市場からの資金調達がごく普通のことになった今
このところ「C言語入門」「独習PHP」「人月の神話」といった開発系の本と並行して、財務、資本政策、会計などの本をちまちまと読み進めています。
「ベンチャーキャピタリストが進める 成長するための株式公開入門」(中桐則昭著、日本能率協会マネジメントセンター)はすごくいい本です。この方はいくつもの株式公開案件を手がけてきており、経験談として「これはこういうものだ」という言い方ができる、そしてそれに非常に説得力があるという、ありがたい方です。特に1999年から始まった新興市場の案件を多く経験されているようで、要所々々にあるアドバイスが的確です。
経営者のみならず、自社がゆくゆくは株式公開をする可能性のある企業に勤務している社員の方にも様々な示唆を与えてくれる本だと思います。
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J社長に限らず、苦しい局面を切り抜けて成功のチャンスをつかむ経営者に共通して見られる特徴は、足元で大変な苦労をしているにもかかわらず、もっといえば、明日どうなるかわからないという状況にあるにもかかわらず、常に次の一手を考え、長期的な戦略を考えているということです。しかも、後から振り返ってみて「なぜあの時あのような誤った決断をしたのだろうか」と悔やむことがなく、逆に「なぜこのような的確な判断ができたのだろうか」と不思議に思うような判断がなされているということです。
ラインマーカーでグラウンドにラインを引くときに、足元を見ながら引くとまっすぐな線が引けず、遠くに目標物を定めて、それを目指して進むとまっすぐな線が引ける、というのと同じように、経営もいくら足元が大変だからといってそれに注意を奪われてしまうと適切な判断が下せません。足もとの大変さはそれはそれとして、常にもっと先の大きな目標を見据えて進めば適切な判断につながる、ということでしょう。
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あるケーススタディの中の記述です。
私が「IPOという選択」という本を書いた頃には(2000年)、ベンチャー企業が市場から資金を調達するということは、かなりタブーに近い見られ方をしていました。現在では様相ががらりと変わっていますね。時の変化を感じます。この間、様々な方や様々な企業がチャレンジし、道をつけ、ノウハウが蓄積され、伝承されてきたわけですね。こういう手軽に入手できる書籍で、このように明快なアドバイスが受けられる現在は、恵まれていると言うべきでしょう。