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新駅名「高輪ゲートウェイ」が開業後に定着するたった1つの理由

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プチ炎上的に話題になった、JR新駅の名称、「高輪ゲートウェイ」。公募したのに 高輪、芝浦、芝浜 といったトップ3で期待された名前を外して130位のキラキラネームを選ぶとは何事だ!という嘆き的な話題が広がりました。しかし、この駅の成り立ちを見ると「高輪ゲートウェイ」という名前がついた理由は明白です。

新駅名「高輪ゲートウェイ」の名前は、JR東日本による、再開発地域「グローバル ゲートウェイ 品川」の最寄り駅だから

JR東日本による再開発の概要資料「品川開発プロジェクトにおけるまちづくりの基本概要について」(PDF)の表紙や解説資料の上部に、「グローバル ゲートウェイ 品川」は登場します。
Global-gateway-shinagawa.png

そもそも駅を作るには多大な費用がかかります。多くの乗降客が見込まれる山手線の駅となればなおさらです。駅を作ることで速達性が落ちることもあり、それなりのメリットがないと膨大な本数がある山手線に新駅はできません。

そんな多大な費用がかかる新駅をJR東日本が作る理由、それは、自社が保有する再開発地と駅とあわせて13ヘクタール(東京ドーム2.5個強)という巨大な再開発を行いその開発利益で元が取れると算定しているからです。駅の場所自体、国道や地下鉄泉岳寺駅に近い西寄りではなく、東寄りに作り駅前広場的なスペースを再開発地に作る構想です。

Gateway-shinagawa-station-map.png

東京ドーム2.5個強と書きましたが、再開発地域は縦に細長く、リニア新幹線の開業を控えた品川駅とも一体化した地域として街づくりが行われることが地図を見るとよく分かります。駅前の景色も「エキマチ一体開発」をうたっており、これまでにない、駅と街を一体化させた開発を行うという意気込みをJR東日本は持っています。
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このような、新しい街づくりとペアで駅を作るというのは実は初めてのことではなくJR東日本でも「越谷レイクタウン」という先例があります。奇しくも地名にニュータウン名をくっつけたという構造は同じです。「東越谷」だと、地名と駅の場所が違うとかいろいろ事情はあったのでしょうが、ニュータウンの街区の名前を駅に盛り込むというのは、わかりやすいネーミングでしょう。

なぜ、人々は「高輪ゲートウェイ」という駅名に違和感を覚えたのか?

逆に、問うべきは、「高輪ゲートウェイ」という駅名に人々が違和感を覚えたのか?でしょう。小田嶋氏は「命名責任からランナウェイしたあの駅名」:日経ビジネスオンラインとネーミングを批判しています。公募という方式を使うことで命名責任から逃げたという批判なのですが、高輪や芝浦などの伝統的地名しか想像できなかった小田島氏は情報収集力が欠けているのではないでしょうか?テレビ東京「ガイアの夜明け」に出演したJR東日本の社長は、未来感のある名前的な命名へのヒントを語っていました。その語り口には新しい街を作るのだから、従来型の地名だけではない新しいネーミングが必要だ という覚悟と確信があったように、思えます。

結局のところ、ほとんどの人は、新しい街づくりがされることを知らないし、知っている私も、その新しい街をまだ見ていません。 2020年の仮開業の先、リニア新幹線駅が開業した品川の後背地に、「高輪ゲートウェイ」という近未来的な名前にふさわしい街ができたときにはじめて、私達はその駅名の意図を知ることになるでしょう。

人口減少とか閉塞感や縮小均衡が語られることが多い日本に、明るい未来へ変えようという取り組みがあり、その願いというか、約束としての、キラキラした駅名がつけられたことを多くの人が納得し、喜べる日が来ることを期待しています。

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