策を考えるところまでは、どちらかというとゼロベースであるべき姿、施策を描いてきました。このステップからはそれを現実と折り合いを付ける必要があります。このマインドチェンジは、あまり愉快なものではないですが、現実的にこの施策をどうやろうか、という現実的な検討が大事となります。
まず各解決策を優先度を参考にして、タイムチャート上にプロットしてアクションプランを作成していきます。そのためには、各解決策の実施イメージを多少描かなければいけません。サブステップとしては以下のようなステップを踏みます。
- 各解決策の必要資源、必要期間を明確化する
- 各解決策を実施するための阻害要因を明らかにし、それをクリアする方策を考える
- 各解決策同士の関連性を明確化する
- 各解決策の実行責任者を明確化する
アクションプラン上、必要なことはどのくらいの人、物、金を投入する解決策すなわち事業であるのかを考慮するということです。特にシステム開発など投資が必要な場合には、この段階で「システム概念設計」と呼ばれる規模見積の検討を別途行わなければいけません。(そのやり方については、別の回に詳しくご説明します) またこの必要資源は、その施策を設計し実行に移すまでの開発段階と、それを実行に移した後の運用段階の資源の両方の見積が必要となります。
解決策を実施する活動が、組織にとっては大きな抵抗に出会う可能性があります。ここではそうした抵抗力が何があるのかを事前に見極めて、あらかじめそのための補完施策を考える事も重要となります。そのためにはフォースフィールド分析という手法を良く使います。特にチームでこうした討議をしている場合には、ホワイトボードにフォースフィールドマトリックスを描いて、皆で抵抗力、そしてそれを打ち消す推進力を挙げていきましょう。そして推進力についてはそれを増長する方策、抵抗力についてはそれを低減する方策を考えていくのです。
ある課題の解決策が複数あった場合、同じ事を重複して行ったり、それぞれの解決策の効果が打ち消され足りする可能性があります。例えば、新商品開発、コールセンター強化、新規営業員採用という営業強化の施策があった場合、それぞれを個別に行うでのはなく、例えば新商品開発の結果としてその商品を売るための販売方法を決めて、その一つのアクションとしてコールセンターのアウトバウンドや新規営業員の活動などの一連の流れを考えて行く事が大事です。
ある解決策は他の解決策の結果を受けてから行ったほうが良い場合もあるし、ある解決策とある解決策は歩調をあわせて連携しながら行ったほうがよいことも多いからです。
また複数の解決策を実行するために共通の解決策を新たに切り出した方が良い場合があります。
例えば前述の営業強化の例でいけば、新商品のマーケティング戦略策定、という施策が3つの施策をつなぐために核となります。
そして最も重要な事がこの各解決策の実行責任者を決定することです。議論や討議の際には、沢山の夢のある解決アイデアや解決策がでてきますが、その段階ではあえて実行者を決めないで行います。それは自分が実行することがわかると人は、発想が現実的になり、ネガティブになりやすいからです。
しかしながら、最終的には解決策を実行する責任部署や責任者は必要です。この解決策を、熱意をもって辛抱強く実行していく人が、その成功の可否を決めて行きます。もし、既存の組織の中でそうした推進機能が無い場合やそうした人材がいなければ、新たに組織を作って、その責任者に社内外で適任な人間を据えることも重要なことです。
以上のようなサブステップを踏んで、例えば2年間の中で解決策を段階的に実行するための必要資源と必要期間、そして円滑に進めるために考慮された補完的アクションなどが盛り込まれたアクションプランが出来上がります。アクションプランが完成した瞬間は本当ワクワクします!
2.アクションプランの承認をとる
このステップは組織によっても異なると思います。ただ一般的な組織は階層構造になっているため、意思決定できるレイヤーは限られたクラス、通常は執行役員、役員クラスとなります。そうした意思決定者に、アクションプランを説明し、納得の行く形で承認をもらう必要があります。
また組織によって、また解決策のレベルによっては、意思決定は複数の決定者が必要な場合があります。その場合には、日本的な根回しや欧米的な意思決定コミッティーのようなプロセスが必要になるかもしれません。
そうした中で大事なことはアクションプランのワクワク感を皆に伝えるのです。アクションプランは単にスケジュールを並べたものではなく、これによって組織をどう良くしていきたいかというビジョン、熱意を伝えるものなのです。
3.アクションプランを実行するためのプロジェクトを作る
通常、こうした問題解決のアクションの実行は定常業務とは異なるため、ラインの組織が中心として行うのではなく、プロジェクトチームが新たに作られます。また逆に言うと、アクションプラン実行のためには、実行専任のプロジェクト要員が必要となるのです。
現業を持っている人だけで構成された兼任のプロジェクトは大抵上手くいきません。
プロジェクトメンバーの中核となるメンバーは、プロジェクト期間中は専任で働けるような人事処遇が必要となります。
プロジェクトの編成は以下のような標準的な編成の考え方で行うのがよいでしょう。
- プロジェクトリーダー
- プロジェクトマネージャー
- 専門家/有識者
- プロジェクトスタッフ
- 実行スタッフ
プロジェクトリーダーは、前述のアクションプラン全体の実行責任者がつくのが最も良いと言えますが、組織が大きい場合は、実行責任役員の下の部長、次長クラスがつくことが多いと言えます。
プロジェクトリーダーの下のプロジェクトマネージャーは現場のあらゆることをマネージする現場のリーダーです。会議のファシリテーションなども行います。
プロジェクトマネージャーをサポートする、専門家や有識者が必要な場合があります。特に新システムの企画開発などのプロジェクトでは外部のITコンサルタントを、入れる事も有意義だと思います。
プロジェクトの進捗管理やコミュニケーション管理、品質管理、会議の設定などを専門に行うプロジェクトスタッフは必要です。プロジェクトマネージャーが必要なプロジェクトのマネジメント活動を実際に行う人たちです。
そして実際の検討業務や設計業務、または現場への教育などを行う実行スタッフです。この実行スタッフは、その解決策が運用段階に移った際に実業務として行う部署の人間が参加し、この解決策の内容を現場に定着させる役割を担わせるのが良いとされています。これをチェンジエージェントと呼びます。チェンジエージェントが定着の段階に組織の改革推進役として、組織の他の構成員に伝播していくのです。
4.アクションプランの実行をモニタリングする
アクションプランが作成され、然るべき組織の長にオーソライズされ、実行する体制もできたら、いよいよアクションプランが実行に移されます。それは短期間のプロジェクトかもしれませんし、中長期の組織改革プロジェクトであるかもしれませんが、共通な事は、そうしたアクションプランの実行をモニタリングして必要に応じて軌道修正するような機能を作る事です。
その機能は一般に、プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)と呼ばれます。
PMOはアクションプランの責任者を長にしてその活動をモニタリングし、推進を支援する機能です。大抵はプロジェクトのコミッティーという形でプロジェクトの責任者と関連するステークホルダーが集まった上位会議体とそれを支援するPMOスタッフからなります。プロジェクトの推進状況をマイルストーンごとにPMO機能に報告し、その内容がPMOコミッティーで審議され、必要な意思決定が行われます。
例えばシステム開発プロジェクトを実行する際に、そのシステムが影響するステークホルダーとプロジェクト責任者によるPMOコミッティーが設置され、システムが予期せぬ障害で遅延したり、上手くいかなくなることがないようにモニタリングして、必要なリスケジュールなどの意思決定が行われます。
このPMOの役割としてモニタリング以外に重要な事は、組織内にプロジェクトを成功させることが組織の目標であることを伝えることです。
上位の人間が当プロジェクトを成功させることに合意しており、組織内で抵抗や障害となることがないように目を光らせておく事です。実はこちらの効果のほうが重要な場合が多いです。大抵の改革プロジェクトは現場の抵抗に合うため、それを未然に防ぐため、この改革は組織の意思であるということを内外に示す効果がPMOにはあります。
以上のようにアクションプランは実行プロジェクトとそれを見守るPMOによって実行され、結果として当初の問題が解決される訳です。長い道のりですね。でもこうしたことを辛抱強く、また組織全体で行うことがワクワクした組織になる上で重要なのです。