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ブランディング論:僕のネーミングのしかた

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ブランディングは、マーケティングと同じように重要で、同じように軽視されやすい分野だと思う。
僕はマーケティングそのものについては経験豊かであるとはいえないが、ブランディングについては一家言持っている。

その中でも、今回は商品のネーミングというエッセンシャルな事柄について触れたい。どんなサービスでも製品でも、名前を与えられなければ始まらない。それがたとえ開発コードであっても。

僕は東南アジアから日本に戻ってきてから、日立製作所 >サイボウズ >フィードパス >サンブリッジとシフトしてきたのだが、その間、数多くのサービス&プロダクトをリリースしている。
それぞれの名称は全て自分で考案してきたのだが、それらを少し振り返ってみたい。

1)  BOXER
正式にはBROADNETBOXERというのだが、日立に入社してすぐに受け持ったプロジェクトを、最初は僕がボクシング(正確にはキックボクシング)をやっていたことから、そう名づけた。同時に、当時(2001年)はブロードバンド元年で、ブロードバンドでビジネスユーザーにサービスを、ということで、Bから始まるBOXERを選んだのである。
たまたまboxer.ne.jpというドメインがとれることが分かったので、そのまま開発コードから商品名とした。BOXERという商標自体は他のメーカーが抵触しそうな分野で既に持っていたため、日立が商標を持っていたBROADNET とくっつけてBROADNETBOXER となった。日立製品ではHiという頭文字をつけるものが多く、それを勧められたが、Hi-BOXER(敗北さ)の発音は許せなかったので、上述のようになった。しかし、通称としてBOXERという名称の方がお客様の間では浸透し、やはりネットでのサービスモデルはドメインの力が強いと再認識した。

2) Sonar
日立のBOXERブランドによる、イントラ向けのFeedリーダー。この開発には秘話があって、ここでは書けないが、実はテクノラティと伊藤穣一氏(Joi)が深く関係がある。
Sonarは、潜水艦の超音波探知機からきている。Feedリーダーも潜水艦もPingをつかう、ということからSonarとした。これも商標ではなくペットネームだが、我ながらFeedリーダーとしてはもっともふさわしい名前なのではと自負している。

3) イントラブログ
社内でBlogおよびFeedリーダーを活用するセマンティックなイントラネット構想をイントラブログ、とした。
最近ではイントラブログは一般用語になってきているが、社内ブログのことだけを言ったわけではなかったので残念。イントラブログという言葉は僕より前には存在しなかった。初めてこの言葉をシックスアパートの関さんに使ったとき、彼は失笑していたのを懐かしく思い出す。

4) Cybozu.net
もともとビジネス情報、とか、サイボウズネットと社内では呼んでいた。しかし、ビジネスポータルとして再構築する際に、cybozu.netをサイボウズドットネットと読ませるようにリブランディングした。ドメインとサービス名を同じにする、というのはネットビジネスの基本でもある。当初は会員制Feedリーダーとしてリリースしたが、後に普通のビジネスポータルへ。いまはサイボウズとサイバーエージェントの合弁会社名となっている。
ちなみに、ブロガー向けにサービスを紹介するイベントを何回か開催したが、それを cybozu.nite(サイボウズドットナイト)と洒落てみた。青野さんが爆笑してくれたのは嬉しかった。

5) feedpath
feedpathをリリースするまでの紆余曲折は、当時の秘話としてここでは書かない。
名称については、実はfeedpath=feedのpath, feedの小径、という名前はすぐに浮かんでいた。.com、.co.jo、.jpの全てのドメインがとれることもよかった。今から思うと、あの頃によく全ておさえられたと思う。
最初から海外戦略を考えていたので、当時サイボウズにインターンとしてきていたフィリピン系米国人の留学生(ハーバードだった)に、feedpathという語感に、ネイティブとして違和感がないか?と訪ねたところ、Great!と答えてくれたので、自信を持った。Sonarほど洗練はしてないかもしれないが、テクノロジーと理想を表現するよいネーミングだと思っている。

6) modiphi
そして、いよいよ今月中にリリースを予定しているmodiphiについてだが、もともと条件として、
1. .com、.jp、.co.jpがおさえられること
2. 恵比寿あたりの美容室の名前や、デニムブランドになりそうなこと
を考えてつけた。

実は最初にφ(ファイ)というマークを使うことを考え、-fy(「…にする」, 「…化する」の意の動詞語尾)がつく動詞を探した。数年間暖め続けてきたアイデアを具体化するにあたり、名称をいろいろ考えていたのだが、たまたまそのときにしていた腕時計のマークが目に止まったのだ。その時計はBaume & Mercierというブランドなのだが、文字盤にΦマークが飾ってあったのである。Φ(PHI)はパーフェクトバランスを示し、そしてギリシア文字の21番目だ。

そこで、Webをよりきれいにし、Feedを活性化する、という動詞、-fy を PHIに置き換えればいい、と考えた。であれば、modifyをもじってmodiphiとしよう、と思い立ったのである。調べてみると、.comも.jpも.co.jpもとれる。また、デニムのブランドにノティファイとあるように、モディファイは語感としてなかなかに美しい。そこで、modiphi、としたのである。


また、実はmodiphiのmには、まだ公表してはいないが、僕としてはFeed同様こだわっているテクノロジーがあり、この頭文字でもあるのだ。テクノロジーぽさを感じさせず、暗喩として意味を付与していく。この基本線を守りつつ、満足する名称にたどり着いた、と納得できる結論だった。



僕は、新しいサービスモデルを考えるとき、必ずネーミングを先に行う。
自分が生み出すサービスは自分の子供と同じだ。だから、自分がどう呼ぶかも大事だし、人からどう呼んでほしいかを真剣に考える必要がある。名前を付けた瞬間に、その名前と実体は一つモノなり、一人歩きし始めるからだ。名前は一種の呪文なのである。

好きになった人の名前が、どうにもその人に似合わなかったとしたら、あなたはほんの少しだろうけど悲しい思いをするはずだ。
クールなサービスを生み出そうと思えば、やはりクールなネーミングをするべきだ。美しい花には美しい名前が似合う。結果として外れ、ということもあるだろう、でも、サービスの生みの親として、あるいはブランド構築の担当者としてならば、少しでも人に愛される名前を考えることが、すべての始まりになる、と思うのである。





  generated by feedpath Rabbit
Comment(2)

コメント

ボウズマン

このご時世にブランディングやマーケティングを軽視している人(特に経営者)がいるとは信じ難いですが、
確かに目先のことで一杯一杯になっている人々も多いんでしょうね。

小川さんが歩んできた歴史が垣間見れました。深いですね。
当初から起業家精神旺盛だったんですね。ネーミング1つとっても紆余曲折があったとのこと。
無から有を生み出し、それを育ててくのはとても大変なことですね。子育てに相通ずるものがあります。

それにしても、modiphiの「M」気になりますね。
小川さんで「M」と言えば、ズバリ「Microformat」かな?読みが浅いですかね。
まあ、いずれにせよ、セマンティックWebとFeedとの架け橋となるのが「Microformat」だと信じています。

トール

非常にストレートな名付け、または名決めであって、マーケティングに精通していない上でのネーミングとは、こういうものかと思った。
1970年代を彷彿させるシンプルさで、広告代理店がこれらの案を出していたら、ひとつも決定をみないだろうと感じる。

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