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2005年を振り返って:個人的10大キーワード

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2005年は、95年12月8日にビル・ゲイツがインターネット宣言(MSの全ての製品をインターネット対応させていくという、MSの戦略転換メモの発表)をして以来、10年目となる節目の年であった。

ところが皮肉なことにその2005年は、インターネットにおける主役として君臨するのがMSではなく、Googleであることが誰の目にもはっきりと映るようになったことで記憶されるべき年になったように思う。
そのことを示す為に、僕が個人的に選んだ2005年のIT系10大キーワードを以下に挙げてみることにしよう。

10位:Ajax

まずはAjaxである。ブラウザ上で非常にリッチなインターフェイスを提供するための技術のことで、Asynchronous JavaScript(非同期JavaScript) + XMLの略称なのだが、実のところ名前は後付け(笑)。命名者はAdaptive pathというWebコンサル会社。昔からある技術に過ぎないのだが、異なるブラウザでも問題なく動作させることが難しいうえ、作り込みが面倒なので、誰も試みようとしなかった。それが、Gmailという驚異的な操作性を持つWebメールが登場し、その後のGoogle MapsやGoogle Suggestといった一連のGoogleツール群が、次々と圧倒的に見事な操作性を見せてくれたことによって、多くのベンチャーが追随するようになったわけ。ある意味、Web2.0時代で一番ユーザーに分かりやすい部分だろう。結果として、ZimbraやWritelyのようなMS挑戦者も生むことになっている。

9位:RSS/Atom Feed
次にくるのはRSS/Atom Feedだ。FeedはWebサイト、Blogなどの更新情報を通知する為のメタデータであるとともに、世界で最も普及したWebサービス(Web上のプログラムとプログラムを連携させることと考えてほしい)であり、RSSやAtomはそのFeedの種類を示すとだけ覚えておけば十分だ。あとはFeedがXML言語によって書かれていることも知っておくといいだろう。

Feedの普及は、Googleのパーソナライズド・ポータル(個人ポータル)やMSのStart.com、ひいてはWidows Live!(live.com)のような次世代メジャーポータルの必須技術として採用されている(Ajaxも同じだ)。更に、GoogleとOverture(Yahoo!)に事実上支配されつつあるネット広告の新しいチャレンジャーたちが、いわゆるRSS広告という分野を開拓しようとしている。また、Blog検索やFeed検索のようなメタデータ検索という技術にも応用されつつある。Ajaxに比べると少々地味な黒子的存在なFeedだが、Web全体の質的変換(Web1.0→Web2.0)を促している、非常に重要な要素である。

8位:iPod & iPod nano
iPodがビデオ対応したことは、iTMSでのテレビ番組配信の途を拓き、ビジュアルアーカイブの再利用がビジネスになることを証明した。更に、iPod nanoはいったんソニーの新ウォークマンにシェア奪還のチャンスが見えかけた市場を一気に引き戻し、完全にマーケットリーダーの地位を不動にした。このことによって、AppleのIT家電メーカー化を加速したと思う。

7位:Windows Live!
MSの最後のあがきとも英断とも、どちらともつかないパンドラの箱。現時点では、Googleパーソナライズドページのパクリにしか見えないLive.comからしか、その内容を推し量れないが、OS(Windows)とOfficeというドル箱を死に体にしかねないと言う点で、取り返しのつかない一線をMSが超えつつあることを意味しているサービス。
もちろん、Windows VistaやIE7.0の成功とリンクすれば、Googleと伍して戦えるサービスになる可能性はある。

6位:Gmail
GoogleのハイテクWebメール。Ajaxの流行の兆しを生んだ記念碑的なサービス。
なぜ今更Gmailを6位に挙げるのか?と不審に思う人も多いだろうと思うのだが、今年こそGmailが検索に次ぐGoogleの中核サービスになったと僕は考えている。
そもそもGmailはGoogleの数ある自社サービスの中で、珍しく独自の名称を戴いている変わり種だ。
 例:Google Talk、Google Local

Gmailは、Google TalkやGoogle Base、パーソナライズド・サービスなどに必要な共通IDとして利用され始めており、Gmailのアカウントを持つことがGoogleの全てのサービスを快適に使う為の条件になってきている。それが明確になったのが2005年である。

5位:Mashup
Web2.0系のキーワード、Mashup(マッシュアップ)。Webアプリケーションのハイブリッド化(複合化)あるいは複数のソースからコンテンツを組み合わせていくWebサイトやWebアプリのことを指す。このMashupはそもそも音楽業界、特にそのHipHop系のDJ用語だそうだ。複数の曲をリミックスし、混ぜ合わせて新しい曲を作る、ちょっとアンダーグラウンドな響きを持つ手法をMashupというようになった。その結果、今ではWebサイトやWebアプリの構築の手法であったり思想であるかのような意味を持ち出しているのである。オープンソースコミュニティ的な”気分”がそれを後押ししていると言っていい。

既存のプログラムや外部APIを組み合わせて新たなサービスを作り出せることから、比較的ローコストで起業したり新サービスを生み出せる。これがWeb2.0的企業達の特徴となっているのである。

4位:Web2.0

Webは、ここ数年様々な事象の発生により、その環境変化が起きている。例えば、検索性が上がり、これまでとは比べ物にならないくらい膨大な情報を容易に入手できるようになっているし、Long Tailのような現象が顕現化したおかげでリアルなマーケットにはありえないユーザー行動が見られるようになった。
(従って、そのユーザー行動に即したサービスを提供できる、新しい環境に自分をフィットできる企業が台頭してくることになる)

このような現在見られる傾向と今後数年間にわたって一層進むと思われる環境変化を、総称してWeb2.0と呼んでいる。つまり、Web2.0とは、数年前からはっきりと兆候を見せ始めている、新世代のWeb上の環境のことなのである。

この環境変化を呼び込んだのはBlogやSNSだったり、GoogleやAmazonなどの巨大ネット企業の数年来の行動の結果だったりするが、それはともかく、Web2.0をどう呼ぼうと、この環境変化は事実であり、全ての企業やユーザーがその認識を持つべきなのである。

3位:Google Base
Googleの検索アルゴリズムに沿った形のデータをWeb上に発信できるような、Webページ作成フォームのサービス。eBayのような物々交換や求職情報などのマッチングサービスを駆逐しかねないという一面を持つと同時に、Web上のデータフォーマットを全て”Google的”にしようとする野心的な試みである。

サービスの普及の速度はさほど早くないように見えるし、日本語サービスがまだ無いので日本ではそれほど大きな話題になっていないが、2005年にGoogleが投じたサービスの中では最も恐るべきものであると僕は思う。

来年のキーワードになるかもしれないモノの一つに、Structured Blogging(Blogのエントリー内容自体も構造化しようという試み)やMicroformats(同じようにあらゆる情報をオープンなタグで表現しようとする試み)があるが、これらはGoogle Baseへの対抗策として注目されてくるものだ。

2位:iTunes Music Store
Webではないが、Web2.0的なWebサービスとして大成功した、最もクールなサービスである。iTMSがなぜWeb2.0的か?という点については僕のこれまでのエントリーを見てもらいたいが、ハードウェアとソフトウェア、そしてWebサービスを結びつけた最高のシンジケーションサービスであり、保守的であった音楽業界に対する黒船効果は日本版iTMSが生まれた今年こそ、我々にとって衝撃的であったはずだ。

1位:Google
やはり最後はGoogle、という存在を持ってこざるを得ない。他はサービス名だったり商品名なのに、ここで企業名を出すのはおかしいと思われるかもしれないが、Googleは既にそれ以上の存在である。彼らの一挙手一投足がインターネットに関わる全ての企業、広告業界、ありとあらゆるメディアに対して深刻な影響を与えるようになってしまった。それが悪いことであると言っているわけではない。MSからの影響を受けるということは、これまでであれば悪夢であったが、Googleの動きをフォローすることによって何か新しい事業やサービスを生み出すこともある。Googleは我々にとって脅威であり啓示となる、言ってみれば荒ぶる古代神みたいなもので、敵でもなく味方でもなく、畏れるべき存在なのだ。それほどの”大きさ”になったのが2005年のGoogle、だと思う。

これが今年最後のエントリーです。
来年早々にでも、2006年のネット業界がどう動くかを予測してみたいと思う。

皆さん、良いお年を。

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