私達が「学芸会」を見に行く理由と、システムの自社運用の是非
皆さんは、学芸会とプロの演劇、どっちを多く見た経験がありますか?恐らく、学芸会の方が多い人の方が多いと思います。私はそうです。
プロの演劇の方が素人より上手いなんて、当たり前ですが、演劇好きの人以外は、案外、身内の学芸会の方が多く接していると思います。それは、いい演劇を見たいというような領域の人は少なく、身内が演じているなら見ようという人は多いという理由によるものと思います。
こんなことを考えたのは、米持氏のこの記事
コスト削減による学芸会のような社会:テクノロジーと希望:ITmedia オルタナティブ・ブログ via kwout
という刺激的なタイトルにひきつけられたからです。
- セールスのプロでない人がセールスをしているケース。商品の品揃えも、在庫も頭に入ってない、値引き交渉もできない。
- マーケティングのプロでない人が宣伝をしているケース。市場調査もしない、客層の把握もしない。
- なんでも自作したがるITユーザー企業。ベンダーソフトウェアを買うより、余っている人材に作らせるほか無い悲しい現実。
指摘は分かります。社会の発展を考えると比較優位のメリットを生かす分業が重要です。プロならもっと上手いというのも分かります。
しかし、外注をやめる動きがコスト削減だけを理由に見えているならば、それは表面的的過ぎるのじゃないかと感じました。
むしろ私は、内製化することで自社の強みを発揮すべき領域として積極的に取り組もうとしているのじゃなかろうか?そもそも、SaaSのようにメリットがあれば、既製品のサービスを使おうという動きが広がる中で、表面的なコストだけを見て内製化にシフトするほど今の企業が思慮が足りないとは思えないからです。もちろん、日本で、雇用の流動性が低くて仕事を作るために無理やり内製化している会社が世の中にはきっとあるとは思います。しかし、余剰人員を抱えたまま配置転換して苦境を乗り切るなんていう美談をあまり聞かない昨今、コスト削減だけを理由にそんなシフトが起きているとは思いづらいのです。
「学芸会」のようであろうと、他社との競争に関わる重要なことは自社でやろうという判断:
そもそも、日本の情報システムは、外注や、情報システム子会社への委託が、北米やオーストラリアあたりの企業より多いというのが私の実感です。もちろん、「手組み」で自社開発じゃなく、パッケージを活用とかいうケースが多いですが、そのパッケージを評価・比較検討し、システムのグランドデザインを描くのは自社でというケースが日本は少なく、北米などでは多いと実感しています。
それは、情報システムが、日本でも営業や製造に並ぶような自社のコアコンピータンス(他社との比較優位に関わる根幹)と考えられ始めている現われじゃないかと思います。
もちろん、自社でまかないにくい箇所はあるし、積極的に専門ベンダーやSI会社を活用するということは世界中で行われていると思います。しかし、情報システムが営業や製造と同じくらい重要だから、自社にあう情報システムがちゃんと使えて困らないようにしよう、そう考える会社がやっと増えているのじゃないでしょうか。
プロの目から見てそれは、「学芸会のよう」かもしれません。しかし、自社でノウハウを積み、いいものを使っていくためにしっかり成長させていこうという方針があれば、それは成長の糧としての学芸会として実になり、未来の成長に繋がる重要な投資となると思います。
もちろん、水平分業の意義はありますし、そんな内製化をあらゆる領域で行うことは不合理です。
多くの会社ではロジスティックスを周辺と考えて外注していますし、逆にAmazonはコアと考えて内部に多く取り込んでいます。そして、そうは言いつつも自前で配送会社を作るなんていうことはせずに最終的な配達は外部に委託するし、中古の書籍やらなにやら、協力関係を持つ小売会社との連合関係も持っています。
情報システムも、自社のコアと考えて育てるべき部分と、周辺と考えて外部にお願いする部分とその戦略が重要になっていくのではないか?そう考えています。
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