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企業Twitter開局大作戦 ~ 「第四話 ブログ・コメントを封鎖せよ!」

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前話「第三話 コンサルタント灰島秀樹」からの続きです。
すこし間が開いたので,第一話から第三話までのリンクもあわせて紹介しておきます。

  1. 企業Twitter開局大作戦 ~ 「第一話 Androidタブレットを販売せよ!」
  2. 企業Twitter開局大作戦 ~ 「第二話 軟式ツイートと最初の難事件」
  3. 企業Twitter開局大作戦 ~ 「第三話 コンサルタント灰島秀樹

 
沖田の立ち上げたTwitter公式アカウントは,SMSタブレットとともに,テレビ東京WBSをはじめとしていくつかのビジネス系媒体に取り上げられた。そこでTwitterフォロワー・キャンペーンが告知されたため,開始わずか1週間で1万人を超すフォロワーを獲得し,一般消費者には知名度の低いSMS社にもかかわらず,一躍有名アカウントの仲間入りを果たしたのだ。

Twitterの集客効果でブログも閲覧者が急増し,記事内から直販サイトに誘導された。巧みに設計されたクチコミ動線は,ブランド力に乏しかったSMSタブレットの知名度向上につながり,当初心配された直販サイトでの販売立ち上がりも順調な滑り出しとなった。

沖田  灰島さん,ありがとう。おかげさまでSMSタブレットは初週の販売目標をほぼクリアできました。マスメディアで着火されたクチコミが,ソーシャルメディアという拡声器で広がっていく様を直接体験できました。
灰島  今はユーザーが購買までたどりついたとこ。でも本当は利用体験がクチコミされてはじめてソーシャルメディアは本領を発揮しはじめるんだよね。次のステップとしてはコマースに商品レビューを入れたり,外部ブログのクチコミを取り込む形にできれば,効率的なクチコミ動線が生まれるんだけどね。
沖田  わかりました。この成果を持って,次回の取締役会で追加予算を承認してもらえるよう社内根回しに入ります。投資効果KPIを週次でレビューして徹底的に売れるサイトに改善していきます。ところで灰島さん,私に対しては敬語を使いなさい。
灰島  は~い。

ソーシャルメディアは単体で活用するのではなく,マスメディアともクロスさせた形で全体のクチコミ動線を設計し,一貫性のあるプロモーションを行なうことが大切だ。
Socialmedia1
(クリックで拡大できます)

 
一躍メジャー入りした公式Twitterアカウントの裏でも,青島チームはめげずに現場でできることをコツコツと積み上げていた。公式アカウントが販売情報を中心にツイートしているのに対して,彼等はユーザーとの個別コミュニケーションを重視する方針とした。そしてフォロワーだけでなくSMSタブレットに関する発言などがあると積極的にコンタクトし,お礼とともに,何か困ったことがないか,満足度はどうかなどを直接たずね,対話により地道に信頼関係を醸成していったのだ。

Wine2 Teusner WinesはTwitter101でも紹介されている有名な成功事例だが,実はオーストラリアにある従業員3名の小さなワインショップだ。彼等の特徴は単にフォロワーと交流するだけでなく,Twitterサーチを活用してフォロー関係にないユーザーと積極的な交流を図っていること。例えば自社からワインを購入したというユーザーのTweetを見つけると"Thank you for trying the wines"とサンクス・メッセージを送る。受け取った顧客は大いに驚き,感動する。さらに企業と顧客だけでなく,ワイン好きの顧客同士のコミュニケーションが促進されるよう,いろいろと心配りの対話をすすめている。このワインショップの従業員は3人,Twitterでの応対が専業社員がいわけではもちろんない。そんな彼らが,ワールドワイドに,今まで大企業にも実現できなかった高度な顧客コミュニケーションをあっさりと行なってしまう。しかもシステム費用はかからない。Twitterの本質的な凄みは,まさにこの点にある。

 
そして販売開始から1月ほどたった日のことだ。Twitter上の顧客の声をリアルタイムにチェックしていた雪乃は,購入者のコメントの中に異変があることをキャッチした。長時間使用するとバッテリーがかなり高熱になるとの複数の書き込みだ。

雪乃  青島さん,SMSタブレットを購入いただいた複数のお客様が,バッテリーの異常を訴えてます。直接Twitterでコンタクトしているんですが,どうも現象が同じようで,製品上の問題点かもしれません。これって問題ですよね?
青島  バッテリーは台湾製で,着脱可能な最新の製品を使ってるんだよね。この前ブログでインタビューしたタブレット設計部の内田普三さんに確認してみるよ。
雪乃  あともう一つ。公式アカウントの方に何件もその関係で問い合わせが入ってるんですが,何も反応してないみたいなんです。なんか無反応なこと自体にユーザーがいらいらし始めてます。私の方でできだけコンタクトして困っていることを聞いておきますね。
青島  悪いね,雪乃さん。なんか公式アカウントは基本的に個別対応しない方針みたいなんだ。人件費を売上比例で考えてるんで情報配信で手一杯らしくて。大変だけど密にコミュニケーションしておいてね。信頼を醸成するチャンスだからね。

奇跡の企業,ザッポスでは,顧客接点をブランディングを最高の機会としてとらえている。彼等の考え方はまさにコペルニクス的転回だ。かかってくる電話は商品購入前であろうと後であろうと関係ない。わざわざお客様の方から直接,しかもマンツーマンで接点を持ってくれる絶好のチャンスと捉えているのだ。

では何のチャンスか?商品に対する過剰な宣伝やイメージを植えつけるチャンスではもちろんない。お客様に「忘れ難い感動体験」をしていただく絶好のチャンス,それはまさに一期一会の考え方だ。

そのためにコンタクトセンター社員には返金やクーポン,特別配送手配など幅広い決裁権が与えられている。それどころか在庫切れ商品があった場合には他社サイト(最低3サイト)でその商品がないかをその場で検索してあげたり,商品購入以外の相談やお願いにもしっかり対応するよう教育されているのだ。

さらに詳しい情報は 驚きの反常識!ザッポス流マーケティングの真髄とは まで

 
青島は設計部の内田のところに駆け込み,ユーザーからのクレームを説明した。内田氏によると,該当バッテリーはコストパフォーマンスを売りのする台湾メーカーの新製品だったが,製造工程での歩留まりが悪いとの噂があった。またSMS社においてもハードウェア開発自体が初体験だったので,出荷前のテスト工程に甘さがあった可能性がある。なので使い方によってはそのような現象もあり得るかも知れないとちょうど心配していたところだったとのこと。内田が最も気にしているのは,高温状態が続くとCPUが熱暴走してしばらく使用不可になる点だ。青島は内田に,最悪のケースを想定して対応を検討してほしいと依頼し,急遽,袴田課長とともに沖田の部屋にむかった。

青島  沖田さん,今,TwitterでSMSタブレットのバッテリーが高熱になる現象について公式アカウントに問い合わせが来ています。雪乃さんの方で対応していますが,ほおっておくと大きな問題になるかも知れません。
沖田  青島さん,公式アカウントのことは我々にまかせておけば大丈夫。余計な心配は不要です。何か現実にトラブルが起きてるわけ?
青島  いえ,現時点ではまだですが。公式アカウントへの問い合わせは10件を超えてますよ。
沖田  公式アカウント運営の問題点を指摘したいの?あなたは黙って営業の仕事してればいいの。こんなところでさぼってないでお客様まわりでもしてなさい。袴田課長は残って,内田さんに至急こちらに来るように伝えてください。今,リスク管理部の責任者を呼ぶから,灰島さんもあわせて5人で至急対策を考えましょう。
袴田  うちの部下が大変なことになるかも知れないと言っているんですが...
沖田  営業は売るのが仕事でしょ。子供が親のこと心配しなくていいのよ。

その時,青島の携帯がなり,雪乃の上ずった声が部屋に響いた。「青島さん,大変なことになってます。タブレットが使えないと3,4人のユーザーが騒ぎ出し,公式ブログのコメントが炎上しはじめてます。匿名掲示版にも書かれだしてるし,はてなでも批判ブログがあがりました。それらが情報源となってTwitterでもRetweetされていて,キャンペーンなんてやって不良品を拡販するのかと公式Twitterにもかなり強い批判が押し寄せてます。私一人では全件はとても追えません!」

沖田  直ちにブログのコメントを閉鎖して。Twitterでは「現在いただいた件を社内で検討しています」と流してしばらくほおっておきなさい。体制を立て直すわよ。まったくみんなが好き勝手にTwitterなんかはじめるからこんなことになるのよ。
青島  コメントを閉鎖しちゃダメだ!今こそ真摯に顧客と向き合わないと,本当に会社つぶれますよ!
沖田  うるさいわよ。あなた,黙ってないと服務規程違反でクビにするわよ!


その時,ドアが開き,一人の男が入ってきた。「遅くなりました。リスク管理部長の室井です」


(最終話に続く)

 
【企業Twitter開局シリーズ】
・ 企業Twitter開局大作戦 ~ 「第一話 Androidタブレットを販売せよ!」
・ 企業Twitter開局大作戦 ~ 「第二話 軟式ツイートと最初の難事件」
・ 企業Twitter開局大作戦 ~ 「第三話 コンサルタント灰島秀樹」
・ 企業Twitter開局大作戦 ~ 「第四話 ブログ・コメントを封鎖せよ!」
・ 企業Twitter開局大作戦 ~ 「最終話 ソーシャルメディアよ,永遠なれ」

 
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最新の筆者著書です。 『Twitterマーケティング 消費者との絆が深まるつぶやきのルール』

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