宿命に抗う紙メディアの深い憂鬱
ITmediaを始めとする各メディアによれば、朝日、日経、読売が3社連動でネットを利用して紙メディアである新聞事業を強化する、という。日本の新聞
社が、ニュース配信の会社なのか。それともニュースを載せた紙を売る会社なのか。どちらにアイデンティティを置いていたのか、はっきりと分かるニュース
だ。
アメリカの新聞社のケースは、紙メディアからいま撤退すれば大規模なリストラをせざるを得ないから、当面新聞事業を維持せざるを得ないだけで、基本的には
オンラインメディアのみで生存できるレベルにいかに早くたどり着くか、という感覚でネット事業を強化しているというのが実情だ。
僕が思うに、紙メディアは書籍の場合はまだしも、少なくとも新聞は日々の情報、一日経てば一気にその価値を減じるタイプの情報だけを配信するメディアだ。
雑誌であれば美しい写真があり、アーカイブ性もあるが、新聞紙、というメディアにはそれが乏しい。つまり速報性と携帯性が命のメディアだと思う。あとは、
歴史に裏付けられた、"新聞"という権威だけだ。もしくは僕たちくらいの年齢だと、あの新聞紙が持つ独特の匂いや手につくインクの感じに対する郷愁がある
かもしれない。しかし、いまの学生にはそんなものはないから、ケータイへのニュース配信が、本来新聞メディアが持つ機能の大部分は奪われてしまっている
し、今後もその傾向は進むだろう。そういう宿命的な流れをどう食い止めるのか、これは非常に興味深い。
ちなみに、僕は学生時代から海外生活の時期も含めて、一貫して日経新聞を定期購読している。が、ここ数年は読んでいない。つまり、買ってはいるが、読んで
ない。単に習慣として配達してもらっているが、読んでいない。しかし、日経が配信しているニュースは(ネットで)読んでいるし、かつ
日経新聞に自分や自分たちのサービスのことを載せてもらえれば非常に嬉しく思う。
この矛盾した状態。これが日本の紙メディアとネットメディアの間で割り切れずにいる僕自身の実態だ。
朝日・日経・読売が提携 「ネット活用で紙の新聞を維持」
朝日・日経・読売の3社が提携し、来年1月に共同のニュースサイトをオープンする。「ネットを活用して紙の新聞を維持する」のが狙いといい、3社は新聞販売でも提携した。
朝日新聞社、日本経済新聞社、読売新聞グループ本社は10月1日、ネット上での共同事業や新聞販売などについて業務提携すると発表した。3社のニュースを横断的に読めるポータルサイトを、来年1月にオープンする計画だ。
「ネットを活用して紙の新聞を断固、維持していきたい」(朝日新聞の秋山耿太郎社長)——3社の社長は同日、都内でそろって会見。共同でネット対応を進めながら、紙の新聞を守り、発展させていきたいと強調した。(つづきはこちらから )