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組織、マネジメントの理論とその実践を、スポーツ・学校を通して考える。

本物に触れる〜3

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アメリカ一人旅は貴重な経験だった。「地球の歩き方」・グレイハウンドの長距離バス・YMCA・バーガーキングは当時のバックパッカーの定番だった。

ロッキーが走った階段を駆け上り、キーウエストの夕陽に感動し、グランドキャニオンの大自然に圧倒された。どこへ行っても親切な人たちに声をかけられ、「行くところがないなら今晩、泊まりにおいで」と泊めてもらい食事までご馳走になった。別れ際には「困ったらいつでも電話しなさい」と電話番号を渡された。家の子供たちと一緒に遊び、泣く泣く別れた。

国籍なんか関係なく本当にフレンドリーな国だった。真夜中にバス停につき、そこで一夜を過ごそうとしていたとき、60歳くらいのおじさんに声をかけられた。「ホテル代を節約したいから、二人で一緒に泊まらないか」と誘われ、普通、断るのかもしれないが同じ部屋で一晩過ごした。おじさんは遠く離れている息子を訪れる途中だった。自分の昔話を見ず知らずの日本の若者にしてくれた。こんな経験もめったにないだろう。もう二度と会うことのない人たちとの出会いだった。危険な場面も何度もあった。

日本にもまだ見ていない素晴らしいものがたくさんある。外国の経験だけが本物だと思うのは間違いだ。ただ、海外での体験が強烈な印象として残るのは、危機感・危険感を感じながら体験しているからだろう。誰も頼る人がいない外国では神経を張り巡らせていないと身を守れない。だから五感が研ぎ澄まされる。そういう状況で何かを見るのと、自国で安全感・安心感をもって何かを見るのは違う気がする。逆に、何かをゆっくりと堪能したいなら安心な環境が必要だ。

もっともっと、本物に触れていきたい。

外国に行こうとする学生が年々減少しているらしい。本当に残念だ。「頼るものは自分しかいない」という状況を経験してもらいたい。それが後の人生の大きな財産になる。今のままでも年数を経れば、いつかは人生経験は豊富なものになるだろう。しかし、黙っていてもできる経験と、飛びこまなければできない経験ではその質は全く違う。若者たちには「本当に豊かな人生経験」をしてもらいたい。「人生経験が豊富」と言うとき、それが本物であることを願うばかりだ。

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