Apple Watchはあくまでも腕時計にこだわった
iWatchという名前になるのではないかと心待ちにしていたApple Watchが発表されました。その話題は、もういいよと読み飛ばそうとしたあなた、少し待って下さい。
Apple Watchに関して、いろんな見方をされている方もいらっしゃいますが、この記事では「期待以上のものだった」という結論にしようかと思っております。さすが、Apple、コンテクストクリエーションが徹底されていました。
ご存知の通り、腕に付けるタイプのウエアラブルデバイスは既に各社が手がけており、iPhoneやAndroidの搭載したスマートフォンと連携するタイプのものは、様々なタイプのものが発売されております。そういう意味では、Apple Watchは後釜になるわけです。
Apple Watchも他社の製品と同じように、各種センサー(赤外線LEDと心拍数を検知するための光センサーなど)が搭載され、iPhoneの子機として動くというもので、その点においては他とは価値は全く生み出していないのです。Appleとしては機能競争は全く避けているのが分かると思います。
もう一度、AppleのApple Watchのページを見てみましょう。
「Apple Watchは、人とテクノロジーの関係が新しい時を刻み始めたことを象徴しています。」
とあります。そして「身近なもの」ということを強調しています。
これは非常に重要なコンテクストクリエーションなのです。テクノロジーを「身近なもの」にするということ、そして、「時を刻む」、つまり、あくまでも「腕時計である」ことにこだわっているのです。
その証拠に、ラインナップの多さです。大きく3種類が示され、かつ、その42mmケースと、38mmケースの2種類用意されています。この2種類のサイズって、ペアウォッチを想像させます。
さらに、リストベルトも22種類。ラインナップとしては44種類用意されていることになります。さらに、時計のホーム画面のデザインの多さをアピールしており、その外見のデザインとしては多くの可能性を秘めていることが分かります。
いろんな人に体験させたい、そのためには色んな場面で、色んな使い方、色んな楽しみ方を提供しなければなりません。これは多様なコンテクストクリエーションが可能なコンテント、つまり製品、サービスでなければならないのです。その解決方法として、今回はAppleは外見のデザインの多様性で勝負に出たということなのです。
このApple Watchのデザインには、マーク・ニューソンが関わったのではないかという情報も流れています。そのような情報が流れるほど、外見のデザインにこだわったのです。
これは、Apple Watchについて、ウエアラブルデバイスというコンテクストで勝負することを避け、腕時計というこれまでありふれていたものの「一選択肢」として、コンテクストクリエーションしたということです。つまり、Appleは、腕時計を新製品として出して、勝負に来たと考える方がよっぽど自然なのです。
機能面ではどこも差別化ができなくなってきた、腕着用型ウエアラブルデバイス業界。コモディティ化が起こっていることをAppleは見抜いたのです。そこで、機能や価格面で勝負することをやめ、もう一度根本である腕時計というコンテクストに立ち戻り、「身近な、パーソナルな、テクノロジー」という新しいコンテクストクリエーションをしたのです。
これがAppleの新しい価値創造なのです。