EIR (Entrepreneur in Residence = 客員起業制度)という制度について
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小川さんは起業準備中といいながらなぜVC(ベンチャーキャピタル)に入社したのか?とよく質問される。実は僕は、サンブリッジが用意してくれた EIR という制度を利用して起業準備をしているのだが、EIR自体がまだ世間的にはなじみがないらしいので、以下それを説明してみたい。
EIRとは、比較的経験豊かなビジネスパーソンが起業する際に有効となる仕組みであり、昨今注目されつつある手法だ。いわばWeb2.0時代の起業スタイルであり、起業2.0の典型的な手法になる気がする。
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What is an EIR?
■ 二つの意味を持つEIR
EIRとは、Entrepreneur In Residence(アントレプレナー・イン・レジデンス)と、Executive In Residence(エグゼクティブ・イン・レジデンス)という二つの意味を持つ略称だ。一般的には前者、すなわちEntrepreneur In Residenceのことを指していることが多い。日本ではまだ馴染みがないが、米国シリコンバレーでは、比較的よく知られる制度である。
どちらの略称においても共通しているIn Residenceとは、文字通り「住み込み」ということであり、Entrepreneur(起業家)あるいはExecutive(エグゼクティブ)が、一つの企業の中に籍を置いている、という状態を意味する。
■Entrepreneur In Residenceとは
まずEntrepreneur In Residenceの意味を説明すると、以下のようになる。
日本語では、客員起業制度と訳されることが多いと思うが、起業家がまず特定の企業に正社員もしくは契約社員として入社し、その企業の中で起業準備をする。
起業家からすると、起業するまでの間は給料を勤務先の企業からもらうことができるので、起業準備中の生活の心配をすることなく、事業立案に集中することが可能だ。
この場合のEIRは、むしろ社内ベンチャー制度に近い。社内ベンチャー制度は通常、企業がビジネスプランを持つ社員に新規事業を興させ、それを子会社として法人化した際に、社員を経営者に任ずることになる。この場合、社員にはインセンティブとしてストックオプションなどの成功報酬を約束するのが普通だ。(とはいっても、この約束が、なぁなぁだったり、後回しにされることが往々にしておこるので、社内起業家はモチベーションを失うことになりやすい)
社内ベンチャー制度と異なるのは、客員起業としてのEIRは、ビジネスプランとその考案者を社内ではなく、社外から募集するという点だ。当然、入社時に成功報酬などに関する契約が為されるので、起業家は安心して起業準備に集中できる。
■Executive In Residenceとは
対して、Executive In Residenceの場合は、主に経営経験者、つまり文字通りのエグゼクティブをまず招聘する。エグゼクティブ本人には、当初ビジネスプランがない場合も多いが、社内あるいは社外から有望なビジネスプランや、事業そのものを見いだしたときに、ストックオプションなどの報酬制度を与えた上でその経営にあたってもらう、というスキームがこの場合のEIRとなる。
客員起業としてのEIRがビジネスプラン+起業家という組み合わせであるのに対し、客員経営者としてのEIRは経営者候補として予め人材を確保する、という考え方であると言える。
いずれにしても、制度としてのEIRには厳密の区別があるわけではなく、とにかく成功報酬の取り決めをしたうえで外部から人材を確保し、新規事業を興させる、というシステムであると考えればよい。
■EIRは起業家と企業の双方にメリット
現在の主力事業での事業拡大が難しいと思われたり、新しい市場への進出を考えるときに、たとえ大企業であっても、意外に社内にそうした人材はいないものだ。資金面や人事や総務、あるいは開発スタッフなどのリソースがあっても、リスクテイキングや、ビジネスモデルを考えだせる人はなかなか見つけられないのが実情だろうと思う。その意味で、起業家や経験者を、外部から取り込むというプランは、企業側にもメリットがあるだろう。
VCからすると、通常有望なベンチャーを見つけてそこに投資するにしても、マジョリティをとるのは難しく、比較的高いバリュエーションで投資することになる。創業したてのベンチャーに対するシードマネーであれば一株5万円で投資できるかもしれないが、成功確率が低いことは覚悟しなくてはならない。
これに比べると、EIRの場合は、ビジネスプランに加えて、ある程度経験や実績を持つ起業家に対して投資できるわけだから、創業したてのベンチャーであっても成功確率は比較的高くなっている。さらに一株5万円で相当なシェアを確保できることは大きい。
起業家にとっては、逆に自らの持ち分が小さいことで、仮に上場できてもリターンが小さくなるし、悪くすると経営権を剥奪されるリスクも背負うので、EIRを利用するデメリットは必ずしも小さくないが、創業当初の資金や生活の保証を受けられるうえ、VCからの全面的な支援(開発リソースや事務など)を期待できることで、事業に集中できるというメリットは捨てがたい。結局のところ考え方一つだし、VC側を信頼できるかどうかなのである。
Web2.0時代は情報の粒度がさらに細小化していく傾向にあり、よりコンパクトでアジルな組織を持つ企業が頭角を示していくだろうと思う。30代以上の起業家であれば、学生ベンチャーのような気軽な創業はなかなかできないと思うが、EIRのような制度を利用することで、リスクを少しでも軽減しつつ(もちろんゼロにすることは誰にもできない)、新しい事業を起こせるとすれば、一考に値するのではないか。
というわけで、僕はFeedBurnerの村井さんの引き合わせでサンブリッジの 祐川京子さんと知り合い、その後 現サンブリッジ社長の永山さんからこのEIRを提示いただくことによって、Feedpathを離れる決意をしたのである。
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What is an EIR?■ 二つの意味を持つEIR
EIRとは、Entrepreneur In Residence(アントレプレナー・イン・レジデンス)と
どちらの略称においても共通しているIn Residenceとは、文字通り「住み込み」ということであり
■Entrepreneur In Residenceとは
まずEntrepreneur In Residenceの意味を説明すると、以下のようになる。
日本語では、客員起業制度と訳されることが多いと思うが、起業家がまず特定の企業に正社員もしくは契約社員として入社し
起業家からすると、起業するまでの間は給料を勤務先の企業からも
この場合のEIRは、むしろ社内ベンチャー制度に近い。社内ベンチャー制度は通常、企業がビジネスプランを持つ社員
社内ベンチャー制度と異なるのは、客員起業としてのEIRは
■Executive In Residenceとは
対して、Executive In Residenceの場合は、主に経営経験者、つまり文字通りの
客員起業としてのEIRがビジネスプラン
いずれにしても、制度としてのEIRには厳密の区別があるわけではなく、とにかく成功報酬の取り決めをしたうえで外部から人材を確保し、新規事業を興させる、というシステムであると考えればよい。
■EIRは起業家と企業の双方にメリット
現在の主力事業での事業拡大が難しいと思われたり
VCからすると、通常有望なベンチャーを見つけてそこに投資するにしても、マジョリティをとるのは難しく、比較的高いバリュエーションで投資することになる。創業したてのベンチャーに対するシードマネーであれば一株5万円で投資できるかもしれないが、成功確率が低いことは覚悟しなくてはならない。
これに比べると、EIRの場合は、ビジネスプランに加えて、ある程度経験や実績を持つ起業家に対して投資できるわけだから、創業したてのベンチャーであっても成功確率は比較的高くなっている。さらに一株5万円で相当なシェアを確保できることは大きい。
起業家にとっては、逆に自らの持ち分が小さいことで、仮に上場できてもリターンが小さくなるし、悪くすると経営権を剥奪されるリスクも背負うので、EIRを利用するデメリットは必ずしも小さくないが、創業当初の資金や生活の保証を受けられるうえ、VCからの全面的な支援(開発リソースや事務など)を期待できることで、事業に集中できるというメリットは捨てがたい。結局のところ考え方一つだし、VC側を信頼できるかどうかなのである。
Web2.0時代は情報の粒度がさらに細小化していく傾向にあり、よりコンパクトでアジルな組織を持つ企業が頭角を示していくだろうと思う
というわけで、僕はFeedBurnerの村井さんの引き合わせでサンブリッジの 祐川京子さんと知り合い、その後 現サンブリッジ社長の永山さんからこのEIRを提示いただくことによって、Feedpathを離れる決意をしたのである。
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