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ヴィジュアル、サウンド、テキスト、コードの間を彷徨いながら、感じたこと考えたことを綴ります。

ACジャパンのTV CMに、困惑している理由

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私はTVをほとんど見ない。TV大好きの相方にチャンネル権があるからだ。ただ、地震発生からこのかた、夕食時には、ニュースにくぎ付けである。ところが、そのニュースの30分の間にも、ACジャパンのCMが繰り返す。
CMが切り替わるまでは、ニュースはネットでチェックして、TVは遠ざけようと思っている。

ACジャパンのCMの次の要素のうち、「私が困惑しているのは、何なのか」?

あいさつの魔法
  ・企画
  ・アニメーション
  ・CMソング
子宮頚癌検診啓発
  ・企画
  ・ナレーション
  ・映像
  ・音楽
見える気持ちに
  ・企画
  ・ナレーション
  ・映像
  ・音楽
ACのサウンドロゴ

突き詰めて考えてみると、「あいさつの魔法」のCMソングに行き着く。
内容は悪くない。だが、音は耳栓をしていても聴こえてくる。

他のCMの、他の要素が問題なのではない。それらによって良い効果が得られることも否定しない。だが、その効果と「あいさつの魔法」のCMソングの肯定とは、別の問題である。

では、なぜ私は、あのCMソングに、困惑しているのか。
原因は「魔法の力で、楽しい仲間が」のフレーズの音にある。

多くの日本人にとって虫の音は季節を感じる音だが、ガラスを引っ掻く音は不快である。
だが、多数の感覚が同じでないこともある。何割かの人にとっては好ましいが、何割かの人にとっては受け付けられない音がある。ボーカロイドの声などは、これに該当するように思う。

私は、巡音ルカで曲を作るとき、ボカロ特有の声から遠ざかる方向へ、個々のノートのプロパティや、エフェクトやイコライザを入念に設定する。
それでも、音の高さ、長さ、強さ、歌詞(発音)など、ある特定の条件が重なった時に、心地よくない音が響くことがあり、キーや曲の一部変更で対処している。

くだんのCMソングでは「まほうのちからで、たのしなかまが」の青色太字の音が、もしこれをルカに歌わせているのならば私は設定を調整するであろう音に、似ているのである。
詩も、曲も、歌も、悪くはない。ただ、ある特定の条件が重なった時の音に、何かしら、ひっかかりを感じてしまうのだろうと思う。

もし音響の専門家が解析したら、一部の人には辛く感じられる特定の周波数が検出されるとか、あるいは一部の人には脳機能イメージングで異なる反応が見られるとか、そういったレベルの問題があるような気がする。
CMのクオリティや頻度の問題というよりも、音を解釈する機能の問題だろうと思う。

私は今はコンシューマー側の人間だが、デザイン事務所に勤務していた8年間は広告宣伝物を企画制作する側の人間だった。ACジャパンの従来のCMには感銘を受けるものも少なくなかった。今回の自分の困惑ぶりには、自分自身、驚いている。
ACジャパンは、広告で社会と公共の福祉に貢献することを目的とする団体であるので、不快と感じる人が一定程度いるのなら、その原因を追究して、さらにより良いCM作りにつなげてほしいと思う。

2つ前の記事に書いたが、ぜひ、早急に、被災者宛てメッセージではなく、被災者からのメッセージのCMを見たいものである。
被災者、とくに避難所暮らしの人たちには、全国放送の15秒を使えるなら、それを利用して伝えたいことが多々あるはずだ。
伝えたくても方法がなく、もどかしい思いをしている人たちがいるはずだ。
それがニュースではなくCMであっても、我々の声を被災者に伝えるよりも先に、被災者の声を傾聴できれば、と願うばかりである。

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