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組織、マネジメントの理論とその実践を、スポーツ・学校を通して考える。

本物に触れる〜2

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ニューヨークを歩いている時、カーネギーホールの前を通りかかった。

そこには「Seiji Ozawa, Boston Symphony Orchestra」のポスターがあり、明日が演奏会になっていた。一番安い7ドルのチケットを買い、カーネーギーホールでの最高の演奏会を楽しみにしていた。小澤征二さんを見るのも初めてなら、ボストン交響楽団がどんな高いレベルかも知らない門外漢にも、それが超一流であることは分かっていた。

当日、カーネギーホールに入った瞬間、本当に驚いた。そこは美しくドレスアップした紳士と淑女の社交場だった。会場前のホールには多くの有名人たちがいたに違いない。きらびやかな場所だった。自分は薄汚い服に、リュックを背負ったバックパッカーの格好。そんな人間が来るところではなかった。あまりにも場違いで、「お前なんか来るところじゃない」という冷たい視線を浴びながら会場に入った。会場の座席案内の係員にも、口笛で座席を指示される。犬のような扱いだった。

音楽がよくわからない自分にも、「世界の小澤」の指揮の迫力には引き込まれ、その音の壮大さに感動していた。もっと音楽を知っていれば、もっと大きく深い感動があったのだろう。世界の最高の舞台で、最高の指揮者による最高の音楽。こんな素晴らしいものに、偶然触れられたこと。本当に幸運だった。芸術や音楽は人生を豊かにしてくれる。

フランスでは芸術の分からないような政治家は尊敬されないという。

犬のように扱われたが、人間らしく感動してホールを後にした。

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