積雪での怪我が突出?埼玉県民、バカ説を追う
首都圏の大雪、まだまだ積雪も残り、残雪による怪我や交通の混乱など続いています。そういう中、「埼玉県民、バカ説」というキャプションがついて怪我が首都圏のなかで埼玉県が突出して多いというTweetが出回りました。画像を見ると、テレビニュースの報道で、関東圏での雪による怪我の報道で、埼玉県が突出してけが人が多く、関東の半数近く、178人のけが人と報道されています。2位の神奈川県71人の2倍以上です。果たしてこれはどう説明が付くのでしょうか?
まず考えたのは、自転車依存度と、バス依存度
私はまず、自転車依存度が高い埼玉県で事故が多かったのではと考えました。ただ、たしかに多いのですが、東京都とそれほど極端な差もありません。
そこで次に考えたのは、バスへの依存度です。ここでは都合よく、神奈川が高く、東京、千葉が続いて埼玉が低いという統計が出ています。
バス通勤・通学率 [ 2010年第一位 神奈川県 ]/都道府県別統計とランキングで見る県民性 via kwout
そもそも、雪で怪我するリスクが高いのは、まず自転車で次が徒歩です。バス依存度が高いとけがのリスクが低いのではと考えました。常日頃バスを使ってない地域ではバス便が発達しておらず、大雪だからと自転車からバスに切り替えにくいのではと考えたからです。
積雪状況と他のニュースでの結果を確認して見えてきた実像
ただそれでも、埼玉県が突出して多いということには謎が残りました。そこで、今一度そのテレビニュースの画像というデータの信頼性とそもそも積雪状況がどうだったのか調べてみることにしました。そこで要点がまとまった毎日新聞のニュースを見つけました。
毎日新聞は
気象庁によると、今回の大雪で記録した各地の最深積雪は、前橋市29センチ▽宇都宮市27センチ▽東京都心23センチ▽水戸市、埼玉県熊谷市19センチ▽横浜市18センチ▽千葉市10センチ--など。
と報じて、東京都心でかなり積もり、熊谷や横浜でも同等の積雪で千葉は少なめだったことがわかりました。また、そこにはけが人の状況もありました。
毎日新聞のまとめでは、22~23日のけが人は、東京都229人▽埼玉県159人▽神奈川県132人▽千葉県72人▽茨城県67人▽群馬県31人▽栃木県28人--だった。
つまり、けが人の数自体、大きく異る数字が報道されているわけです。テレビニュースのキャプチャと見られた画像では、埼玉で突出して多いけが人とあったのが、東京都より少ないけど神奈川県より多いというありそうな、普通のデータになっていました。後から埼玉以外が増えたというより、テレビのキャプチャに書かれたけが人の数、178人より毎日新聞の報道では159人と減っているわけです。
教訓:それらしい、報道っぽい画像一つで信じてはいけない
結局のところ、テレビ報道と見られた数字は午後7時半現在とあるように途中データであり、ある期間のまとめとは言えないデータでした。その速報的データゆえに、データ収集の偏りとか重複カウントによる不正確というか、最終データと比べての「歪み」が起きたことが否定できません。そしてもちろん、テレビニュース風の画像には捏造や改ざんの危険ものこります。最初おもしろネタで作った悪気がない画像が転送されるうちに意味合いを変えてしまう、そんなこともありえます。
毎日新聞のデータがより精度が高いデータとして信用すると、埼玉県での怪我は、人口比で東京都より率的に多そうとはいえますが、むちゃくちゃ極端に多いと言うほどでもないことがわかります。
一方、キャプチャされたニュース画面が本物だったとして、これが「誤報」だとか、ましてや「フェイクニュース」だと批判されるべきものではないとも言えます。当日夜のニュースで直前にまとめられたデータを報道することは有益ですし、最終データでそれが補正されるような中間値であってもそれはそれで、「事実」を伝えていることは確かです。問題は、テレビのオンエアーで空気に流されて消えていくような時間軸限定の情報ではなく、その次点の報道がスナップショットで切り取られ、数字の意味合いとかのニュアンスが抜け落ちた状態でネットで広まってしまうことでしょう。
その、ニュアンスが歪められた情報が広まって誤解を生みやすいという意味で、テレビなどのレガシーメディアが、ネットでのクチコミをフェイクニュースの温床呼ばわりするのも一理ある、そう思わされました。一方で、フェイクニュースは悪意だけではなく、善意の拡散とかでも広がりうるし、確かなソースを元にしていても誤解が広まる可能性があるといえます。まるっきり嘘の悪意あるニュース風の捏造情報だけでなく、陳腐化した情報、意図された用途を超えた情報にソーシャルメディア時代の私たちはより注意する必要がありそうです。