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データ就活のすすめ:世間のイメージより新卒就職偏差値ランキングや従業員あたりの売上高を活用しよう

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就職四季報とかも発行している、新卒就職に大きな影響をもつ東洋経済新報社のWebサイトに、「入社が難しい有名企業トップ200ランキング」という、記事が載りました。入社が難しいという見出しですが、調べ方は、採用された大学の入試偏差値を加重平均したものです。文系と理系はそれぞれの偏差値が混ぜられているので、理系比率が高い地方国立大学の数字は低く換算される傾向がでるため理系採用が多い製造業は低くランクされる傾向があるようです。

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大学ブランドでの選別という現状を肯定、固定化してどうするという批判もみましたが、これは、業界・業種別の従業員数や売上ランクと比べると、仕事の内容というか従業員の希少性が相当違うことが見えてくる重要な材料でしょう。

記事ではトップ10にすべて入った五大商社とそれ以外の違いや不動産業界での状況が解説されています。

3位は不動産の三菱地所だ。他の不動産の会社も上位に進出しており、三井不動産14位、東京建物16位、東急不動産29位で、入社難易度は高い。採用人数が少ないうえに、難関大学からの採用が多いと、このような高い入社難易度になると見られる。

ここで従業員数あたりの売り上げ金額を業界内で比べると新卒採用の質というかその会社での働き方の違いが見えてきます。

売上ランク 企業名 売上高 従業員数 従業員数あたり売上
1 三井不動産 15,679 億円 1,332 人 11.8 億円
2 飯田グループHD 11,360 億円
3 三菱地所 10,094 億円 737 人 13.7 億円
4 住友不動産 8,549 億円 5,302 人 1.6 億円
5 東急不動産HD 8,154 億円
6 大東建託 7,748 億円 10,256 人 0.8 億円
7 野村不動産HD 5,695 億円
8 レオパレス21 5,114 億円 6,413 人 0.8 億円
9 大京 3,348 億円 790 人 4.2 億円
10 東京建物 2,600 億円 571 人 4.6 億円

https://gyokai-search.com/4-hudosan-jyugyo.htm https://gyokai-search.com/4-hudosan-uriage.htm から筆者作成。空欄は先サイトにデータがなかったもの)

従業員一人あたりの売上高とかを概算してみると、三菱地所の効率性というか少ない人数で売上を上げて、新卒採用も高偏差値大学から採るという状況がうかがえるでしょう。「丸の内の大家三菱地所」という強烈なブランドを持つ三菱地所に対して、三井不動産も従業員あたりの売上高ではそれほど遜色ないことが見えます。一方、一般的な企業イメージは、売上規模に近いので、旧財閥系の名前を冠して業界4位の住友不動産ですが、従業員数の多さというか一人あたり売上の小ささから仕事の内容が変わってくることが想像できます。むしろ、実は旧安田財閥の東京建物の方が従業員あたりの売上高が高く、仕事の内容的には、三井不動産、三菱地所に近そうで、新卒での採用大学偏差値が高いことにも繋がりそうです。

大学生へのメセージ:世間のイメージに流されず実質的な仕事の構造に注目して会社を選ぼう

自分もそうだったのですが、世間のイメージがいいとか、下位とはいえ業界大手の一角、という印象で会社を選んでしまうことがよくあります。海外赴任とか地方転勤の頻度や給料などある程度想像がつくこともありますが、なかなか分からないものです。今の時代、どっちみち就職に失敗してもやり直せるので行きたい会社にまずは行くでいいとは思いますが、思ったのと違うという失敗を減らすために、こういった指標を活用することをお勧めします。

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