住みたい街ランキング調査方法の変更を無視して、吉祥寺転落とか書くマスコミに猛省を促す
SUUMO住みたい街ランキングでの順位変動が話題になっています。吉祥寺陥落とか、郊外復権とかいう見出しや見立てが踊っていますが、全くこれは見当外れです。データ分析してその洞察(インサイト)を伝えようという気持ちは日本のマスコミに欠けているのではないか?そう危惧せざるを得ません。
デスクの北沢です。「住みやすい街」横浜が初のトップ。柏や大宮など郊外都市も躍進しました。都心回帰が長らく続きましたが、久々に郊外都市が復活しました。
-- 日経ヴェリタス (@nikkei_veritas) 2018年2月28日
「住みたい街」横浜が初の首位 吉祥寺陥落:日本経済新聞 https://t.co/g88QLwoXPh
「住みたい街ランキング」、吉祥寺が3位に転落 1位は...... - ITmedia ビジネスオンライン via kwout
実は、SUUMO住みたい街ランキングは調査方法が2018年から変わり昨年比較ができなくなっている
リクルート社の発表データには、実は、調査方法が変わっており
調査方法を変更しているために、2016年、 2017年の得点や順位は参考値としてご覧ください。
と昨年や一昨年との比較はできないことが明記されています。ただ、マスコミ的には基準があっての変化がニュースバリューとなることから、この注釈は無視してしまっているようです。
そもそも、調査方法の変化が順位変動に与えた要因の推理とかやってないのではないか?そうとしか思えません。
従来の「路線 → 駅」という選択から「都道府県 → 路線 → 駅」への変更で居住都県以外の街が順位を落とした中、横浜が浮上
昨年と同じ方法での調査が行われてはいないので真相は分からないのですが、順位変動の傾向から2018年調査では傾向が大きく変わっていることが推察されてしかるべき、そう考えます。各都県の下位のデータ変動をみると見えてくるものがあります。以下はリクルート社発表データPDFにある東京と神奈川の下位のデータおよび、左から2018,2017,2016の順位およびポイントです。
また、以下は埼玉と千葉の、同じく下位のデータおよび、左から2018,2017,2016の順位およびポイントです。
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駅名の背景がブルーなのは、居住地域以外の都県の駅です。こうしてみると居住地域以外の駅は概ね順位を落としているのが分かると思います。
あれだけ注目されている武蔵小杉や開発プロジェクトが目白押しでSUUMOの池元編集長も注目の池袋が順位を落としたのはなぜか?それは、最初に都道府県を選ぶという調査方法の変更で居住地域以外の街が選ばれにくくなったことが大きく影響しているそう私は推測します。そのカラクリはこうです。
<従来>
住みたい路線は? → 多くの人に馴染み深い中央線 が上位に選ばれる → 中央線で人気の吉祥寺が選ばれる
<今回>
住みたい都県は? → 地元の都県を選ぶ → そこで住みたい路線は? → 神奈川、埼玉、千葉の各県で人気の街が上位浮上
そして横浜が上位にくる理由もこの都道府県を選ぶことから推察できます。横浜は地盤の神奈川で圧倒的な票を集めつつ、東京や埼玉、千葉、茨城といった県外からも堅調に票を集めました。神他府県に住んでみたいという意向はまんべんなくあるとして、京浜東北ラインや、常磐線の東海道線乗り入れ、東横線に、総武横須賀線などで馴染み深くて知名度も高い横浜に人気が集まった様子が、順位変動から見て取れます。
もちろん、昨年と同じ調査方法でも横浜が上位に上がった可能性はあります。そこは分からないのですが、ポイントの変動からみて、最初に都道府県を選ぶという調査方法の変更での影響が大きく出たということは言えそうです。
根拠に基づいた客観報道として、リクルート社が出した調査データのランキングを報じるということは無難であり、面白い見出しもつけられるでしょう。しかし、その発表の意味する所を分析して解釈を伝えることこそ、データジャーナリズムの価値だと私は信じます。昨年、調査方法の変更で比較にならないほど順位変動があったHOMES'S総研(現 LIFULL HOME'S総研)調べの住みたい街調査で、私はその真相をHOMES'S総研チーフアナリスト中山さんに聞きブログにまとめました。データ分析と洞察が加わればもっと面白い記事は書けるし、二つある報道の自由度ランキングのどっちが信用できそうか?のような真実の探求も可能になります。
もっと真面目にデータに向き合い分析してその洞察を報道して欲しいと願っています。