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原発技術発展策のような複雑系な問題を、シンプルな説明が正しいと思いたがる業

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あるブログへの反論というよりは、世間一般、単純な説明ほど正しいのじゃないかという風潮への反論です。
http://blogs.itmedia.co.jp/hybrid/2012/08/post-1992.html 

【「原発問題」を見て思うこと、大きな課題ほどシンプルに判断できるはずである】:ハイブリッドIT戦士@エッジ効かせて行こう!:ITmedia オルタナティブ・ブログ via kwout

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のような単純で美しい式にまとめられるものもあれば、現実社会は複雑なしがらみで動いていて、単純な答えなど無いものがほとんどです。重力の元となる素粒子の発見とか最近のニュースですが、その説明は複雑で多様な知識と基礎が必要です。「水飴」とかの比喩は比喩でしかなく雰囲気しか表しません。

そして、原発発展/脱原発の問題。これだって、その国の資源状況やら制約でまちまちな政策がとられています。そして、今後人類が文明を維持できる期間を100年とか500年とかどう考えるかというコンセンサスも予想もされない中で、単純な正解があると考えてしまうのが愚かだと私は考えます。

今後5年、10年で地球温暖化と気象変動による災害が深刻化し、火力発電の抑制が危急の課題になるとか、はたまた小氷期の再来で文明を維持し、食料を増産する熱源が必要になるとか、そもそも、太陽光発電は発展途上国での電力供給不安定地域の補助とかの役にたちこそすれ、先進国では金持ち国家の道楽で経済危機に見舞われたらすぐにシステムが壊れそうになっているとか課題は様々です。

シンプルな正解などなく、地域地域によってニーズにあった正解があり、そういう多様性と多面的技術発展が人類の文明維持に必要ではないでしょうか?

数字を使った推論ができない内田樹が科学技術的政策を語ってもてはやされるのもこれまた単純であってほしいという願望の現れだと思いますが、それははかない夢です。

まあ、私も、「ラッファー曲線というのがあってねぇ」と紙ナプキンに書いて話の種にしていたこともあるし、単純に物事が動いて欲しいという願望はわかります。「インフレターゲットという秘策を使えばデフレは一発で解消だよ」とか言う人が耐えないのも、人の性でしょう。しかし、国ごとにまちまちな正解があるエネルギー施策への妄言が日本を覆い、その論者が隣国へ布教せずに日本で広がるのを見るに問題はなかなかしつこいなと痛感しています。

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