オルタナティブ・ブログ > あなたが持つカウンセリングのイメージは間違っている!! …可能性が高いですよ >

カウンセリングによくある誤解や質問、また、カウンセリングとはどういうものなのかなどについて執筆します。カウンセリングルームと契約したい、または相談室を作りたいと考えている、もしくは既に契約しているけど実はよく分かっていない企業の方だけでなく、一般の方にも幅広く見ていただけたら幸いです。

「企業内に相談室があっても、他人に入るところを見られたら・・・」

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 企業の方々から多い質問として、「相談室に入るのを見られるのが嫌だったりすると思うんですが、そういった点はどのように対処しているんですか?」といったものがあります。 まずそういう質問が出てくるあたりに若干の意識の甘さを感じなくもないのですが、嘆いていても始まらないので、どういうことなのか説明していきましょう。

 そもそも企業内に相談室を作るというのは、何を目的にしているのでしょう?
 対外的にメンタル不調対策をしているとアピールをしたいのかもしれませんし、メンタルヘルス不調対策として導入するにしても、メンタルヘルス不調を訴える人の数だけ見て「じゃ、対策しないとね」と簡単に考えて、相談室だけ作って後は丸投げすれば、メンタルヘルス対策はバッチリだと思っているのかもしれません。

 もし、企業の方で上記のように考えた方がいたとしたら、このように言っておきましょう。

 そんな考えでは甘過ぎる!

 頭の中で少しでもシミュレーションしてみれば、すぐに分かるでしょう。
 特に社内で宣伝もしない・・・宣伝したとしても今までも記事にしてきたように、誤解や偏見を伴った誤った先入観を持った人が多い・・・そんな中で相談室を正しく利用する人が、どの程度いるでしょうか?

 恐らくはこうでしょう。

 相談室を導入しても利用率が低い
 →メールで相談室を利用するように宣伝する
 →利用率は、ほぼ横ばい
 →業績がちょっと下がった折に、真っ先に切り捨てる候補に挙がる

 はたして、導入しようとしていたのはこのような相談室でしょうか?
 恐らくは、そうではないはずです。

 では、上述のような事態が全て相談室を受け持った相談員の責任かというと、一概にそういうわけではありません。 企業内全体に相談室のことを広めていくにしろ、相談室の利用率を上げるにしろ、そもそも企業の協力が不可欠なのです。

 と言うと皆さん面倒臭がったり嫌がったりするのですが、あなたの組織の人間の、まして、あなた自身の人生がかかっているかも知れないのです。
 面倒臭いとかそういう問題なのか、よく考えてみてください。

 そんなわけで、表題の問題も含めてこのような事態を解決する方法は、以下のような言葉として簡単にまとめられます。

「カウンセリングを有効に活用する社風をつくる」

 カウンセリングは以前にも記事にした通り、企業内にあるからといって仕事の悩みごとに限らず、家庭や私生活の問題を取り扱ってもいいですし、仕事のパフォーマンスを上げるために利用しても何ら問題はないわけです。

 そこでまずは、

 企業の偉い人が相談室を積極的に利用し、実際に自分で体験してみる。
 →そして自らが宣伝塔となるつもりで、企業内相談室をアピールする。
 →企業内教育などでも相談室の有効活用について促す。
 →何か悩んでいそうな人がいた場合、積極的に相談室を活用するよう促し合い、周りもカウンセリングに使用する時間に対して理解を示す体制を作る。

 そうして、「(特に何かある場合には)相談室を使う方がスマートだ」「全員で相談室を有効活用していこう」というような意識付けを行っていき、そういった社風にするよう努力していくのです。

 どうでしょう・・・表題の問題は緩和されているような気がしませんか?
 さらに、全体的な意識が高まれば、個々のメンタルヘルスに対する意識にも変化が現れるでしょう。
 もちろん問題の全てを完璧に絶対的に解決することは無理かもしれませんが、周りの理解の有無で相談室利用へのハードルの高さは大きく変わると思います。

 現実に「相談室の有効な利用」を社風にするには、年単位の時間がかかるかもしれません。 しかし、始めなければ数年後も何も変わってはいないでしょう。
 そして始めるのは、今からでもきっと遅すぎるということははなく、早ければ早いほど良いのです(焦り過ぎは良くないですが)。

 まずは、企業内相談室の設置を考えるときに、自分が利用しないことを前提に考えている時点でおかしいことに気付いてください。 誰のための、何のための相談室なのかを考えれば、「大ごとにするのが面倒臭い」「丸投げしておけばいい」という考えが、いかに愚かであるかが分かると思います。

 もし、自分の所属している組織に相談室があって「ウチはどうなのかな?」と思ったら、利用率や周りの人の意識を確かめてみてください。
 労働者の健康を、企業がどのように意識しているのかが垣間見えるかもしれません。

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